現在、政府の水際対策により訪日外国人観光客は途絶えています。しかし訪日旅行を待望する人は多く、インバウンド需要の回復にも期待が高まります。
今後のインバウンド需要の回復ストーリーを考えたとき、「コロナ禍で離れ離れになってしまった親族や友人と再会したい」という気持ちは強いはずであり、そうした目的での訪日需要は早く戻ってくるのではないでしょうか。
そこでキーとなるのが、日本の在留外国人の存在です。在留外国人が多く住む地域には、それだけ多くの友人や親族が海外にいると考えられるからです。
日本で在留外国人が多い地域はどこなのか、またどの国籍の外国人が多く住んでいるのか、公的機関の情報から分析します。
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コロナ後期待される「VFR観光」とは
現在日本への入国者数の上限は1日1万人まで緩和されましたが、外国人の入国はビジネスパーソンや留学生のみに制限されています。渡航制限の緩和がさらに進み、仮に観光目的の外国人の入国が再開されることになったとしても、最初は入国人数などの制限が課されることが予測されます。そのため、インバウンド需要の回復は段階的なものになると考えられます。
観光目的の往来が再開した後、制限の下であっても早い段階で需要が回復すると考えられているのが、「VFR」と呼ばれる形態の訪問です。VFRは「Visiting Friends and Relatives」の略で、「日本に住む友人や知人に会いに、本国の外国人が日本を訪れる」という動きのことです。
VFRが活発化すれば当然、在留外国人が多く住む地域にはそれだけ多くの知人が海外から訪問してくることになります。そのため、在留外国人が多く住む地域は、制限解除後の早い段階で、インバウンド需要の回復が見込めるということになります。
またどの国からの外国人が多く住んでいるかによっても、インバウンド関係者がとるべき施策も変わってきます。そのため、どんな国からの外国人が多く住んでいるか、地域ごとの特徴を把握することも重要です。
関連記事:「コロナ収束後の友人・家族の再会」需要を掴めるか:渡航制限解除後の「VFR」向けの対策とは
対外的な発信力を持つ在留外国人
日本に住む在留外国人の中には当然、FacebookやTwitterなどのSNS上で、日本での生活について発信している人がいます。例えば都内の大学に通う留学生であれば、休日には都内を観光し、そこで撮った写真に感想を添えてインスタグラムに投稿することも考えられます。あるいは郊外に住む社会人でも、職場周辺の施設や飲食店の様子を、コメントと共にFacebookに投稿するかもしれません。
またそうした在留外国人の多くは、母国語で日本のことを紹介しているので、自国の人々にとって理解しやすい形で情報を発信していることになります。
このように、在留外国人は対外的な発信力を持つという点において、インバウンドに対して大きな影響力を持っています。そのため、どの地域にどの国の外国人が多く住んでいるかを分析することが重要になってくるのです。
在留外国人が多い都道府県ランキング
出入国在留管理庁の「令和3年末現在における在留外国人数について」というリリースによると、令和3年末の在留外国人数は276万635人で、前年末に比べ12万6,481人減少したことがわかりました。
これは前年末に比べ4.4%の減少を記録したことになります。昨年はコロナ禍の影響で、8年ぶりに前年比での減少に転じましたが、今年もその傾向は継続しています。またピーク時のコロナ前の2019年と比較すると約90万人減少し、割合でみると4分の3にまで減少したことがわかります。これは、2015年頃の水準に逆戻りしたということにもなります。

では、在留外国人はどの地域に多く住んでいるか、まずは都道府県単位でみていきます。

1位は東京都で約54万人です。これは2位の愛知県の約27万人のほぼ2倍にあたり、人数では東京が突出していることがわかります。
3位以降は大阪府、神奈川県、埼玉県、千葉県、兵庫県と続いていきます。関東・関西地区の都府県が上位を占めていることがわかります。
割合でみると、東京都の約54万人は全体の約276万人の2割を占めていることがわかります。また関東地区の東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県を合わせると約114万人で全体の41%に、関西地方の大阪府・兵庫県・京都府を合わせると約42万人で全体の15%になります。
次は市区町村単位で在留外国人数をみていきます。出入国在留管理庁が発表している「在留外国人総数上位100市区町」から上位50の自治体を抜粋しました。

1位は昨年と同じく、埼玉県川口市となりました。川口市には中国人をはじめアジア系の外国人が多く住んでいます。都心へのアクセスが良い割には住宅費が安いことや、戦前から外国人に対して寛容な地域であることなどが要因となり、多くの外国人が集まっています。
2位と3位は昨年と逆になり、東京都江戸川区が2位、新宿区が3位となりました。新宿では留学生数の激減による影響が顕著に表れました。江戸川区は昨年と比べ、外国人数は微減したものの、新宿区よりも減少ペースは緩やかでした。
4位以下は足立区、江東区、板橋区(いずれも東京都)、大阪市生野区と続きました。全体的に微減しましたが、上位の顔ぶれには大きな変化は見られませんでした。
東京以外で在留外国人が多い市区町村は?
東京都以外で1位の川口市の次に在留外国人が多いのは、7位の大阪市生野区です。生野区の在留外国人のうち8割近くは朝鮮・韓国系の外国人であり、新宿区新大久保に並ぶ大きな韓国系住民のコミュニティとなっていることがわかります。
またこのように韓国系住民が多く住んでいることで、周辺地域には多くの日本語学校ができたため、近年では中国やベトナムなど他のアジア諸国からの住民も増加しています。
東京都以外では次に14位の千葉県船橋市がランクインしています。船橋市は川口市と同様に、都内へのアクセスが良い割に住宅費が安いため、アジア系を中心に多くの在留外国人が集まっています。
学費や生活費を稼ぎながら日本語学校に通う学生にとっては、船橋市にはアルバイト先が多くあることも好条件となっています。
15位は愛知県豊橋市で、東海地区の中で最多となっています。製造業を中心に、外国人を雇用する企業が多くあることや、教育面などをはじめとする公的支援が充実していることなどが要因となっています。
東京23区で在留外国人の多い区は?
ここまでみてきたように、東京都には突出して多くの在留外国人が住んでおり、また東京23区には特に密集していることがわかりました。ここでは、その東京23区内ではどの地域にどの国の外国人が多く住んでいるかをみていきます。

前年まで1位だった新宿区は2位に順位を下げました。コロナ禍により留学生が入国できなかったことが減少の直接の原因となりました。また、まん延防止措置や緊急事態宣言のために、区内の多くのアジア系飲食店が閉業に追い込まれてしまったことも大きく影響しました。
代わって1位となったのが江戸川区です。リトルインディアと呼ばれる江戸川区西葛西は、インド人住民の数が圧倒的に多くなっています。外国人学校や宗教施設などの生活基盤も、年々整備が進んでおり、外国人が住みやすい環境が整えられています。
冒頭でも述べたように、在留外国人は地域のインフルエンサーとなる可能性を持っています。どの国の外国人がどこに多く住んでいるかを把握した上で、それぞれの地域に合わせたプロモーションを行っていくことが、コロナ後のVFR需要で多くの訪日客を集めるカギになります。
関連記事:【独自取材】JNTO企画「インフルエンサー育成」施策とは?293万人の在留外国人の情報発信力に活路か
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<参照>
出入国在留管理庁:令和3年末現在における在留外国人数について
出入国在留管理庁:在留外国人総数上位100市区町
東京都総務局統計部:区市町村、国籍・地域別外国人人口
【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
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この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
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