ユニバーサルツーリズムで期待できる効果とは?課題や取り組み事例も解説

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ユニバーサルツーリズムとは、年齢・性別・国籍・障害の有無にかかわらず全ての人が楽しめる旅行のことを指します。ユニバーサルツーリズムは言葉の認知度はまだ高いとはいえず、取り組んでいる企業も多くはありません。

そして、その言葉の響きから「介護旅行」「施設前面のバリアフリー化」ばかりが注目され、「取り組みが大変でコストがかかる」や、「観光客誘致や活性化に効果をあげるものではない」と誤認されることも少なくありません。

この記事では、ユニバーサルツーリズムの定義と期待できる効果について説明します。また、ユニバーサルツーリズムの課題や取り組み事例についても紹介します。

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ユニバーサルツーリズムとは?

ユニバーサルツーリズムとは「すべての人が楽しめるように創られた旅行であり、高齢者や障害等の有無にかかわらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行」を指し、海外では「アクセシブルツーリズム(accessdsible tourisum)」とも呼ばれています。

「ユニバーサル」は「普遍的な」「全てに共通の」「全ての人のためのデザイン」という意味が、また「ツーリズム」とは観光事業・旅行業、観光旅行という意味で、ユニバーサルツーリズムとはこれらを併せた造語です。

ユニバーサルツーリズムには「ユニバーサルデザインに基づく観光旅行」という意味が込められており、障害者や高齢者だけでなく妊婦や乳幼児、外国人も含めて多様な人々が安心して旅行を楽しめる環境を整え、推進する取り組みを行なっています。

ユニバーサルツーリズムの必要性と期待できる効果とは?

ユニバーサルツーリズムが推奨される背景の一つには、ユニバーサルツーリズムの対象となる人口が増加していることがあげられます。

日本の総人口は2022年1月1日時点で、1億2,592万7,902人で、前年(2021年)から82万人減少(2022年9月15日現在推計)していますが65歳以上の高齢者が3627万人と、2021年(3621人)に比べ6万人増加し、過去最多です。

高齢者の人口が占める割合は29.1%となっています。また、乳幼児や障害者を含めると、ユニバーサルツーリズムの対象者は日本人口のおよそ3分の1に達し、これらの方々を含む旅行者を考慮すると対象もさらに広がるでしょう。

ユニバーサルツーリズムの推進の背景の2つ目は、ユニバーサルツーリズムは将来のビジネスの可能性を伸ばすキーポイントとも考えられている点です。

現在の高齢者と障害者を含めたユニバーサルツーリズムの市場は1兆750億円と言われており、70歳以上の高齢者の旅行回数1回を60歳台と同じ1.4に引き上げると経済効果は1兆円にのぼります。さらに高齢化が進めば市場規模は3兆円に達すという資産もあるほどです。

ユニバーサルツーリズムの推奨により、国内対象者だけでなく訪日観光客の集客やリピーターも見込め経済効果へ期待もできます。

施設のバリアフリー化、不便さやコミュニケーションへの不安が解消されれば、観光客の増加、地域の活性化にも繋がるでしょう。

ユニバーサルツーリズムの課題と取り組み

現時点では、ユニバーサルツーリズムを推進しているものの、まだ普及しきれていない、対応施設が少ないという課題があります。

また、推進したいがコストやノウハウが課題の難点となっている事業所もあることでしょう。

全ての課題に対応できなくても、まず顧客のニーズに合わせて出来ることから必要な手配をすることがユニバーサルツーリズムへの第一歩です。

  • 目的地のバリアフリー化(施設や設備)
  • 移動・交通手段
  • 訓練されたスタッフによる質の高いサービス
  • 参加者が楽しめる旅行内容
  • 誰もがアクセスできる情報の提供・発信

階段を車椅子に対応できるように、スロープする、段差を減らすなど目に見える対応だけでなく、外国人でも案内がわかりやすい様に多言語の案内表示や視覚障害者のための点字の追記などもあげられます。

施設のバリアフリー化が難しい場合は、エレベーターの有無やドアの幅、部屋や浴室の写真などを情報を掲載・発信することも良いでしょう。

また、ユニバーサルツーリズム対象者のニーズは人それぞれ異なります。

アレルギーへの対応や外国語が話せるスタッフやサポーターがいるなど、利用者が施設利用する上で不便がないか、快適に過ごせそうか自己判断できる情報を提供することも重要です。

ユニバーサルツーリズムに取り組む自治体・企業の事例を紹介

各地の取り組み事例を紹介します。

長野県

長野県では、自然豊かな信州の観光地を誰でも楽しめるように

  • 専門人材
  • 専門機器の導入
  • 特色ある地域を生かした多彩なコース

3つを特徴に、ユニバーサルツーリズムを推進しています。

専門人材の育成により、地域で旅行する個人・団体のサポート体制を充実させ、「JINRIKI」「HIPPOcampe」などのサポート機器も充実させています。

そして、通常ではバリアである山や自然を、観光資源として旅行者を誘致していることが特徴です。

2021年には、実務人材育成強化、学習旅行プログラムを作成し、商品化に向けた旅行会社の招へい事業にも取り組んでいます。

兵庫県

兵庫県では、ユニバーサルツーリズムの代表例をPRするため、視聴覚会社を対象とし、聴く・触れる・感じる観光を楽しむクルーズモニターツアーを開催しました。
また兵庫県神戸市では、神戸ユニバーサルツーリズムを実施しています。

神戸ユニバーサルツーリズムでは、誰もが安心して神戸が観光できるように、高齢者や障害がある人が安心して観光するために必要なサービスを電話一本で手配が可能です。

  • 介助タクシー
  • ヘルパーの手配
  • バリアフリー観光施設やレストランの案内
  • バリアフリールームのホテルの手配
  • きざみ食材の依頼
  • 車いすや吸引機の依頼

無料で車いすレンタルサービス「KOBE どこでも車いす」は神戸市内12カ所のどの拠点でも貸出返却ができるシステムになっています。

JTB

日本最大級旅行会社JTBグループでは、全社でユニバーサルツーリズムに取り組んでいます。

  • 身体にやさしい宿
  • おもてなし検定
  • サンライズツアー
  • 障害者差別解消法e-ラーニング(添乗員向けのラーニングプログラム)

などといった、ユニバーサルツーリズム関連事業を通じ、文化史跡や地域の食文化、温泉や日本のおもてなしといった文化を発信してきました。

JTBグループのユニバーサルツーリズムの取り組みが政府の「beyond20202プログラム」に認証されたという実績があります。

HIS

大手総合旅行会社HISは、2002年に「ユニバーサルツーリズムデスク」を設立し誰もが自由に参加できる個人海外旅行・国内旅行を提供しています。

  • 添乗員同行募集型ツアー
  • 高齢者・杖・車いすで旅をする「バリアフリーたびのわ」
  • 聴覚に障害がある人向け「しゅわたび仲間」

介護旅行やオーダーメイド旅行、スタディーツアーやたびリハ、施設や企業、学校などの団体旅行も手配を行なっています。

まとめ

ユニバーサルツーリズムとは「すべての人が楽しめるように創られた旅行であり、高齢者や障害等の有無にかかわらず、誰もが気兼ねなく参加できる旅行」であり、旅行といっても、個人から団体まで様々で、求めるニーズは人それぞれ違います。

より多くの旅行者の悩みを解決し、旅を楽しめ、ニーズに叶うサービスを提供できれば、その観光地のファンを増やし地方創成にもつながり、社会的な課題への合理的な取り組みにもなるでしょう。

まずは、訪れてくれる全ての人のために最善を尽くす「おもてなし」の心をもって、できることからユニバーサルツーリズムに取り組んでみてはいかがでしょうか。

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<参照>

・観光庁:ユニバーサルツーリズムに対応した観光案内の実践⽅策
研 KBS 株式会社ユニバーサル・ツーリズムの可能性と課題を考える
・兵庫県:ユニバーサルツーリズムの推進
・長野県:長野県ユニバーサルツーリズム推進事業

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

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