注目される「ノンアル旅」世界の市場とインバウンド対策のポイントを解説

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観光庁訪日外国人消費動向調査(2023年)によると、「訪日前に期待していたこと」として、「日本の酒を飲むこと」と回答した訪日客は34.9%でした。これは5番目に多い回答であり、訪日旅行においてアルコールが重要な目的のひとつであることがうかがえます。

一方で、若者を中心として徐々にアルコール離れが進んでおり、飲酒を控えながら旅行を楽しむ「ノンアル旅」が注目されています。アルコールを提供する事業者にとって、こうした新しいニーズにどう対応するかがポイントとなりそうです。

この記事では、世界的に進むアルコール離れの背景や、成長する新たな市場「ノンアルコール市場」について解説します。

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世界的にアルコール離れが進行

「お酒を楽しむこと」を旅の目的とする訪日客もいる一方、世界的にはアルコールの消費量が減少しています。

ここでは、日本国内および世界におけるアルコール離れの現状について紹介します。

日本では若者のアルコール離れが顕著

まずは日本国内のデータを見てみます。厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、2000年には男性の50.8%、女性の9.0%が飲酒する習慣があった一方、2019年には男性33.9%、女性8.8%に減少しています。

とくに20〜29歳の若年層では、およそ20年で男性が27.8%から12.7%に、女性が8.4%から3.1%に大幅に減少するなど、アルコール離れが一層顕著です。

世界で進むアルコール離れ

世界保健機関(WHO)のデータによると、世界人口における1人当たりのアルコール消費量も減少傾向にあります。2010年には1人当たり5.7リットルだったアルコール消費量が、2019年には5.5リットルに減少しています。

さらに新型コロナウイルスが世界のアルコール消費に大きな影響を与え、2020年には4.9リットルに減少。日本だけでなく、世界的にアルコール離れが進んでいるといえます。

アルコール離れが進む理由とは

「味が苦手」「体質的に飲めない」といったものはお酒が飲めない理由として最たる例ですが、近年では「健康に考慮したい」「あえて飲まない」など、その理由も多様化しています。

健康志向の高まり

世界では「飲酒が健康に悪い」と考える傾向が強まっています。アメリカのギャラップ社では、これまで10回にわたって飲酒に対するアメリカ人の見解を調査してきました。最新の調査では「1日1〜2杯の飲酒は健康に悪い」と回答した割合が45%に達し、過去最高を記録。とくに18〜34歳の若年層では「飲酒は健康に悪い」と回答した人の割合が65%に及んだそうです。

このような背景には、世界保健機関(WHO)の働きかけも影響していると考えられます。2023年には「少量でもアルコールは健康に有害である」という見解が示され、日本を含む各国でアルコール規制が強化されました。

宗教的・文化的背景

イスラム教、またキリスト教の一部の宗派などではアルコールの摂取が禁じられています。

また、ベジタリアンヴィーガンといった「植物性の食品」を中心に食べる人たちもいますが、お酒を飲むかは個々人の判断に委ねられます。ただし、牛乳を使用するミルク系のカクテルや、お酒を作る過程で動物由来の成分が使用されている場合は飲酒できないことも多いため、お酒の提供時には注意が必要です。

一般社団法人ハラル・ジャパン協会によると、イスラム教徒だけでも世界には約18億5,000万人存在し、約10億人がアジアで生活しているそうです。今後もイスラム教徒の人口は拡大が見込まれ、成長市場として注目されています。アジアからの訪日客も多い日本では、イスラム教徒をはじめ、宗教・文化に配慮した飲食の提供が求められます。

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あえて飲まない「ソバーキュリアス」

お酒を飲める人が「あえて飲まない」選択をする考え方や生き方のことを、ソバーキュリアスといいます。「Sober」はシラフ、「Curious」は好奇心を意味し、「お酒を飲まないこと、シラフでいることに興味を持つ」新しい考え方です。

アメリカの若者を中心にソバーキュリアスのトレンドが広がっており、1,000人以上を対象にしたNCS社のアンケートでは、41%(5人中2人以上)が2024年に飲酒量を控えると回答しました。とくにZ世代と呼ばれる若者たちは、61%が自身のメンタルヘルスを考慮して飲酒量を減らすと回答しています。

盛り上がりが進むノンアルコール市場

アルコールを提供する飲食事業者にとって、アルコール離れは残念な話題といえるかもしれません。

一方で、急成長しているノンアルコール市場には新たなビジネスチャンスが広がっているのも事実です。

世界のノンアルコール市場が急成長

Fortune Business Insightsの調査によると、世界のノンアルコール市場は2019年に約9,191億ドルと評価され、2027年までに約1兆2,577億ドルに達すると予測されています。年平均成長率は8.20%です。

健康志向が高まったことで、ノンアルコール市場は急成長しています。新型コロナウイルスにより一時的にソフトドリンクの売上が減少しましたが、長期的に市場の成長が期待されています。

また、日本国内においてもノンアルコール市場は伸びており、2023年には過去最大規模に到達。10年前と比較すると1.4倍以上に拡大したと推定されます。

注目が集まる「ノンアル旅」

ノンアル旅は、旅行中あえてお酒を飲まずに過ごす旅行スタイルを指します。シラフのまま健康な状態を維持したい方が多く、デトックスとして身体を癒やしたいニーズが増えてきているようです。

たとえば、ラグジュアリー・ライフスタイホテルのW大阪では、ライフスタイルや嗜好の多様化によるノンアルコール飲料の人気の高まりを受け、オシャレでおいしいノンアルコールメニューとして「モクテル」を充実させています。モクテルは、真似たという意味の「mock(モック)」と、「カクテル(Cocktail)」を組み合わせた造語です。7種類のモクテルを含む、10種類のノンアルコール飲料が楽しめるといいます。

また、訪日外国人観光客から人気の高い「食べるアート体験」がコンセプトのTREE by NAKED yoyogi parkでも、アルコールとノンアルコールを選べるようにドリンクメニューが用意されています。

ノンアル旅の需要が高まる今、インバウンド対策としてノンアルコール飲料のメニューを充実することで集客アップが期待できます。

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台湾人・香港人「日本で飲みたいもの1位は牛乳」

台湾人・香港人向けの訪日観光情報サイト「樂吃購(ラーチーゴー)!日本」を運営するジーリーメディアグループは、訪日旅行に関するアンケートを実施。訪日旅行で飲みたいノンアルコール飲料について聞いたところ、1位は「牛乳」という結果になりました。

「日本の牛乳は質がよく、濃厚でおいしい」「風味がよく、コーヒーとの相性が抜群」といった理由が挙げられました。インバウンド対策として、ミルクベースのモクテルや乳製品をノンアルコール飲料として取り入れるのも一案かもしれません。

関連記事:日本で飲みたいもの、1位は「牛乳」 訪日台湾人・香港人のアンケートで

ノンアルコール飲料を充実させることがインバウンド対策に

若者のアルコール離れや、厚生労働省およびWHOが示すアルコール消費に対する警告は、アルコールを提供する飲食店にとって厳しい状況をもたらしています。従来通りのアルコール提供だけでなく、時代に合わせた柔軟な対応が今後ますます求められるでしょう。

アルコール規制の強化や需要の減少は避けられないと予想され、これから成長が見込まれるノンアルコール市場への対応が、飲食業界の成功を左右するカギとなりそうです。とくにお酒が飲めない訪日客のニーズに応えるため、宗教や文化への理解を深め、ノンアルコール飲料を充実させることが、飲食店におけるインバウンド対策として重要なものとなるかもしれません。

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<参照>
観光庁:訪日外国人の消費動向(2023 年 年次報告書)
厚生労働省:国民健康・栄養調査(平成6年)
厚生労働省:国民健康・営業調査(令和元年)
世界保健機関(WHO):Global status report on alcohol and health and treatment of substance use disorders
世界保健機関(WHO):No level of alcohol consumption is safe for our health
GALLUP:Alcohol Consumption Increasingly Viewed as Unhealthy in U.S.
NCsolution:Sober Curious Movement: 41% of Americans are Trying to Drink Less Alcohol
Fortune Business Insights:ノンアルコール飲料の市場規模
マリオット・インターナショナル ジャパン:【W大阪】10種類のノンアルコールカクテル“モクテル”が楽しめる!「食事に合う」「ミクソロジー」「大阪」をテーマに新メニューを開発

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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