イノベーター理論とは新しい商品やサービスが市場に浸透する際、消費者の反応によって5つの層に分け、それぞれの行動や特徴を分析する理論です。より多くの人に商品やサービスを知ってもらうための戦略を考えるうえで非常に重要といえます。
訪日外国人の増加に伴い、インバウンド対策を成功させるにはイノベーター理論を活用し、ターゲットとする層を明確にして適切なアプローチを行うことが効果的です。
本記事では、イノベーター理論の概要を解説するとともに、5つの消費者層ごとにするべきアプローチ、さらにマーケティングで重要な「キャズム理論」にも触れながら説明します。
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イノベーター理論とは?
イノベーター理論は市場浸透について解説している理論で、新しい商品やサービスを世に出すにあたってマーケティングする際に重要となる理論のひとつです。
1962年にアメリカの社会学者であるエベレット・M・ロジャースが提唱した理論で、新商品や新サービスが市場に浸透する際の反応について、その早さに応じて5段階に分けています。
イノベーター理論で提唱されている5つの段階は以下です。
- イノベーター(革新者)
- アーリーアダプター(初期採用者)
- アーリーマジョリティ(前期追随者)
- レイトマジョリティ(後期追随者)
- ラガード(遅滞者)
マーケティング戦略や市場のライフサイクルについて検討するにあたって、イノベーター理論は欠かせません。
イノベーター理論の5つのタイプ
マーケティングでイノベーター理論を活用する際に、各段階の詳細について知ることは必要不可欠です。それぞれの段階について詳しく解説します。
1. イノベーター(革新者)
市場全体を占めるイノベーターの割合は2.5%とされています。情報感度が高く、新しいものを求めている冒険心のある人はイノベーターになりやすいといわれています。
イノベーターとなる人は、新しい商品やサービスであることに価値を置いていることから、高い価格であっても新しい物であれば購入して試す人が多い傾向にあります。また常に新しい情報を収集していることも特徴です。
2. アーリーアダプター(初期採用者)
アーリーアダプターはイノベーターよりスピード感に劣るものの、流行に対する感度が高く、これから一般的に流行しそうな商品やサービスに対しての興味関心が高い人を指します。
オピニオンリーダーやインフルエンサーなど情報発信する立場になりやすいことや、そういった立場を目指したりしている傾向にあることも特徴です。市場全体の13.5%がアーリーアダプターといわれています。
オピニオンリーダーに訴求するためには、商品の詳しい情報などを掲載したコンテンツを作成し、積極的に情報発信しているサイトへの掲載が重要です。これにより影響力のあるレビューが付き、認知度の向上が期待できるため、売上のアップにつながると考えられます。
3. アーリーマジョリティ(前期追随者)
アーリーマジョリティは情報感度がある程度高いものの、新しい商品やサービスの購入に慎重な人のことで、市場全体の34.0%を占めているとされています。
アーリーマジョリティは、アーリーアダプターがSNSやブログなどの媒体で発信した情報によって購入するかどうか決めることから、アーリーアダプターの影響を強く受けるといえます。
アーリーアダプターからの情報発信を強化することで、訴求力や認知度が高まると考えられます。
4. レイトマジョリティ(後期追随者)
レイトマジョリティとは新しい商品やサービスに消極的で、実際に使った人の感想について調べたうえで利用を検討する人です。市場全体の割合は、アーリーマジョリティと同じく34.0%といわれています。
レイトマジョリティに効果的にアピールする際には、「この商品を買わないと時代に追い付いていけない」ことを伝えると効果的だとされています。
そうするためには、実際に多くの人に商品やサービスを利用してもらわなければなりません。イノベーターからアーリーマジョリティに当てはまる層にいかに多く利用してもらうかがポイントです。
5. ラガード(遅滞者)
ラガードは5つのタイプの中で最も保守的で、新しいものに対して興味関心を抱かない人のことをいいます。市場全体で約16.0%を占めているといわれています。
ラガードが購入を決めるポイントは、伝統や文化に新しい商品、サービスが浸透しているかどうかです。
それによって商品を買う必要性があると判断した場合に購入するとされています。そのため直接ラガードに対して購入を促すようなマーケティングは、あまり効果が期待できません。
イノベーター理論をもとに市場開拓で意識すべきこと
最後に、イノベーター理論を踏まえたマーケティング戦略について、意識することを2つの観点から解説します。
キャズム理論を踏まえたマーケティング施策を
イノベーター理論を活用する際に意識すべきことが「キャズム理論」を活用することです。キャズム理論は、イノベーターやアーリーアダプターに当てはまる約16%の人と、アーリーマジョリティ以下のタイプに当てはまる人のあいだに「キャズム」という溝があるという考え方です。
キャズム理論はジェフリー・A・ムーアによって提唱された理論で、マーケティングにおいてキャズム(溝)を超えることで、市場開拓に重要な意味があるとされています。
あくまでもメインの市場は84%を占めるアーリーマジョリティ以下に該当する人であり、この市場を攻略しなければ商品やサービスが多くの人に認知されたり、利用されたりしないためです。
アーリーアダプターを狙う
アーリーアダプターにいかにしてアピールするかが、商品やサービスの認知度を左右するポイントとなります。
メイン市場のオピニオンリーダー的な存在であるアーリーアダプターに商品の魅力を理解してもらうことが必要不可欠です。
アーリーアダプターは周囲に強い影響力を持っていることから、SNSやブログなどの媒体で魅力について発信してもらうことにより、アーリーマジョリティ以下の層への訴求効果があると考えられます。
これらのことからマーケティングにおいて、アーリーマジョリティー以下の層へのアプローチではなく、アーリーアダプターに魅力を理解し、発信してもらうことが重要であるといえます。
イノベーター理論の成功・失敗・応用事例
イノベーター理論における「新商品」の対象は「モノ」だけに留まらず、サービス全般にも当てはまります。
本項では具体的な市場を例に挙げ、同理論の成功事例・失敗・応用事例について解説します。
コーヒーマシン市場にみる成功事例
企業戦略が功を奏し、商品の市場普及に成功した最も顕著な事例としては、コーヒーブランドのネスカフェが挙げられます。
ネスカフェを展開するネスレ日本は、自宅以外での主なコーヒー消費場所である職場に着目し、自社開発のオリジナルコーヒーマシン「バリスタ」の職場浸透を目指しました。
その際に転機となったのが、同マシン普及プログラムの一環として2012年9月から始まった「ネスカフェ・コーヒーアンバサダー」という制度の活用です。
同制度は、一定条件を満たした「オフィスを代表するアンバサダー」は、自宅と職場の両方に無料で同マシンを設置可能であり、社員はコーヒー代だけ支払えば職場にいながら様々な種類の上質なコーヒーを試すことができる、という内容です。
このユニークなプロモーション施策は、目新しさに加えて、気軽さと実用性を明確に打ち出した顧客側のメリットにより大きな注目を集め、開始から僅か4年で28万人ものアンバサダー誕生につながりました。
アンバサダーは、イノベーター理論におけるアーリーアダプターに該当します。アーリーアダプターの開拓、そして市場普及に成功した好例であるといえるでしょう。
電子書籍端末市場にみる失敗事例
現在、電子書籍といえばKindleやiPadなど海外資本の端末が主流を占めていますが、国内でも端末発売に向けた動きが無かったわけではありません。1990年代初頭の時点で、すでにSONYとNECがオリジナルの専用端末を発売するなど、商品普及に着手しているものの、著作権のトラブルによる書籍数の伸び悩みや使い勝手の悪さにより、キャズムを突破できず売上が低迷、2000年頃には撤退を余儀なくされています。
アーリーアダプターへの普及には必要不可欠な要素である「ベネフィット」を提供できなかったということが、顕著に表れている事例だといえるでしょう。
日本企業に代わり、市場普及に成功したのはAmazonが2007年に発売開始したKindleです。
豊富なコンテンツと廉価な端末が消費者に受け入れられ、市場拡大の契機を生み出しました。さらにAppleが2010年にiPadを発売したことにより、電子書籍の導入ハードルが一気に下がり、市場拡大に拍車がかかりました。
このように電子書籍で先行した日本勢はキャズムを超えられずに撤退という結果に終わっていますが、後発のアメリカ勢はキャズム突破に成功し、電子書籍文化を根付かせるまでに市場普及を実現しています。
観光市場への応用事例
これまでの日本の観光市場において、旅行者が有する価値観や旅の志向は画一的な側面が強く、性年代やライフステージなどの属性により、購買行動はある程度分類が可能とされてきました。
しかしながら、近年の市場成熟や顧客ニーズの多様化の影響により、属性に変わり個々の価値観が購買行動と強く結びつくようになり、旅行者の定量化による分類が困難となってきています。
そのような中、JTB総合研究所は独自調査に基づき、旅行者を5つのグループ層に分類する「旅ライフセグメント5」を発表しました。
調査は、日本全国に居住する20〜69歳の男女5万6,615名を対象に、旅行やライフスタイルに関わる18の設問へ回答する形で実施され、回答内で見られた代表的な5つの価値観とその重視度により、旅行者をイノベーター理論同じく5つのグループ層に分類しています。
価値観として挙げられたのは、「情報感度の高さ」「人とのつながり重視」「等身大でいたい」「一味違った旅行がしたい」「価格合理性を重視」となっています。これらの価値観への重視度合いによって、旅行者を「高アンテナ」タイプ(5.2%)、「共感」タイプ(24.4%)、「メリハリ消費」タイプ(27.2%)、「体験重視」タイプ(6.6%)、「合理派」タイプ(36.6%)に分類しています。
なお、これらの5分類は、新しさに敏感に反応する「流行」、そして流行に流されずあくまで自己の理想を重んじる「自己納得感」という2つの要素での大別が可能であり、イノベーター理論において新しいものを積極的に導入する「イノベーター」と、保守的かつ伝統を重んじる「ラガード」に相当します。
JTB総合研究所は、この「旅ライフセグメント5」を属性や購買行動と掛け合わせて活用することにより、適切なターゲットへのアプローチが容易になると期待しています。
イノベーター理論を意識したマーケティング戦略を
イノベーター理論とは新しい商品やサービスが市場に浸透する際の反応について、消費者を5段階に分けてその行動や傾向について解説している理論で、社会学者のエベレット・M・ロジャースによって提唱されました。
市場において、新しいものや流行に対して情報感度の高い「イノベーター」や「アーリーアダプター」が全体の16%を占めています。また新しい商品やサービスの利用に慎重な「アーリーマジョリティ」、消極的な「レイトマジョリティ」、保守的な「ラガード」が84%を占めているとされています。
イノベーション理論をマーケティングに取り入れる際には、情報感度の高い16%の人とそれ以降の人に「キャズム」と呼ばれる溝があることについて理解しなければなりません。またそのことについて考慮してマーケティング戦略を立てることが重要です。
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