中国のマーケティング・ソリューション会社であるドラゴン トレイル インターナショナルは1月、中国の465の旅行代理店を対象とした旅行市場に関する調査結果を公表しました。
レポートによると、コロナ後に回復途上であった中国旅行市場が、2025年末に完全回復する見込みです。
本記事では、調査レポートで報告された8つの考察から中国旅行市場の最新動向を解説します。
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1. 中国の海外旅行市場、2025年末に完全回復の見込み
調査結果によると、対象旅行代理店の66%が2025年末までに回復すると予想しています。

一方で旅行市場の回復スピードは地域によって異なる点も示されており、もっとも回復が早いのが中東エリアを除くアジア諸国でした。次いでヨーロッパ、北米エリアの順で回復する見込みだと示されています。
ヨーロッパは2025年末までにコロナ前の60%まで回復すると予想されています。北米は航空便の回復が遅れているものの、米国における中国人観光客の消費が堅調に回復しているため、比較的楽観視されているようです。

2. 経済効果や消費者行動に期待、価格の重要性も
レポートによると、旅行代理店の多くが中国の経済動向や消費について楽観的な認識を示しています。経済環境、消費者信頼感が海外旅行市場に好影響を与えると予想した人がそれぞれ71%、68%と多くなっています。

中国経済と消費者信頼感に次いで、海外旅行市場に影響を与えるものとして回答が多かったのが、「国際線の就航状況」です。
国際線はコロナ後に就航数の回復が遅れており、価格の高騰が目立っていましたが、現在は順調に回復しています。特に2024年以降は主要な航空会社が路線回復に取り組んだことで運賃も安定傾向にあります。
実際に中国と日本を結ぶ旅客便数については、2024年夏ダイヤではコロナ前の62%でしたが、2024年冬ダイヤでは75.6%まで回復が進みました。
関連記事:日本の国際線はどこまで回復した?2024年冬ダイヤの航空便動向まとめ
一方で、旅行代理店の45%が旅行にかかるコストに、51%が各国の国際政治や世界情勢の不安定さに懸念があると回答しました。
3. ハイクラス旅行では若年層が増加傾向に
調査対象の旅行代理店の43%が、若年層にあたる2000年代以降の世代が主要な顧客層の一部だとしており、90年代以降の世代(68%)と80年代以降の世代(49%)に次いで3位となりました。2000年代以降の世代は80年代と割合的にもほとんど変わりなく、今後注目すべき世代であることがうかがえます。

また中高年層以降での需要が高いイメージのハイクラス旅行について、中国旅行市場では若年層も増加しつつあり、今後の旅行市場の回復において重要な役割を果たしているといいます。
特に90年代〜2000年以降の世代で離島への旅行需要が高まっており、ハイクラス旅行に含まれるクルーズ旅行を中心に、人気を集めています。
4. シニア世代の旅行市場が拡大
中国国内ではシルバー世代と呼ばれる、いわゆるシニア世代の旅行市場が急速な成長を見せています。シニア世代の旅行需要に対して中国の旅行代理店は、開拓余地が残る市場との見解を示し、今後の中国旅行市場が回復していく上での重要項目の一つとしています。
金銭的にも余裕がある世代は高品質な旅行体験を求めており、旅行において価格よりも「快適さ」や「安全性」を重要視する傾向があるといいます。

また今後、健康やリラクゼーションを目的とした「ウェルネスツーリズム」や 「ロングステイ&スロートラベル」と呼ばれる、近隣での長期間旅行を楽しむスタイルも需要が高まると予想されています。
シニア世代の需要に沿ったカスタマイズ性に富んだ商品や、高品質なツアーを提供できるかどうかが、未開拓市場において重要だと考えられています。
関連記事:訪日旅行における今後の課題や対策とは?「スローチャージ型旅行」の拡大など
5. 国際展示会よりも中国国内での旅行博が効果的
中国の旅行代理店は、国際展示会よりも中国本土や香港で開催される旅行博(旅行見本市)への参加率が高い傾向にあります。調査レポートでは、中国国外の旅行事業者が中国事業者との接点を持つためには、中国で開かれるイベントへの参加が必須になるとしています。

上記のアンケート結果には、左に中国の旅行代理店が2024年に参加した旅行博が、右には2025年に参加予定の旅行博が記載されています。
以下の旅行博は、どれも中国国内において開催される主要なイベントです。海外の旅行事業者はファムトリップを活用し、中国旅行市場への関心と理解を深めることが重要になると考えられています。
- GITF=広州国際旅行博覧会(Guangzhou International Travel Fair)
- Tourism Plus Shanghai=上海旅游産業博覧会
- BITTE=北京国際旅游博覧会(Beijing International Tourism Expo)
- COTTM=中国出境旅游交易会(China Outbound Travel & Tourism Market)
- CITM=中国国際旅行交易会(China International Travel Mart)
6. ハイクラス旅行は各世代でニーズが多様化
中国旅行市場において、ラグジュアリーツーリズムや高級旅行といわれるハイクラス旅行は多様化が進んでいます。調査レポート内では、中国人旅行者は大きく3つのグループに分類した上で、グループごとの旅行需要についても解説しています。
1:年金を含め金銭的に余裕のある高齢者層
60〜70代の世代が該当しており、比較的時間にもお金にも余裕があるのが特徴で、より質の高い旅行を好む傾向があります。具体的な旅行形態だと、ワンストップのクルーズ旅行や文化体験ができるアクティビティなどが、60〜70代には効果的だとされています。
2:高年齢かつ高所得者層
2つ目のグループは70〜80代以降の世代かつ、高所得者と呼ばれる層に分類されます。旅行の品質や快適さを最重要視しており、中でも宿泊施設に対するこだわりが強いのが特徴です。70〜80代以降の世代に効果的なアクティビティ例としては、ゴルフや温泉、高級スパなどが挙げられています。
3:旅行消費意欲が高い若年層
90〜00代で、旅行への消費意欲が高い層にも注目が集まっています。インターネット社会が当たり前になった世代であるため、他人への見せ方を意識した視覚的に映える旅行や体験型のアクティビティを好むと分析されています。
7. SNSを中心とした新しいプラットフォームの台頭
旅行代理店は、海外旅行商品のコンバージョンが最も高いプラットフォームとして、中国OTAのCtripや、SNSの抖音(Douyin)、小紅書(RED)といったツールを挙げています。
WeChat経由の直接販売など効果的だとしており、SNSをはじめとする新しいプラットフォームの台頭によって、今後さらに旅行予約媒体の多様化が進むと予想されています。

8. ホテルの中国語対応サービスの需要は高い
中国の旅行代理店にとって、提携ホテルを選ぶ際に最も重視する要素として、ホテルの環境(59%)と特徴(58%)が挙げられています。
次に重要な要素はホテルの中国語サービスで、旅行代理店の46%がホテル選びの際に考慮する要素として挙げており、25%が決定的な要素だと回答しています。
また同社が2023年4月に実施した調査によると、消費者の51%がホテルを選ぶ際に中国語サービスを重要視していると回答しており、中国語対応の需要の高さがうかがえます。
中国旅行市場は、パンデミックの影響を乗り越えて順調な回復を見せています。
同社が発表したレポートでは、変化する中国旅行市場のニーズを反映した商品開発や販売戦略を実施することで、旅行業界のさらなる成長が見込めると分析しています。
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