マーケティングリサーチには、大きく「定量調査」と「定性調査」の2種類があります。
消費者のニーズを正しく理解し、効果的なマーケティング施策を行うためには、目的や状況に応じて両者を適切に活用することが大切です。
インバウンド需要が高まる中で、訪日外国人の行動やニーズを正確に把握し、適切な施策を打ち出すには、定量データによる客観的な分析と、定性データによる深い洞察の両方が欠かせません。
本記事では、定量調査の基本や定性調査との違い、メリット・デメリット、具体的な調査手法についてわかりやすく解説します。
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定量調査とは
まずは定量調査の特徴や、定量調査と並んで使われることもある定性調査との違いについて解説します。
数値化できるデータを利用する調査手法
定量調査とは数値化できるデータを収集する調査手法のことをいいます。
得られた結果を明確に可視化できるため、全体の傾向をつかめる点が特徴です。たとえばリピート率や購入満足度、認知度などを具体的な数値で把握できます。
「○○だと思うか?」という質問について「そう思う」「そう思わない」といった選択肢から回答を選ぶアンケート調査などが代表例として挙げられます。
また定量調査には「全数調査」と「標本調査」の2種類があります。全数調査は調査対象となる母集団のすべてを調査する手法で、標本調査は母集団の中から一部を抽出して調査する手法です。
国が実施する国勢調査が全数調査、民間で主に実施される調査の多くは標本調査に分類されます。
定量調査を行う目的
定量調査を実施する目的には、おもに「実態把握」と「仮説検証」の2つがあります。
実態把握とは消費者の生活やサービス、商品の購入状況、印象などの実態を把握することです。仮説検証とはひとつの仮説に対して過去の経験や状況を分析し、その正誤を確かめることを指します。
たとえばサービスのユーザー数が増加しない際に、「サービスの価格に問題があるかもしれない」という仮説を立てるとします。仮説が正しい場合には、サービスの価格を再考しなければなりません。
そこでこの仮説を確かめるために、価格に対してどう感じているのかについてのアンケート調査を実施します。もしこの仮説が誤っていると判明すれば、ほかに原因があることがわかります。
定性調査との違いとは
定量調査と並んで使われるのが定性調査です。たとえばインタビューが定性調査の代表例で、顧客がどのような経緯でその選択をしたのか理解でき、数値だけではわからなかった新しい発見につながります。
定量調査は数や割合について調査する手法で、定性調査は数値の背景にある理由について調査する手法です。知りたい内容によって使い分ける必要があります。
定性調査について詳しくは、「定性調査とは?定量調査との違いや特徴、5つの調査方法を徹底解説」の記事で紹介しています。あわせてご確認ください。
定量調査を行うメリット
定量調査を実施するメリットはおもに3つあります。
1. 結果に説得力がある
定量調査の最大のメリットは、結果における説得力が非常に高いことです。
前述のように定量調査では具体的な数値がわかり、それらの数値をグラフや表にまとめることで、客観性が増し説得力を持ったデータになります。
具体的な数値を示すことで、主観的な判断ではなく、データに基づいた意思決定が可能になります。そのため、社内での報告や経営層への提案にも有効で、客観的なデータをもとにした議論がしやすくなります。
回答者にとっても、「はい」か「いいえ」で答えられるため回答しやすく、多くの人から回答を得られる点もメリットです。
2. 統計的な分析ができる
定量調査では、大量のデータを集めることで、統計的な手法を用いた分析が可能になります。たとえば、以下のような分析ができます。
- 相関分析:たとえば「広告費と売上の関係」などを数値で確認
- クロス集計:性別や年齢別の購買傾向を分析
- トレンド分析:過去のデータと比較し、消費者行動の変化を把握
これにより、ターゲット層の行動や市場の変化をデータに基づいて予測し、効果的なマーケティング施策を立案できます。
さらに調査の結果が数値でわかるため、全体像の把握も比較的容易です。
3. 低価格で実施できる
定量調査は、オンラインでのアンケートやデータ解析を活用することで、比較的低コストで実施できます。たとえばSNSやGoogleフォームなどを使えば無料で実施可能です。
設問数や回答者数によって料金は変動しますが、100人程度のWebアンケートなら数千円で実施できます。
定量調査を行うデメリット
定量調査を実施する際にはデメリットもあります。事前にこれらを理解しておくことで、自社に適切な調査を選択できます。
1. 深掘った質問ができない
デメリットのひとつが、理由を深掘りしたい調査には向かない点です。前述のように定量調査は数字で実態を把握する調査で、理由について知りたい場合には、定性調査が適しています。
アンケートの最後に「自由記述欄」を設け、理由や具体的な意見を記入してもらうことも有効でしょう。
2. 数値を読み解くノウハウやスキルが必要
定量調査では大量のデータを取得できますが、適切に分析しなければ価値ある情報として活用できません。
たとえばWebサイトの訪問数が増えても、「どのページが影響しているのか?」「どの流入経路が効果的か?」が分からないと施策につなげにくいのは安易に想像がつくはずです。
分析や統計のスキルを持ち合わせていなければ、得られたデータを正しく読み取って効果を得ることが難しいでしょう。
3. 新しい発見が得られにくい
定量調査では、あらかじめ用意した選択肢の中から回答を得る形式が多いため、想定外の意見や新しい発見が得られにくいという課題があります。
たとえば、「商品の購入理由は?」という質問で、「価格」「品質」「デザイン」といった選択肢を用意した場合、消費者が考えていた本当の理由(例:パッケージがかわいかったから、SNSで話題だったから)が含まれていない可能性があります。
回答者が選択肢にない理由を持っている場合、適当な項目を選んでしまうため、正確なデータが取れないといった問題が発生することも考えられます。
そのため、アンケートの選択肢を慎重に設計し、「その他」の項目を設けて自由に記入できるようにしたり、定期的に質問内容を見直し、リアルな購買動機を反映したりといった工夫が必要です。
定量調査の8つの調査方法と費用相場
定量調査にはさまざまな方法があり、目的や調査対象によって使いわけられています。
ここでは8つの方法について、その特徴やどのような場面で用いられるのかについて紹介します。
1. Webアンケート
Webアンケートは、インターネット上で意見を回収する調査方法です。
サービスに登録している調査対象者の中から調査のターゲットになる人に回答依頼を送付し、PCやスマホからオンラインで回答してもらいます。
ほかの方法と比べると低コストかつ短期間で多くの回答を得られることがメリットとしてあげられます。一方で回答者はインターネットを利用している層に限られるため、多少回答者に偏りが出ることや、回答に確実な信憑性がないことには注意が必要です。
相場は設問数や回答者数により変動しますが、数千円~10万円でしょう。
2. 訪問調査
訪問調査は調査員が自宅を訪問し、調査票に記載されているアンケートに回答してもらう方法です。
ネットリサーチよりも費用や時間はかかるものの、直接ターゲットが住む土地に赴いて調査を実施するため、日常生活を送っている空間で調査を実施できます。
ほかの調査方法と比較して、無意識に現れる行動や生活環境について調査できる可能性が高まります。
相場は調査の規模や内容により変動しますが、サンプル数50~300の場合で約100万~500万円でしょう。
3. ホームユーステスト(HUT)
ホームユーステストとは、ターゲットの自宅に実際の商品を送り、試用してもらうことでその評価を調査する方法です。化粧品やヘアケア用品など、短期間の使用では効果が感じられにくい商品のための調査によく使われています。
調査項目については、定量調査と定性調査の使い分けをすることで顧客のニーズ把握につながります。
商品サンプルの準備や発送費用も必要で、調査規模によっても大きく変動しますが、約50万~100万円で実施することが多いようです。
4. 会場調査(CLT)
ホームユーステストが自宅に商品が送られてくることに対し、会場調査はひとつの会場にターゲットを集めてその場で商品を使ってもらい、アンケートをとる方法です。
実際に体験した人が回答しているので、結果に信憑性が生まれます。また回答者が体験している際の表情や言動を目の前で確認できるため、そのリアクションも重要なデータとして残せます。
さらに、アンケートの回答において、ターゲットの回答意図がわからなかった場合その場で直接質問できるというメリットがあります。定量調査と定性調査を同時に実施できる調査でもあります。
会場の手配や参加者の募集などにより費用が変動するため、相場は約40万~300万円ほどかかります。
5. 来店者(来場者)調査
会場調査はターゲットに来場を呼び掛け実施しますが、来店者調査は来店を促すものではありません。
店舗や販売場所など特定の場所に来場した人に対して、来場の目的、購入した物、立地やイベンドの満足度などの項目に回答してもらう方法です。来場した人のリアルな反応を収集できることが特長です。
店舗で実施するのか、施設をレンタルするのかで費用が変動しますが、会場調査よりはコストを抑えて効果的な調査を行えます。
6. 郵送調査
郵送調査は、調査用紙をターゲットの自宅に送付し、回答してもらったアンケート用紙を返送してもらう調査方法です。
ネットリサーチと比較して費用はかかるものの、インターネットに慣れていない年代であっても回答しやすく、幅広い年代からの回答を得られる点が最大のメリットです。
郵送調査の相場はアンケート用紙の印刷や郵送費用を含め、約20万~50万円でしょう。
7. 街頭調査
街頭調査は、調査員が街頭に立ってターゲットを選別し、街中で調査に協力してもらう調査方法です。
調査員が質問して、回答者がその場ですぐに答えられるような、わかりやすく単純な内容の調査などに用いられています。
調査員の人件費や場所代などを含めて約15万~40万円ほどでしょう。
8. 電話調査
電話調査は調査員が電話で直接調査を実施し、その場ですぐに回答を得る調査方法です。
この調査の最大の特徴は直接すぐに回答が得られる点です。
この方法もネットリサーチの普及によりターゲットや活用の形が変わってきており、調査の内容によって利用するかどうかを見極める必要があります。
調査規模や通話料、オペレーターの人件費などによって大きく異なるため、具体的な相場は調査会社に問い合わせるのがよいでしょう。
方法を使い分けて自社に合った調査を
定量調査は結果を数値で確認できるため、裏付けデータとして非常に説得力があり、プレゼンなどにも活用されています。一方で「なぜそう思うのか」という理由について知りたい際には定性調査が適しています。
定量調査の中にもあらゆる調査方法があり、それぞれによって得られるデータも異なります。
調査を実施する際は、どのようなデータが欲しいのか、またどのような人を対象としたいのかなど目的を明確にし、それに即した方法を選ぶことで高い効果につながるでしょう。
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