【連載:マーケティング用語・施策の基礎解説】 |
「PR」と「広告」は、認知度向上や売上アップに欠かせない手法ですが、目的やアプローチが大きく異なります。
この違いを理解せずに進めてしまうと、期待した効果が得られなかったり、無駄なコストがかかってしまったりする可能性もあります。効果的な情報発信のためには両者の使い分けが重要です。
この記事では、「PR」と「広告」の8つの明確な違いから、それぞれのメリット・デメリット、さらにはPR会社と広告代理店の役割の違い、最新のマーケティング手法まで、具体例を交えながら徹底解説します。
インバウンドの最新情報をお届け!訪日ラボのメールマガジンに登録する(無料)
PRとは
PRとは、パブリックリレーションズ(Public Relations)の略です。組織を取り巻く個人や社会などを含む、公衆の理解や信頼を得るために良好な関係を築くという考え方または行動を示します。
このPRの活動として良く行われる手法が、パブリシティ活動です。組織や企業が、発信したい情報をリリースなどで情報提供し、その情報に関心を持ったテレビ、雑誌などのメディアに客観的な情報として消費者に発信されるための活動を指します。
SNSなどのインターネットを介した情報発信が幅広く行われる昨今では、消費者に直接情報を発信する活動もPRとして行う場合があります。
広告とは
広告とは、広告主となる企業が発信したい情報をテレビCMや雑誌、OOH(Out of Home:屋外広告)と呼ばれる交通広告などの広告枠などを買い取り、発信することを指します。
PRはメディアなどが情報を中立的な情報として発信するのに対し、広告は料金を支払って枠を抑えているため、企業は発信したい内容を変えることなく、掲載時期、発信方法を選択して消費者に発信できます。
この手法は、長い間日本の宣伝広報で用いられています。
PRと広告の8つの違い
PRと広告は、どちらも企業やブランドの情報を伝える手段ですが、目的・手法・信頼性・費用などが大きく異なります。
インターネットやSNSを利用したマーケティングや情報発信が盛んになり、宣伝方法が多岐にわたる今、これらのキーワードを正しく認識する必要があります。
ここでは、それぞれの違いを詳しく解説します。
違い1. 目的
PRの目的は、企業やブランドに対する社会的な信頼や共感を得て、良好な関係(Public Relations)を築くことです。企業理念の浸透、活動への理解促進、レピュテーション(評判)向上といった、中長期的なブランディングを目指します。
一方で、広告の目的は、商品やサービスを具体的に認知させ、購買や問い合わせといった短期的なアクションを引き出すことです。新商品の発売告知、セール情報の拡散、Webサイトへの誘導などが主な狙いとなります。
違い2. 発信者
PRの場合は第三者(メディア・記者・インフルエンサーなど)が情報を取り上げて発信します。企業はその情報源にはなりますが、表立って「自社発信」にはなりにくいのが特徴です。
対して広告は企業自身が主体となって直接情報を届けるものです。
違い3. 伝える手段
PRではプレスリリース、メディア取材、記者会見、SNSでの自然な拡散、イベントやCSR活動などを通じて情報が広まります。
一方、広告では、テレビCM、YouTube広告、SNS広告、検索連動広告、バナー広告、新聞・雑誌広告、交通広告など、費用を払って明確な枠を確保し、意図した内容を届ける点が異なります。
違い4. 情報のコントロール性
広告は、配信内容・タイミング・場所・ターゲットなどを企業がすべて決定できるため、高いコントロール性を持っています。
反対に、PRは第三者(メディア)に情報の掲載可否や内容編集を委ねるため、企業側での調整が難しいことが多く、思った通りに報道されない可能性もあります。
違い5. 受け手に対する情報への信頼性
PRの情報は第三者によって発信されるため、客観性・信頼性が高まりやすいという特徴があります。メディアによる報道やインフルエンサーの発言は、宣伝色が薄く自然な印象を与えるため、受け手の警戒心も少なくなります。
一方で、広告は“企業の宣伝”という印象が強いため、信頼性より訴求力を重視する傾向にあります。
違い6. 効果の出方
広告は、短期間での反応やコンバージョン(購入・申込み)につながりやすく、即効性があるのが特徴です。セールや新商品告知など、タイムリーな施策に適しています。
これに対してPRは中長期的なブランディングや企業価値の向上に貢献するもので、即時の成果というより、信頼・認知・好感度の蓄積によって効果を発揮します。
違い7. 費用
広告は掲載・配信に対して明確な費用(広告費)が発生します。料金は媒体や配信形式により異なり、リーチ数やクリック数に応じて課金される場合もあります。
一方、PRはメディア掲載自体に費用はかからない場合が多いものの、プレスリリース作成や広報人材、メディア対応のためのコストが必要になります。
違い8. 代理店
PRや広告活動の代理またはサポートを行うのが、PR会社や広告代理店です。
この2つの業種も混同されがちですが、目的や活動が異なるため、どのような宣伝広報活動をしたいかによって依頼場所が変わります。
PR会社
PR会社とは、クライアントとなる企業や組織の広報PR活動をサポート、または代理で行う会社のことを指します。具体的には以下のような業務を請け負っています。
- PRに関するプランニング及びコンサルティング
- プレスリリースの制作や配信
- PRイベントの開催
- インフルエンサーや著名人への商品サンプリング
- テレビ、雑誌などのへのキャラバン、取材対応
- メディアからの取材依頼対応
クライアントはPR会社に対し、月単位または商品や案件ごとにスポットで料金を支払い、上記のような業務を依頼します。
PR会社は依頼に合わせて企業とメディアの橋渡しやメディア掲載のためのアドバイスをし、PRしたい情報と公衆の関係を良好に保ちながら情報発信する手助けをします。
メディアからの情報発信だけでなく、インターネットやSNSを利用した情報発信が盛んな現在ではPR会社の領域はさらに広がり、FacebookやInstagramなど企業の公式SNSの運営・構築、インフルエンサーへのPRなども行います。
広告代理店
広告代理店ではクライアントの広告やマーケティング活動の仲介ならびに制作などを担っています。
クライアントの考えるゴールや課題をヒアリングし、それに合わせたプロモーション活動の提案、広告の制作、雑誌・テレビなどでの掲載枠の購入にかかわる手続き業務などを代理で行います。
以下が仕事内容の具体例です。
- 新聞・テレビ・インターネットなどの広告の制作と出稿
- 街頭、店頭などでのキャンペーンの実施
- 屋外広告の制作と出稿
- CMの制作と掲載枠購入の仲介
具体例にもある通り、広告の掲載場所は多岐に渡ります。メジャーな雑誌やテレビでの広告だけでなく、街頭にある大型モニターでの告知や電車のつり革広告、駅構内のポスターなどあらゆる場所での広告に関する業務を請け負っています。
PR (パブリックリレーションズ) | 広告 (アドバタイジング) | |
---|---|---|
目的 | 信頼・共感の獲得、良好な関係構築 (中長期的) | 認知拡大、購買促進 (短期的) |
発信者 | 第三者 (メディア、インフルエンサーなど) | 企業自身 |
伝える手段 | プレスリリース、記者会見、メディア取材、SNS拡散 | テレビCM、Web広告、新聞広告、交通広告など |
コントロール性 | 低い (メディアの判断に依存) | 高い (内容、時期、場所を決定可能) |
情報への信頼性 | 高い (客観的情報と認識されやすい) | 低~中 (宣伝と認識されやすい) |
効果の出方 | 中長期的、じわじわ広がる | 短期的、即効性が期待できる |
費用 | 掲載自体は無料の場合が多いが、活動費は必要 | 広告枠の購入に費用が発生 |
代理店 | PR会社 | 広告代理店 |
PR・広告それぞれのメリット・デメリット
PR・広告はどちらも認知獲得のために欠かせない手法ですが、それぞれメリットとデメリットがあります。これらを理解していない場合、期待した反応が得られない、費用がかさむなどの問題が起きる可能性があります。
PRのメリット・デメリット
PRのメリットは、話題性のある内容の場合、テレビやネットなどのメディアから取り上げられやすく、多くの媒体で報道される可能性が高くなることです。さらにPRで発信された情報はメディアが判断し公的な情報として発信するため、基本的には掲載費用がかかりません。
報道を介して紹介された情報は宣伝色が薄くなり、第三者からの客観的な情報として消費者に捉えられやすい特徴があります。
デメリットは、メディアが主導権を持って掲載可否を判断し、メディアのタイミングで情報が発信されるため、掲載の確約がなく、発信時期がコントロールできません。
発信内容もメディアがどう報じるかを決定する権利があるため、意図した通りに発信されるとは限らず、場合によっては炎上や非難が起こる可能性があります。
広告のメリット・デメリット
広告のメリットは、発信する内容などすべてをコントロールできるため、ブランディングがしやすい点です。掲載時期や箇所も選択でき、ターゲットに向けて同時に多くの広告を掲載することも可能なため、広告の波及効果を予測しやすくなります。
デメリットは、効果が見込みやすい掲載場所や時期は他企業などからも人気が高く、最適な広告の掲載枠を押さえようとすると料金が高くなる場合があることです。
またPRにもいえるデメリットですが、PR会社や広告代理店が間に入って広告制作などの活動をする場合、考えていた内容とのズレが起こる場合があります。
そのため、各担当者との密なコミュニケーションが求められます。
PRと広告が融合した4つの新しいマーケティング手法
近年はPRと広告の境界が曖昧になりつつあり、両者の特性を融合させた新しいマーケティング手法が多数登場しています。以下に、代表的な融合型マーケティング手法4つを、それぞれ詳しく解説します。
1. ネイティブ広告
ネイティブ広告とは、ニュースサイトやSNSなどの媒体に自然に溶け込むようにデザインされた広告のことです。
企業側が広告費を支払って掲載枠を確保しながらも、PR的に「情報提供」や「ストーリーテリング」の要素が強く、ユーザーの信頼を損なわずに訴求できるのが特徴です。
「提供:○○社」や「PR」などの表記はあるものの、共感や納得を得やすく、コンバージョンにもつながりやすい手法です。
2. 記事広告
記事広告とは、Webサイト上に掲載される、記事の形式を模したPRコンテンツのことです。
広告ではあるものの、一般的な広告のような“売り込み感”を抑え、あたかも通常記事のように自然に読者へ訴求できるのが特徴です。ただし、媒体選びやクリエイティブの質によって効果が大きく変わるため、編集力・企画力が重要です。
3. オウンドメディア
オウンドメディアとは、企業自身が運営・管理するメディアを指します。たとえば、自社ブログ、ブランドサイト、特設ページ、顧客向けマガジンなどが該当します。
ここでは広告ではなく、企業の価値観や知識をPR的に伝えることで、ユーザーとの信頼関係を構築します。
4. インフルエンサーマーケティング
インフルエンサーマーケティングは、SNSやブログなどで影響力を持つインフルエンサーに自社商品やサービスを紹介してもらう手法です。
広告のように企業が直接メッセージを発信するのではなく、信頼されている第三者(=インフルエンサー)を通して情報を届けることで、より自然な訴求が可能になります。
消費者は「友人のおすすめ」に近い感覚で情報を受け取るため、押しつけがましさがなく、共感や購買意欲につながりやすいのが特徴です。
企業が報酬を支払うことで、投稿の内容やタイミングをある程度コントロールすることもでき、PR的な信頼性と広告的なコントロール性を併せ持った手法と言えます。
PRと広告の違いを理解し、どちらを行いたいのか確認
「PR」と「広告」はそれぞれに得意分野が異なり、目的に合わせた依頼が必要です。広告代理店は広告やキャンペーンを意図的にタイミングを見計らって公衆に出せるため、瞬間的な認知獲得、話題作りが得意です。
それに対しPR会社は、段階的なPRで時間がかかる場合もありますが、ストーリー性のある情報発信が得意です。
大手広告代理店ではグループ会社にPR会社を持つ場合も多く、その逆のパターンもあります。
PR会社と広告代理店の業務内容には違いがありますが、依頼内容によっては双方が連携しながらさまざまな施策を打ち出していくケースも多くあります。
商品やサービスなど、発信したい情報を誰に向けて、いつ、どのように認知されたいかを考えるとプランを作りやすく、広告会社またはPR会社に依頼するべきかが明確になります。
またインターネットやSNSを使用した施策も増えた今では、これらを使用した広告・PR方法についても常に情報を取得することが今後さまざまなコミュニケーション施策を立案するうえで近道といえます。
インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!
【5/8開催】初心者必見「インバウンドの基礎」を学ぶ!【訪日ラボ トレンドLIVE!Vol.10】
好調が続くインバウンド業界。あらゆる民間企業や自治体が新たに施策を始めたり、これまで実施してきた取り組みを広げたりしている一方で、 「この4月で初めてインバウンドの担当になったけど、何から始めていいかわからない…」 「外国人の集客や対応が大事っていうけど、基本的なこともよくわかっていなくて不安…」 などと、焦りを感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、新年度に合わせた企画として「インバウンドを基礎から徹底解説」するセミナーを実施します。 新しくインバウンド事業の担当になった方や、改めてインバウンドについて学び直したいという方におすすめです!
<本セミナーのポイント>
- 初めてでも分かる「インバウンド」の基礎が学べる!
- 業界最大級のインバウンドビジネスメディア「訪日ラボ」の社内でも使われる講座内容!
- インバウンド業務に役立つ情報が理解できる!
詳しくはこちらをご覧ください。
→初心者必見「インバウンドの基礎」を学ぶ!【訪日ラボ トレンドLIVE!Vol.10】
【インバウンド情報まとめ 2025年4月前編】大阪・関西万博の来場「予想より多い」旅行商品予約も好調 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に4月前半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→大阪・関西万博の来場「予想より多い」旅行商品予約も好調 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年4月前編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。
「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!