「日本に、大阪にブラボーを」 4度の万博を見届けた、海外パビリオン責任者が語る“大阪・関西万博”とは

THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ- アーカイブ無料配信中
完全無料 口コミアカデミー 「インバウンドの教科書」出ました! 国別・都道府県別データ・トレンドをカバー 見てみる

13日に閉幕した大阪・関西万博。期間中の来場者数は2,500万人を超え、前回のドバイ万博(約2,410万人)を超える盛り上がりを見せました。

この一大イベントの裏側で、計20の海外パビリオンにおいて、建設から運営までプロジェクト全体を管轄し、その成功に貢献してきたのが、ドバイに本社を持つBeyond Limits代表のミケーレ・サルガレッロ氏です。

ミラノ、アスタナ、ドバイ、大阪と、これまで4つの万博を見届けてきたサルガレッロ氏。そんな彼の目に、大阪・関西万博はどのように映ったのでしょうか。

訪日ラボは、大阪万博を振り返っての率直な気持ちや、万博に寄せる想いについて、インタビューを行いました。

訪日ラボのメールマガジン登録はこちら>(無料)

ミラノ万博をきっかけに万博専門企業へ

サルガレッロ氏は、自身の会社の歩みについて語りました。

「これまでBeyond Limitsは、4回の万博を手がけています。まずは2015年ミラノ万博から始まり、2017年アスタナ万博、2020年ドバイ万博、そして2025年大阪・関西万博です」

この10年間で、Beyond Limitsは万博を専門とする各国パビリオンのプロジェクト管理において、世界トップ3に入る企業へと成長しました。万博の仕事に携わる以前、サルガレッロ氏は異色の経歴を持っています。

「私の母は元ピアノ奏者で、両親ともにアーティストでした。そのため、私自身も主に音楽の分野で専門的な教育を受けてきました。14歳からプロとして演奏を始め、長年ヨーロッパの芸術コミュニティの一員として活動していました」

しかし20年後、音楽コミュニティへの疲労感から転機を迎えます。2012年、ミラノ万博の開催3年前に、万博が若い起業家にとって魅力的な機会だと感じ、会社を設立。そしてミラノ万博での成功を機に、Beyond Limitsは万博専門企業としてノンストップで成長を遂げました。

万博準備期間も含めると、サルガレッロ氏は現時点で3年ほど、家族とともに大阪に住んでいます。

「準備期間から万博が開催される街に住むことが重要でした。そうすることで、発生する可能性がある、あらゆる機会に対応できます」

実際に住んでみてサルガレッロ氏は、「東京よりも大阪が好き」だと明かします。その理由は、大阪は世界的な大都市である東京に比べると、より人間味があり、親密な次元にあること。加えて、イタリア人であるサルガレッロ氏は、大阪の食文化の素晴らしさ、生活の質の高さを絶賛しました。

▲ミケーレ・サルガレッロ氏:訪日ラボ撮影
▲ミケーレ・サルガレッロ氏:訪日ラボ撮影

万博は単なる「見本市」ではない

万博を開催する目的について、サルガレッロ氏はその本質を力強く語ります。

万博は、企業が商談や取引を行う見本市ではありません。それは、各国が6か月間、世界に向けて最高のものを披露できるステージであり、人類最古のグローバルイベントです。

ワールドカップやオリンピックとの大きな違いは、『6か月間続く』という点です。長期間にわたって開催される万博は、各国が自国のイベント、製品、取り組み、メッセージ、そして国そのもののブランドを紹介できる、複雑かつユニークな機会なのです。

一部の方は、万博を『遊園地』のようにとらえていますが、それは少し狭い見方だと思います。たしかに、万博には遊園地のような楽しい側面もあるかもしれません。しかし一方で、空港のような物流の激しさも混在していると思います。

そして、大使館同士が隣り合っているような、外交的な意味合い、二国間交流の側面も持ちます。なぜなら、万博が開催される6か月間、パビリオンは国を代表して自国の魅力を伝える大使館のようなものだからです」

言語の壁や労働力不足…困難の先の大成功

サルガレッロ氏は、大阪・関西万博を振り返るにあたって、直近のドバイ万博と比較し、直面した困難についても語りました。

「まず、第一に万博の規模が違いました。ドバイ万博は、大阪・関西万博の3倍の大きさです。また、国内市場の強さにも違いがありました。国際ビジネス中心のドバイでは、企業が万博に携わる仕事を求めて殺到しました。一方、日本は国内市場が非常に強く、建設会社はあまり仕事に困っていないため、外国企業との新たな事業提携に積極的ではありませんでした。つまり、日本の企業に対しては、「一緒に仕事をしませんか?」というアプローチが必要だったのです。

言語の壁も、困難な要素の一つでした。ドバイでは英語が一般的に使われていますが、日本ではほとんどの建設会社が英語を話さないため、翻訳者が不可欠でした。

また、労働力不足とコストも問題でした。ドバイには豊富な労働力があったのに対し、日本では労働力が不足しており、その結果としてコストが高騰しました」

サルガレッロ氏は、そうした過去を振り返りつつも、最終的な結果について満足感を示します。

「驚くほどうまくいきました。これが万博の魔法です。夢のために一生懸命働くことの魔法は、いつも報われます」

そして、大阪・関西万博の成功は、運営委員会や関わったコミュニティの皆さんの素晴らしい仕事の結果であると強調し、最大限の称賛を送りました。

大阪・関西万博は、訪問者数でドバイ万博を上回る結果となりましたが、これは信じられない成果です。

経済的にも社会的にも、2025年は(大阪万博が開催された)1970年ではありません。彼らは、そんな困難な時代に、もう一度、関西は素晴らしい場所であることを証明しました

▲株式会社mov 訪日ラボ 菊池:訪日ラボ撮影
▲株式会社mov 訪日ラボ 菊池:訪日ラボ撮影

日本人が世界に目を向けるきっかけに 必要なのは「大胆な好奇心」

サルガレッロ氏は、万博が日本人が海外に目を向けるきっかけとなることについても、自身の考えを述べました。

「日本は非常に強力で繁栄した国ですが、島国という理由から、内向きな側面がありました。しかし万博は、日本に世界を紹介する手助けをしましたね。今は、実際に万博に行った人たちが今後どうしていくかを決める時です」

サルガレッロ氏は、日本人が海外に行き、より世界と積極的につながりを持つためには、航空運賃というコストの問題や、英語学習の必要性があるとしつつ、重要な要素として「好奇心」を挙げました。

「日本はとても快適な国で、時にはそれが心地よい毛布のように、外の世界への一歩をためらわせます。日本人を日本から連れ出すには、真の好奇心とともに、ある種の大胆さや勇気も必要です。『よし、旅行しよう。世界を見よう』と言うための

すべては「開催国・日本」を最高の形で紹介するために

サルガレッロ氏は最後に、自身にとっての「万博」を語りました。

サルガレッロ氏は、万博を「自分たち、あるいは他の国の代表として、揺るぎない信念を持って世界に提示すること」と言います。そして、パビリオンを管轄する立場として、多くの国々を代表する責任を負いながらも、そのミッションの根底には、開催国への貢献があると語りました。

「私たちは、万博を主催する国のために働いています。私たちは、海外パビリオンの成功を通じて、大阪、そして日本が世界に最高の形で紹介され、万博が成功するように全力でサポートしました。実際に、私たちはとても良い仕事をしたと思います。

最後にもう一つ付け加えたいのは、日本への感謝です。新型コロナウイルスの影響によりドバイ万博が1年遅れで開催され、準備期間が1年短縮されたにもかかわらず、大阪・関西万博は成功しました。日本に、大阪にブラボーと言わなければなりません。

今回の成功は、若い世代にも影響を与えるでしょう。日本の政治的感情が、万博に対してとてもポジティブになっていることにも気づきました。私たちは、この万博の一部であることをとても誇りに思っています」

▲左からミケーレ・サルガレッロ氏、菊池:訪日ラボ撮影
▲左からミケーレ・サルガレッロ氏、菊池:訪日ラボ撮影

インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!

訪日ラボに相談してみる

【10/16開催】宿泊施設の自社予約を増やす3つのポイントを解説!〜施設の認知拡大・予約導線づくり・予約率向上〜


株式会社movとtripla株式会社の共催により、「自社公式サイトの予約率向上に向けた最新施策」をテーマにセミナーを開催します。

インバウンド需要回復や国内旅行需要の高まりにより、宿泊施設に訪れるお客様は増えています。しかし、依然としてOTA経由の予約比率が高く、自社公式サイトの予約率が上がらない課題を感じている施設も少なくありません。

本セミナーでは、宿泊施設の認知向上と自社予約につなげるために必要な Googleビジネスプロフィール(GBP)・Googleマップの活用や口コミの重要性についてmovから解説。
そしてtripla社からは、公式サイト予約システムの最適化とGoogleマップとの連携によって、OTAと併用しながらも、自社予約を着実に伸ばしていくための実践的な施策をご紹介します。

<セミナーのポイント>

  • Googleマップが施設の認知拡大・集客につながる具体的な事例を学べる!
  • 自社予約システムとGoogleマップの連携による予約導線の作り方がわかる!
  • 公式サイトで予約を確実に獲得するUI/UXがわかる!

詳しくはこちらをご覧ください。

【10/16開催】宿泊施設の自社予約を増やす3つのポイントを解説!〜施設の認知拡大・予約導線づくり・予約率向上〜

訪日ラボ主催「THE INBOUND DAY 2025」アーカイブ配信中!

訪日ラボを運営する株式会社movが8月5日に開催した、日本最大級のインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」のアーカイブ動画が公開中です。

アーカイブ配信では、元大阪府知事の橋下 徹氏と大阪観光局理事長の溝畑 宏氏による基調講演のほか、脳科学者の茂木 健一郎氏、日本文学研究者のロバート・キャンベル氏、アパグループ 社長兼CEOの元谷 一志氏などの貴重な講演の様子を一挙公開(一部を除く)。

参加できなかった方はもちろん、もう一度議論を見直したい方も、ぜひご覧ください。

視聴はこちら(無料)

【インバウンド情報まとめ 2025年9月前編】PayPayが中国「WeChat Pay」と連携 / 観光庁予算要求814億円、人手不足対策などの予算増 ほか


訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。

この記事では、主に9月前半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。

※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。

口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。

詳しくはこちらをご覧ください。

PayPayが中国「WeChat Pay」と連携 / 観光庁予算要求814億円、人手不足対策などの予算増 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年9月前編】

今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。

「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!

→ 【無料】「インバウンドの教科書」を見てみる

完全無料 口コミアカデミー 「インバウンドの教科書」出ました! 国別・都道府県別データ・トレンドをカバー 見てみる

関連インバウンド記事

 

役にたったら
いいね!してください

この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

プロモーションのご相談や店舗の集客力アップに