旅行業界に特化したアメリカの大手調査会社フォーカスライト(Northstar Travel Group)は、11月18日~20日にカリフォルニア州サンディエゴで、「フォーカスライト・カンファレンス」を開催しました。
カンファレンスでは、AIエージェントやAI時代の検索行動、SNS、アメリカ人旅行者の消費心理など様々な講演が行われ、多数の著名企業が登壇しました。
本記事では、Google検索のトラベル部門プロダクトリードであるジェームズ・バイヤーズ氏が登壇した「AI時代の旅行検索」の模様をレポートします。
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検索は「キーワード」から「コンテキスト」へ
バイヤーズ氏は、現在の変化のスピードを「モバイルの台頭やドットコムブーム(1990年代後半に米国を中心に起こったIT企業への過剰投資)に続く変革期」と表現し、Google検索におけるユーザー行動の変化について語りました。
これまでのユーザーは、「ナッシュビルでやること」「ナッシュビルの天気」など、3〜4語のキーワードを組み合わせ、検索を繰り返すことで旅行計画を立てていました。しかし現在は、「今週末、友人とナッシュビルに行きたい。私たちは食事と音楽が好きで、静かな雰囲気も好き、人里離れた場所を探検したい」といった、自分の文脈(コンテキスト)や要望を詰め込んだ文章で検索を行うようになっています。
バイヤーズ氏は、これを「コンテキストが魔法を解き放つ」と表現しています。ユーザーはAIに対し、自分の意図を理解した魔法のような回答を期待しており、Googleはそれに応えているとしました。
Googleの強みは「根拠の深さ」
AI時代においてLLM(大規模言語モデル、大量のデータを学習し人間のように自然な文章で応答できるモデルのこと)は非常に重要であり、Googleも「Gemini」に多大な投資を行っています。
しかしバイヤーズ氏は、「LLMだけでは十分ではない」と強調し、LLMが生成するもっともらしい旅行計画を提供するだけでなく、Googleが持つ多くのデータで「根拠づけ」を行う必要があるとしました。
- ナレッジグラフ
- 写真、レビュー、動画などのウェブコンテンツ
- リアルタイムの価格と空室状況
- Googleマップの地理情報
- パーソナライズされたデータ(過去の検索やGmailなど)
- 予約などの面倒なタスクを解決するエージェント
こうした、Googleが持つ膨大なデータとGeminiを組み合わせることで、実用的な旅行計画が可能になるということです。
例えば、「温水プールがあり、ハイキングコースにも近い、ニューメキシコ州タオスにある家族向けのホテル」を探す場合、LLMはユーザーの意図を理解して、Googleマップでハイキングコースの位置を確認し、動画やレビューから温水プールであることを確かめ、駐車スペースがあるかどうかを調べ、それら全ての情報をまとめます。
バイヤーズ氏は、他のAIプロバイダーとの競争において、こうした「根拠となるデータ」の深さがGoogleの強みになると述べました。
単純検索では見えなかった、ニッチな強みが勝機に
バイヤーズ氏は、会場に集まった旅行事業者に対し、AI時代に向けたアドバイスを送りました。
まず、「基礎を疎かにしないこと」。価格情報や在庫状況などの正確なデータは、AIが情報の「根拠づけ」を行うために不可欠であり、依然として重要な事項となっています。
その上で、「事実に基づいたコンテンツで、自社のニッチな魅力を発信すること」を推奨しました。LLMは、コンテンツとユーザーのニーズをマッチングさせる能力に長けています。
そのため、ユーザーの検索クエリが複雑になるにつれ、これまでは単純なキーワード検索では埋もれていたような特定のニーズが、AIによって掘り起こされるチャンスが増えます。
バイヤーズ氏は、「検索の未来は旅行者のために構築されている」とし、テクノロジーと旅行業界が共創する未来への期待を語りました。
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