訪日外国人の「聖地巡礼」とは? 約100万人のインバウンド観光客の満足度84.9%

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聖地巡礼」という俗語をご存知でしょうか?もともとは宗教上の聖地や霊場などを参拝して回ることを意味します。有名なものでは、イスラム教において人生のうち、1度はメッカを訪れなければならないとされている「ハッジ」ではないでしょうか。

しかしながら、現在ではその「聖地巡礼」の原義から転じて『アニメや漫画などの舞台やモデルとなった場所や縁のある場所を「聖地」と呼び、その「聖地」を訪れる』という意味がメジャーとなってきています。

いまやインバウンド需要においても重要な要素となりつつある、この意味での「聖地巡礼」について今回は解説していきたいと思います。

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聖地巡礼とは:アニメや漫画の舞台やモデルとなった土地を訪問すること

「聖地巡礼」の火付け役となった「らき☆すた」の聖地、鷲宮神社の比較画像:舞録語 -ブログガタリ-より引用

「聖地巡礼」の火付け役となった「らき☆すた」の聖地、鷲宮神社の比較画像:舞録語 -ブログガタリ-より引用

あらためてサブカルチャーとしての「聖地巡礼」の意味を確認してみましょう。サブカル文化としての「聖地巡礼」という語句は、まだ俗語であることから正式な定義は曖昧です。そのため、サブカルチャーとしての「聖地巡礼」を、現在もっとも的確に定義していると思われるニコニコ大百科より引用します。

近年では、アニメや漫画などの製造元ではなく、その舞台となった場所や物語・登場人物にゆかりのある場所のことを「聖地」と呼び、その場所へ行くことを「聖地巡礼」、「聖地訪問」と呼ばれ、ファンの間で定着している。

この現象が広まるにつれて、一般のマスメディアにおいても一種の社会現象として捉えられ、「聖地」や「聖地巡礼」という呼び方が報道でも用いられるようになってきている。(略)

現在は全国局で流れるアニメなどの聖地に行くファンの数が多くなり、また大規模なツアー形式で行われる場合もある。これにはファンがインターネット上の掲示板やblogなどを利用して広く情報を発信、共有するようになったことと、聖地とされた場所の地元商工会や自治体がこの現象を地域振興に活用するようになったことが大きく関係していると思われる。

−ニコニコ大百科「聖地巡礼」より引用
現在使われているサブカルチャーとしての「聖地巡礼」をもっとも的確に表現していると思われます。要点をまとめると、

  • アニメや漫画の舞台やモチーフとなった縁のある土地を「聖地」と呼ぶことが定着
  • その「聖地」を巡ることを「聖地巡礼」という
  • 「聖地巡礼」の経済効果が注目され始めている

というのが、現在の「聖地巡礼」に関する状況です。

埼玉県では聖地巡礼で22億円の経済効果も

鷲宮神社の「土師祭」では「らき☆すた神輿」が担がれている:産経フォト「「アニメ聖地」観光資源に 経済効果20億円超も、埼玉」より引用

鷲宮神社の「土師祭」では「らき☆すた神輿」が担がれている:産経フォト「「アニメ聖地」観光資源に 経済効果20億円超も、埼玉」より引用

では、聖地巡礼の経済効果はどれほどのものなのでしょうか。その一例として、昨今の「聖地巡礼」の火付け役とも言われているアニメ「らき☆すた」による埼玉県久喜市(旧・鷲宮町)でうまれた経済効果についてご紹介します。

アニメ「らき☆すた」では久喜市の鷲宮神社がその舞台として登場しています。アニメの効果によって、放送開始の翌年2008年正月には、鷲宮神社の参拝者は前年比で倍以上、17万人増の30万人が訪れるほどの人気を博しました。

産経フォトによると

(鷲宮神社の初詣参拝客は)11年には約47万人と5倍超に上った。

来てくれる人を楽しませようと、久喜市商工会鷲宮支所はグッズ販売やスタンプラリーを実施。毎年9月に開かれる地元の祭「土師祭」では「らき☆すた神輿」があり、多くのファンが担ぎ手になっている。

−産経フォト「「アニメ聖地」観光資源に 経済効果20億円超も、埼玉」より引用
と、地元商店街もこのブームを好意的に捉え、その後順調に客足を伸ばしたこと、そしてその経済効果は
県によると「らき☆すた」関連の経済効果は07~10年で約22億円。県は、他にもアニメのモデルが埼玉に多いことを踏まえ、13年から、県内ゆかりのアニメや漫画の総合イベント「アニ玉祭」を10月に開催している。今年は7作品の聖地を紹介し、英語のパンフレットも用意して外国人客にも積極的にアピールした。

−産経フォト「「アニメ聖地」観光資源に 経済効果20億円超も、埼玉」より引用
と、22億にもおよんでいます。また、このブームを訪日外国人観光客の招致にも活用しようとする取り組みもあるようです。

「聖地巡礼」はインバウンド需要に関連するのか

聖地巡礼」ブームは国内のみのものなのかというと、そうではありません。今や日本のアニメ・漫画はクール・ジャパンの代表的な文化として世界に輸出され、各国で翻訳され放映・出版されています。

それでは、インバウンドと「聖地巡礼」の関係について見ていきましょう。

海外でのアニメ・漫画の市場規模は3,200億円超

クール・ジャパンの代表的な文化の1つとしてあげられる日本のアニメ・漫画。その海外での人気はどれほどのものなのでしょうか。それを測るために、海外での市場規模を見てみましょう。

日本のメディアコンテンツのプロモーションを手掛ける株式会社ヒューマンメディアのレポートによれば、

  • 海外で「マンガ」といえば、日本のマンガをさす世界共通語
  • Anime=日本製アニメ、「ポケモン」68カ国、「クレヨンしんちゃん」46カ国で放送
  • 日本製アニメの海外市場は 2,000億円程度
  • 日本マンガは海外で 1,200億円程度の市場。

−出展:「日本マンガ・アニメの海外各国・各エリアでの市場動向」
と、海外においても3,200億程度の市場規模があるとのこと。また、この数値は提示されているデータを見る限り2006年ごろのものと思われるので、現在ではさらに拡大しているものと推測されます。

昨年は100万人弱の訪日外国人観光客が「聖地巡礼」していて、満足度は84.9%

観光庁「訪日外国人消費動向調査」

観光庁「訪日外国人消費動向調査」

観光庁より発行されている「訪日外国人消費動向調査」では、訪日外国人観光客のうち、どれくらいの人が「聖地巡礼」を期待しているのか、または実際に行ったのかを調査しています。

平成27年の年間値の推計のデータによると、4.4%が「聖地巡礼」(「訪日外国人消費動向調査」では「映画・アニメ縁の地を訪問」と表記)、そして、4.7%が実際に今回の訪日で「聖地巡礼」を行っています。また、次回したいこととして「聖地巡礼」をあげている訪日外国人観光客は10.5%にのぼります。

平成27年の訪日外国人旅行者数は、およそ1,974万人でした。ということは、およそ93万人の訪日外国人観光客が実際に「聖地巡礼」をし、また207万人は、次回「聖地巡礼」をしたいと回答しているということになります。

また、実際に「聖地巡礼」をした訪日外国人観光客のうち、84.9%が「満足した」と回答しています。これは観光庁が調査する20項目のうち7位タイと上位にランクインする満足度で、一見満足度が高そうな「旅館に宿泊」(75.5%)を超える数字であり、リピーター誘引効果も見込まれます。

聖地巡礼」は地方にとってインバウンド需要を呼びこむ重要企画

今回埼玉県は久喜市における「らき☆すた」の例をご紹介しましたが、最近では「ガールズアンドパンツァー」による茨城県大洗市の活性化についても話題にあがっています。

観光庁の消費動向調査によれば、100万人弱の訪日外国人観光客が、この「聖地巡礼」をおこなっており、現状インバウンド需要を首都圏に奪われ続けている地方にとっては、かなり大きな武器になりうるのではないでしょうか。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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