国際的に遅れをとっていると言われる日本の禁煙、分煙対策。たとえば、EUではイタリア、アイルランド、英国、フランス、フィンランド、スウェーデンが実質的にすべての屋内の公共の場での喫煙を禁止していますが、日本ではそこまで積極的な取り組みが行われているわけではありません。
訪日外国人観光客が数多くやってくる2020年の東京オリンピック、パラリンピックに向けた対応が進められており、今後、サービス業では「建物内原則禁煙」になる見込み。副流煙防止のため、喫煙席を設けた分煙方式は認めない方針です。このような方針決定にいたった背景、喫煙対策の難しさについてご紹介します。
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10年以上前から主張されている喫煙対策:なぜ対応に遅れが……?
国内でのたばこ対策の始まりは10年以上前にまでさかのぼり、厚生労働省のWebサイト内「たばこと健康に関する情報ページ」には、平成10年台前半に発表された資料が掲載されています。たとえば、平成14年(2002年)12月に発表された「今後のたばこ対策の基本的考え方について」には、以下のような内容が書かれています。
- がん、心臓病などの疾病の原因と喫煙が関連していることは多くの疫学研究等により指摘されている。たばこ対策を推進することにより、国民の健康に与える悪影響を低減させていくことが必要
- 喫煙による医療費、労働力などへの悪影響について研究報告がある。たばこ対策を推進することにより、これらの負担を低減させていくことが必要
- 喫煙には依存性があることは確立した科学的知見となっている
- 受動喫煙についても、本人による喫煙の場合と同様の事実が指摘されている
たばこによる健康被害、財政への影響などが指摘されており、現代でもよく耳にする内容になっています。注目すべきは受動喫煙の危険性について、この時点で指摘されていること。副流煙の悪影響にはかなり以前から注目が集まっていたようですが、そこまで厳しい対応は取られてきませんでした。いったいなぜなのでしょうか。
受動喫煙の危険性は科学的に証明されていなかった!?
その理由は、平成28年8月31日に国立がん研究センターが「受動喫煙による日本人の肺がんリスク約1.3倍」と題して研究発表した資料から推測することができます。この資料は日本人の非喫煙者を対象とした受動喫煙と肺がんとの関連について複数の論文を統合、解析するメタアナリシス研究結果を公開したもので、ニュースとして報道されました。
実は、受動喫煙に関する研究の嚆矢となったのは、国立がんセンター研究所疫学部長だった平山雄氏が行った1981年の報告。その後、国際的に受動喫煙と肺がんの関連性などについての研究が進められ、当然ながら日本も例外ではありませんでした。しかし、個々の研究では統計学的に有意な結果が得られず、受動喫煙の危険性について断言できない状況が続いていたのです。
喫煙、受動喫煙が健康に悪影響があることは知られていたものの、受動喫煙に関しては科学的に証明できていなかったというわけです。日本国内で公共の場での禁煙がなかなか進まなかったのは、このためでしょう。火を付けた状態で歩くと他人に火傷を負わせる可能性がある路上喫煙については、わりと早くから規制が行われていましたが、これも各自治体が条例として定めているだけで全国的なものではありません。
国立がん研究センターの発表の革新的な点は、単独では不十分だった国内の研究をまとめることで、受動喫煙と肺がんのあいだの関連を統計的に導き出した点にあります。同発表内では「受動喫煙による健康被害を公平かつ効果的に防ぐために、世界49カ国(2014年現在)で実施されている公共の場での屋内全面禁煙の法制化など、たばこ規制枠組条約で推奨されている受動喫煙防止策を、わが国においても実施することが必要」と受動喫煙対策に向けた法整備が、明確に主張されています。
東京五輪に向け、厳しい受動喫煙対策に乗り出す見込み
このような動きを受けてか、厚生労働省は受動喫煙防止策として学校や病院を全面禁煙にする案を公表。国際的に主流となっている、公共施設や飲食店などの屋内の公共の場における禁煙義務化が行われる見込みです。飲食店では喫煙室の設置を認めるものの、喫煙席は認められません。
罰則適用についても検討されており、喫煙者への風向きはいっそう厳しいものとなりそうです。
まとめ:日本でももうすぐ国際水準の喫煙対策か
国際的に遅れをとっていると言われる日本の禁煙、分煙対策。そもそも受動喫煙研究の先駆けとなったのは、1981年に発表された日本人の研究だったのですが、なぜこのようなことになっているのでしょうか。受動喫煙研究は世界各国で盛んに行われているものの、日本では統計的に有意な結果が出せておらず、対策が遅れていました。
東京五輪の開催に向け、厚生省は学校や病院を全面禁煙にする案を公表。公共施設や飲食店などの屋内の公共の場における禁煙義務化が行われる見込みです。
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2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
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