平成29年(2017年)3月14日、国立情報学研究所「ソーシャル・ビッグデータ駆動の政策決定支援基盤」に関する発表を行いました。各種ビッグデータ(従来のデータベース関連ツールでは分析が困難だった膨大なデータのこと)を活用するもの。インバウンドの動態把握などに役立ち、自治体や事業者が需給バランスをリアルタイムに把握しながら効果的に施策立案が可能になるとしています。
インバウンド市場に限らず、現代のビジネスでは情報収集は極めて重要だとされています。「ソーシャル・ビッグデータ駆動の政策決定支援基盤」は長崎県で導入されることがすでに発表されており、どのような成果があがるのか注目が集まるのではないでしょうか。
今回は訪日外国人観光客の動きを可視化してくれる「ソーシャル・ビッグデータ駆動の政策決定支援基盤」についてご紹介します。
【訪日ラボは、8月5日にインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を開催します】
会場での開催に加え、一部講演ではオンライン配信(参加費無料)も実施!さらに、チケットを購入した方限定でアーカイブ配信も予定しています。
ご来場が難しい方や当日ご都合が合わない方も、この機会にぜひご参加ください。
インバウンドビジネスの政策決定に、ビッグデータを活用!
国立情報学研究所は、平成12年(2000年)に「学術情報センター」として設置され、学術文献データベース「CiNii」の運営などを行っている東京都の大学共同利用機関法人。教育機関としての性格を持ちながら、「日本で唯一の情報学の学術総合研究所」として研究活動を行っています。
発表された「ソーシャル・ビッグデータ駆動の政策決定支援基盤」は、曽根原登氏らによる研究チームが開発。あまり耳慣れない「ソーシャル・ビッグデータ」という表現は「ビッグデータの中でも特に公共性を有し、社会のさまざまな分野において社会的課題の解決や新たなサービスの創出などに貢献できるもの」を意味しているそうです。
「ソーシャル・ビッグデータ駆動の政策決定支援基盤」を分かりやすく言うならば、「公共性が高く、膨大な数にのぼるデータで、さまざまなシーンでの意思決定をサポートしてくれるツール」くらいの言い回しになるのではないでしょうか。
ホテルの予約状況、Wi-Fiの利用状況などから訪日外国人観光客の流れを明らかに
曽根原登氏らによる研究チームは平成25年(2013年)にも、観光協会、商工会議所の観光関連産業に対する支援を目的として、類似のシステムを発表しています。
これは従来は不可能だった、日ごとの宿泊施設利用に関するデータ収集をできるようにしたもので、具体的には複数のWebサイト上に掲載されたデータを利用しています。観光統計との比較などを行うことでデータの信頼性を高めており、以下のような目的で使えるとしていました。
- 観光ビジネスでの機会損失
- イベント開催による経済効果の推定
- ホテルの料金予測
- ホテルの空室数予測
- 災害時に発生する帰宅困難者の宿泊支援、避難誘導支援
今回発表された「ソーシャル・ビッグデータ駆動の政策決定支援基盤」では、さらにソフトバンクが提供している無料Wi-Fiサービス「FREE Wi-Fi PASSPORT サービス」から取得されたWi-Fiアクセスポイントのログデータを活用。これにより、Wi-Fiを使用している訪日外国人観光客の流れが可視化できるようになったうえに、ホテルの予約状況などのデータの解析結果とリアルタイムに組み合わせる仕組みも用意されています。
現時点で明らかにされている利用例は以下の通りとなっています。
- 「東京マラソン」のコース沿道(500m以内)にいる訪日外国人観光客の動態を可視化(地図上)
- 東京から他の地域に移動した訪日外国人観光客の動態を可視化(地図上)
- 他の地域から東京に移動した訪日外国人観光客の動態を可視化(地図上)
- 訪日外国人観光客の動態をダイアグラム形式で可視化
- 長崎市中心部における訪日外国人観光客の動態、ホテルの予約状況、観光スポットを同時に地図上に表示
長崎大学は国立情報学研究所の共同研究パートナーとなっており、今後、同大学に「ソーシャル・ビッグデータ駆動の政策決定支援基盤」の技術移転が行われる予定。かねてから訪日外国人観光客に関するデータ解析を行っていた長崎県や同県長崎市で、来年度以降活用される予定です。
まとめ:ビッグデータがインバウンドビジネスを加速させてくれるかも……?
国立情報学研究所が「ソーシャル・ビッグデータ駆動の政策決定支援基盤」を発表。これは2013年に発表されたシステムの改良版にあたり、ホテルの予約状況、Wi-Fiの利用状況などから訪日外国人観光客の動態を可視化することが可能です。長崎大学に技術移転されたのち、長崎県、同県の長崎市で実際に活用される予定。
同システムでは訪日外国人観光客の動態を把握することが可能。ビッグデータを活用しなければ、この手の調査を行うことは困難なのではないでしょうか。「ソーシャル・ビッグデータ駆動の政策決定支援基盤」が具体的にどのような形で民間の役に立つのかまでは明らかにされてはいませんが、今後の動向に期待したいところです。
<関連>
国交省、訪日外国人観光客の「動き」が可視化できる「FFデータ」発表 国籍、利用機関、周遊ルートなどの分析に対応
国土交通省は平成29年(2017年)1月10日、訪日外国人観光客の国内流動について詳細な分析ができる「FFデータ(Flow of Foreigners-Data/訪日外国人流動データ)」を公開しました。これまでにも秋期1週間に限って作成していた「訪日外国人流動表」を拡充し、四半期、年間での流動量の分析を行うことができるもの。今回は、この「訪日外国人流動データ」がどのように活用できるのかを見ていきましょう。 目次訪日外国人観光客の動向が可視化できる「訪日外国人流動データ」制作できる資料例:流...
【無料で利用可】詳細なインバウンド分析が出来るすごいサービス 地域経済分析システムRESAS(リーサス)とは
地方自治体、インバウンド事業者の皆さん、 地域経済分析システムRESAS(リーサス)についてご存知でしょうか?これは人口急減・超高齢化という日本が直面する大きな課題に対し政府一体となって取り組み、各地域がそれぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生できるようにということで、内閣に設置された「まち・ひと・しごと創生本部」が、平成27年4月1日より、地方自治体による様々な取り組みを情報面・データ面から支援するために供用を開始したものです。地域経済分析システムRESAS(リーサス)には、地...
訪日香港人は和歌山県白浜町で320億円消費してる!?inbound insightでわかる本当のインバウンド消費
観光庁より発表される訪日外国人消費動向調査。これにより、訪日外国人観光客の消費額や訪問率などから、どの地域にどれくらいのインバウンド消費が落ちているのかをある程度推定することができます。訪日ラボでも、これらの調査をもとにして各都道府県別でインバウンド消費を算出してみました。しかしながら、これらの調査では県単位レベルでしか把握できず、市町村レベルや観光スポットレベルで、どれくらいのインバウンド消費があるのかを算出するのは難しいものです。そこで役に立つのが、株式会社ナイトレイが提供するinbo...
<参考>
【7/23開催】育成だけではガイドは増えない!地域の魅力を最大化させる『ローカルガイド』を増やす打ち手とは
本セミナーでは、インバウンド観光における地方誘客や地域消費拡大の鍵として、「ローカルガイド」の可能性に焦点を当てます。
観光地では今なお、多言語で地域の歴史や文化を伝えられるガイドが不足しており、「訪日外国人の受け入れ体制が十分とはいえない」と感じている自治体も多いのではないでしょうか。
そこで注目されているのが、地域に根ざした人々が観光客を案内する「ローカルガイド」です。
2018年の法改正により、国家資格がなくても有償でガイドができるようになり、地域住民や移住者など、さまざまな人がローカルガイドとして活躍できる時代となりました
誰もがガイドになれる今だからこそ、地域の魅力を正しく伝え、訪日外国人に満足してもらえるガイド人材がこれまで以上に重要になっています。質の高いローカルガイドを増やせば、インバウンドの消費を促進し、地域経済への波及効果も大きく期待できます。
本セミナーでは、株式会社羅針盤と株式会社movが共催し、インバウンドを地域でどう受け入れ、地域の魅力をどう伝えるか。そのために欠かせないローカルガイドを増やすための具体的な打ち手や、現場での実践例を詳しくご紹介します。
<セミナーのポイント>
- いま注目のローカルガイドについて学べる!
- 地域としてインバウンドをどのように受け入れられるのかがわかる!
- インバウンドの満足度や消費を高めるための地域の魅力の伝え方について学べる!
詳しくはこちらをご覧ください。
→育成だけではガイドは増えない!地域の魅力を最大化させる『ローカルガイド』を増やす打ち手とは【7/23開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年7月前編】「予言」の日7/5終了で訪日需要戻るか、6月の香港からの訪日客は33%減 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に7月前半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→「予言」の日7/5終了で訪日需要戻るか、6月の香港からの訪日客は33%減 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年7月前編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。
「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!