東南アジアを中心にマーケティング/プロモーションサービスを行っているPOINTSです。今回はシンガポールで毎年10月の恒例行事となっているJNTO主催のジャパントラベルフェア@シンガポール高島屋(今年の名称は「Japan Travel Fair 2017」)に潜入し、訪日キャンペーンの現場で行ったアンケートデータを参考に、現在のシンガポール市場を探っていきたいと思います。
今年は旅行会社12社、自治体や企業ブース14社が出展しました。日本に特化した旅行イベントとしてはシンガポール最大級のこのイベントには、3日間で3万人以上が来場し日本旅行に関する情報収集やツアーパッケージの購入などで大変にぎわいました。
今回我々はイベント会場にて 現地旅行会社 や 自治体・企業 の出展社に簡単なアンケートを実施し、現在の訪日シンガポール市場における訪日旅行のトレンドや現状 をレポートしたいと思います。
【訪日ラボは、インバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を8月5日に開催します】
「Japan Travel Fair 2017」に出展する旅行会社へのアンケート:実際に販売されているエリアはどこ??
各旅行会社には 今回のフェアでの一押しツアー と 販売しているパッケージの一番高いものと安いもの を伺いました。これにより、現場のリアルな声として果たしてシンガポール人が今後どのエリアに行くかが見えてくるのではないでしょうか。
Joy of Japan
- 今回の押しエリアTOP3:
- 北海道、中部、九州
- 一番安い取り扱いツアー:
- 九州周遊/ 5泊6日/SGD2,200~
- 一番高い取り扱いツアー:
- 北海道/8泊9日/シンガポール航空利用/SGD3,000~
Nam Ho Travel
- 今回の押しエリアTOP3:
- 北海道、中部(白川郷)、広島(SILKAIRの直便が就航したため)
- 一番安い取り扱いツアー:
- 夏の北海道ツアーはSGD2,400~(6泊7日)
- 一番安い取り扱いツアー:
- 冬の北海道ツアーはSGD2,700~(6泊7日)
Chan Brothers Asia
- 今回の押しエリアTOP3:
- 北海道、中部、九州
- 一番安い取り扱いツアー:
- 中部/5泊6日/SGD2,000~(オフピーク)
- 一番高い取り扱いツアー:
- 北海道/7泊9日/シンガポール航空利用/SGD3,800以上 (冬のピーク時)
Follow Me Japan
- 今回の押しエリアTOP3:
- 冬の北海道、九州(鹿児島)、春の東北
- 一番安い取り扱いツアー:
- 北海道/2泊/シンガポール航空利用/SGD1,490~(Free & Easy)
- 一番高い取り扱いツアー:
- ななつ星ツアー(全車貸し切り)一番高いSuite AはSGD20,000(約165万円)ですが、インタビュー時にはすでに売り切れていました。
Apple Vacations
- 今回の押しエリアTOP3:
- 北海道(11月~12月は道南、1月~3月は北海道全域)/中部(例:合掌村)/九州
- 一番安い取り扱いツアー:
- 3月のツアーが安い。北海道のパッケージは約SGD2,500~SGD3,500のレンジです。
- 一番高い取り扱いツアー:
- 未回答
H.I.S
- 今回の押しエリアTOP3:
- 鹿児島(来年の3月からSILKAIRが鹿児島への直便を就航するため)、沖縄、北海道。東北のツアーもだんだんと人気が出てきている。
- 一番安い取り扱いツアー:
- 北海道/3泊4日/SGD888~ (Free & Easy – 飛行機&ホテル込)
- 一番高い取り扱いツアー:
- 東北/6泊8日/SGD3,500~ (体験アクティビティが多く、旅館体験付き)
「Japan Travel Fair 2017」に出展する自治体・事業者へのアンケート:なぜシンガポールでプロモーション活動を行うのか
「市場規模が小さい(2016年度訪日者数36万人)」、「成熟市場」といわれているシンガポール市場。自治体では、このような特徴をもつシンガポール市場を重点地域としない戦略を取るケースが増えています。しかしながら一方で、シンガポール国内における日本関連のプロモーションは増加の一途をたどっています。 郊外のモールでも日本フェアが毎月行われているほどです。
このような状況の中、今回のシンガポールのジャパントラベルフェアに出展していた自治体や事業者の皆様はどのような目的をもって参加しているのでしょうか。出展理由 や PR商品 、 シンガポールマーケットを選ぶ理由 から プロモーションの課題 について聞いてみました。
石川県
- 出展理由/ PR商品:
- 「石川県」のことを知らないシンガポール人が多いので、認知度をできるだけ上げたいと考えている。また、あわせて伝統工芸品の輸出増加のために県の知名度を上げることが旅行以外においても効果を期待している。
- シンガポールマーケットを選ぶ理由:
- 市場は小さいですが、平均所得が高い。
- 将来的には県産品(伝統工芸品など)の販路拡大を目指している。
- プロモーションの課題は何ですか?
- 市場が小さいのでプロモーション予算も限定的であること。
VISIT3/ SAPPORO
- 出展理由 / PR商品:
- VISIT3の広域ルート:札幌→松本→鹿児島の周知 ※VISIT3とは今年より始まった札幌市・松本市・鹿児島市の3都市による広域連合の取り組み。
- シンガポールマーケットを選ぶ理由:
- リピーターが多い。
- 自然という観光資源への興味がある人が多いと考えている
- 食への興味が高いので(札幌、松本と鹿児島の食の文化と違いを楽しんでいただきたい)
- プロモーションの課題は何ですか?
- 富裕層向けの施策がまだ不足している。
VISIT3/ MATSUMOTO
- 出展理由 / PR商品
- VISIT3の広域ルート:札幌→松本→鹿児島
- 全体の認知度を上げたい。
- シンガポールマーケットを選ぶ理由:
- テストマーケティングとして
- 自然と食が豊かで、シンガポールの市場ニーズと合うと考えているから
- プロモーションの課題は何ですか?
- 取り組み始めたばかりで取り扱い代理店がまだ無いのでセールスコールも兼ねている。
沖縄県
- 出展理由 / PR商品
- 11月からJETSTARが沖縄への定期直行便を就航するため。(今までSILKAIRの不定期チャーター便しかなかった。)
- シンガポールマーケットを選ぶ理由:
- チャンギ空港を東南アジアのトランジットのハブとして活用したいから。現在、東南アジアの場合、沖縄への直行便はタイからしかないため、シンガポールを経由して周辺諸国からの誘致を狙えるため
- 平均所得が高いから。
- プロモーションの課題は何ですか?
- 沖縄の知名度は上がってきたが、アクセスが分からない人が多い。
- 沖縄=ビーチというイメージのようですが、アメリカと中国の文化の影響で、沖縄独特の文化があるのでそれをもっと周知して、また違った日本として認知してもらいたい。
広島県
- 出展理由 / PR商品
- 10月からSILKAIRが広島への直行便を就航するため。
- 広島は欧米の観光客が多いですが、これからはアジア系の観光客も増やしたい。
- シンガポールマーケットを選ぶ理由:
- 平均所得が高いため。
- プロモーションの課題は何ですか?
- 初めてシンガポールに出展していますので、何が効果的なのか、何が課題なのか、正直何とも言えないです。これからですね。
群馬県
- 出展理由 / PR商品
- 認知度を上げたい。
- 温泉やスポーツ(スキー、ハイキング)などのコンテンツもあることをシンガポール人に伝えたい。
- シンガポールマーケットを選ぶ理由:
- シンガポールは東南アジアのハブ(情報発信として)なので、それを活用して群馬の情報を東南アジアに拡散したい。
- プロモーションの課題は何ですか?
- いつも代理店を通じてプロモーションをしているので、エンドユーザーのニーズがちゃんと把握できません。もしエンドユーザーの要望などがもっと分かれば、コンテンツをより効果的にプロモーションできると考えています。
静岡県&神奈川県
- 出展理由 / PR商品
- 神奈川と静岡からの富士山周辺のエリアをPRするため。
- シンガポールマーケットを選ぶ理由:
- シンガポール事務所があるため活動が容易であるため。
- 静岡県と神奈川県は北海道のように人気ではありませんので、認知度を上げたい。
- プロモーションの課題は何ですか?
- 富士山は知っているが、静岡としての知名度はまだ課題が残る。静岡と四国を間違える人もいるので、知名度をあげていきたい。
ALPICO
- 出展理由 / PR商品
- 長野はゴールデンルートからちょっと離れていますが、シンガポールはリピーターが多いので、次の旅行先として選んでもらえる可能性が高いため。
- 夏の上高地と12月の冬の白馬村をPRするため。
- PR商品は2DAY Free PassportとWide Passport
- シンガポールマーケットを選ぶ理由:
- シンガポールには山がないので、長野のアルプスや雄大な自然はシンガポール人に刺さると考えている
- リピーターが多い。
- プロモーションの課題は何ですか?
- 現在シンガポールで商品を直接販売できていない。取り扱い代理店もないのでセールスコールも兼ねている。
Candeo Hotels
- 出展理由 / PR商品
- 日本国内15箇所のホテルのPR
- 六本木に近日開業するホテルのPR。
- 認知度を上げたい。
- シンガポールマーケットを選ぶ理由:
- シンガポールに法人オフィスがあるため。
- 初めてシンガポールのイベントに出展しています。
- プロモーションの課題は何ですか?
- シンガポールの市場は小さくて、数字的データが少ないこと。
Yokoso Japan Tour
- 出展理由 / PR商品
- 取り扱いツアーをPRするため。
- B2Cプロモーションで登録者を増やすため。(メールマガジンの宣伝など)
- 御社にとってシンガポールマーケットを選ぶ理由
- 訪日するシンガポール人が多いため。
- プロモーションの課題は何ですか?
- シンガポールにKNTの支店がないこと。
- 商品を販売するポイントがない。
まとめ:
開催が10月初旬ということもあり、どの旅行会社も 冬の北海道旅行が一押し&売れ筋という結果 となっているが、最近のシンガポールでは 中部と九州というキーワードを見かけることが非常に多くなった ように思えます。これは
- 雪というコンテンツはシンガポール人にとっては非常に魅力的なものとなっており人気があること
- リピーターに対しては新しいエリアへ興味が移行してきているということ
の2つの要因によって並行して発生しているということが言えます。また、九州の「ななつ星ツアー」を企画した代理店では 2万ドル(約165万円)シートから売り切れた という例をとってみても、シンガポール市場は個人消費単価が非常に高い市場である ということがうかがい知れます。
出展している自治体や事業者へのアンケート回答からも、やはり 所得の高さやリピート率ということに魅力を感じている ことがよくわかる結果となりました。今年から来年にかけて地方都市への直行便が相次いで就航予定となっています。行く手段ができた今、周辺地域や事業者はシンガポールでのPRがよりリアルに結果に結びつく可能性が高まった と言えるのではないでしょうか。
JNTO発表の8月レポート(※1)によると
「シンガポールは、前年同月比 9.7%増の 19,700 人で、7 月として過去最高を記録。シンガポー ル経済の成長鈍化などを背景にアウトバウンド自体が停滞する中、オンライン・オフライン 双方の媒体を通じて継続的に展開してきた訪日旅行プロモーションの効果が、訪日需要を下支えしていると考えられる。」 (※1)https://www.jnto.go.jp/jpn/news/press_releases/pdf/170816_momthly.pdf
とのことです。このことからも、単なる訪日者数だけでは読み解けない、その裏にある 個人消費金額 や 訪日リピート回数 、高い理解度 といったシンガポール市場の特徴は、顧客ターゲットが合う商品を扱う自治体や事業者にとっては非常に魅力的です。周辺諸国よりも魅力があり、なおかつポテンシャルのある市場であることは疑いの余地はないのではないだろうか。
今後もシンガポールにおけるプロモーションの重要性を再確認できるデータとなったのではないでしょうか。シンガポールでのプロモーションを考えている方々は是非この結果をもとに、今後の狙いを定めてはいかがでしょうか。次回は現地の旅行代理店に直撃インタビューを敢行。訪日旅行を扱う現場のリアルボイスに迫ります。
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【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
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