様々な業界・業種の関係者と協業しすることで魅力的な観光地域づくりを推進し、地域の「稼ぐ力」を引き出す組織であるDMO。DMOは、広域連携DMO、地域連携DMO、地域DMOの3種類に分かれており、日本国内には現在、計123のDMOが運営されています。DMOは海外でも同じように存在しており、地域の観光産業において中心的な役割を果たしています。
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そもそもDMOとは?マーケティングやマネジメントを行う組織日本の海外でDMOのあり方には違いも
そもそもDMOとは、Destination Marketing Organization/Destination Management Organizationの略称として使用されている言葉です。直訳すると 「 目的地に関するマーケティングやマネジメントを行う組織 」 となります。DMOの役割としては、①マーケティング機能を有すること②プロモーションを国内外に対して行うこと③稼ぐ力を付けて運営コスト負担を自ら賄うこと などが挙げられます。詳しくは以下の記事で。
最近インバウンドで良く耳にするDMOって何?そもそもDMOとは何なのか、なぜ日本のインバウンドにもDMOが必要なのかを解説
インバウンドビジネスに関わる皆さんも、最近DMOという言葉を耳にする機会が多いのではないでしょうか?でも「そもそもDMOが何なのかわからない。」という方もいるかと思います。そんな方に向けてDMOとは何なのか?日本でのDMOについて解説していきます。目次DMOとは何か?DMOの目的インバウンドにおけるDMO:日本版DMOがなぜ必要なのか?インバウンドで日本版DMOが必要な理由その1:関係者の巻き込みが不十分インバウンドで日本版DMOが必要な理由その2:データの収集・分析が不十分インバウンドで...
日本では、主に観光協会がその地域の観光を推進するための組織として機能していました。一方、海外ではDMOが 観光推進のみならず、MICE(Meeting(会議・研修)、Incentive(招待旅行)、Conference(国際会議・学術会議)、Exhibition(展示会))誘致、観光客の受け入れ環境整備、地域のブランディング・マーケティングなども行うようになってきています。 近年、日本においてDMOの必要性が叫ばれ始めている背景には、海外における先進的な観光推進組織の存在が大きくかかわっています。
では、海外においてDMOはどのように機能しているのでしょうか。カリフォルニア州のナパ・バレーのDMOの取り組みをピックアップしてご紹介します。いくつかの成功事例をご紹介します。
MICE(マイス)参加外国人
国際会議に代表されるMICE(マイス)。そのMICEを誘致することの経済効果は非常に大きいと言われています。観光庁の調査では、日本全国の 2015年のMICEによる経済効果の総額は5905億円 となり、会議に参加した外国人1人当りの消費額は約26万4000円 で、一般的な訪日外国人1人あたりの旅行支出を 10万円程度上回る 結果となり、今後の日本のインバウンド市場の底上げに貢献するものとして期待が集まっています。インバウンド受け入れ環境整備についてより詳しい資料のダウンロードはこちら「翻訳...
海外のDMOはどのように機能している?カリフォルニア州 ナパ・バレーのDMOの取り組みが面白い!
目標は「食・アート・ウェルネスにおけるアメリカ最高峰の観光地」幅広い観光客層にワインのテイスティングなど体験型コンテンツを提供
ナパ・バレーはカリフォルニア州の中西部、サンフランシスコの北側に位置する ワイナリーで有名な地域 です。ナパ・バレーのDMOの目標は、アメリカ産のワイン・食・アート・ウェルネスを楽しむことができる旅行先の最高峰としてナパ・バレーの地位を確立・保護・強化していくこと です。その取り組みの一環として、ナパ・バレーのDMOでは、観光客向けにイベントや料理教室、オリーブオイルなどのテイスティングなど 体験型コンテンツの実施に力を入れています。「食」をテーマとした体験型コンテンツの実施は、2,500以上のレストランと多くのブドウ園が存在しているナパ・バレーならではの取り組みといえるでしょう。
また、ナパ・バレーには5,000室の宿泊施設があり、5つ星の高級リゾートから低価格で利用できるB&Bまで幅広く観光客に提供 していることから、富裕層から低予算で旅行に来る人たちまで幅広い層をターゲットとして取り込もうとしている ことが把握できます。
観光産業改善地区を設置:全宿泊者に室料の2%を課金 徴収額の25%を自治体に残す取り組み
また、ナパ・バレーのDMOの取り組みにおいて興味深い点が、観光産業改善地区(Tourism Improvement District)を設けているという点。 観光産業改善地区内に宿泊した観光客全員に部屋代の 2%を課金 し、集まったお金のうち 25%を自治体に預けられます。 このお金は最終的に ナパ・バレーに観光客を増やすためのマーケティング費用などに使われます。 現在は 年間600万ドル近くの予算規模に なっているとのことで、ナパ・バレーのDMOが導入した観光産業改善地区制度のおかげで、観光客を呼び込みたい自治体は 多くの財源を確保することができるように なっています。財源確保が難しいとの声も上がる日本のDMOの現状ですが、こうした取り組みは参考になるでしょう。
こうした取り組みの結果で来訪者は9年間で約100万人増&支出額は2倍に!
こうしたナパ・バレーのDMOの取り組みの結果を表したものが以下の表です。
ナパ・バレーのDMOのKPI指標 | 2005年 | 2014年 |
---|---|---|
観光客数 | 470万人 | 550万人 |
観光客の平均宿泊日数 | 1.91日 | 3.0日 |
観光客の1日平均の支出額 | 250万ドル | 448万ドル |
観光客の総支出額 | 10億ドル以下 | 16億ドル |
平均客室単価 | 150ドル | 275ドル |
客室稼働率 | 67.4% | 68.2% |
客室供給率 | 3,334室 | 4,692室 |
宿泊客一人当たりの平均支出額 | 233ドル | 389ドル |
*KPI:key performance indicator の略で、企業目標の達成度を評価するための主要業績評価指標
上記の表でご紹介しているように、ここ9年間でナパ・バレーを訪れた観光客数は 80万人増加 しています。平均宿泊日数も 約1.5倍に伸びました。 観光客の1日平均の支出額は 約200万ドルの増加 を記録。そのほかの指標に関しても改善が見られます。「ワイン」「食」「ウェルネス」などを観光資材として整備したことや、観光産業改善地区を設けることで観光客誘致を目的とした施策の実行を可能したことによって ナパ・バレーの観光産業は着実な成長を記録 しました。
まとめ:日本のインバウンド業界で話題のDMO:海外の取り組みも参考に
今回は、海外のDMOの取り組みとしてカリフォルニア州ナパ・バレーの取り組みをご紹介しました。観光産業から「稼ぐ」力を醸成するためにもDMOの存在は必要不可欠であり、近年の日本においてもDMOの設立によって魅力的な観光地域づくりが各地で推進されています。今回ご紹介した「食・アート・ウェルネスにおけるアメリカ最高峰の観光地」を目指すナパ・バレーのDMOや以前ご紹介した宮城県のDMOで取り組む「酒造ツーリズム」などの取り組みのようにその地域ならではの強みを活かしたPRやマーケティングを実施していくことがこれからのDMO成功のカギとなってきそうです。
地方の体験型ツーリズムの具体例となるか 宮城インバウンドDMO、KADOKAWA、パソナが目指す「酒造ツーリズム」とは
訪日外国人からも人気の高い日本酒は英語では 「ライスワイン(米のワイン)」 と呼ばれ愛されています。こうした日本酒の魅力を活かしたインバウンド戦略として「酒造ツーリズム」がありますが、米どころ、酒処として有名な宮城県の宮城インバウンドDMOは株式会社KADOKAWA、株式会社パソナと共に、宮城県南の観光振興のため『宮城県南4市9町を中心とした国内外観光推進協定』を締結しました。これは宮城県内の酒造を巡る 「酒造ツーリズム」 によって宮城県南の観光振興を目指すものです。訪日客の地方誘致に重要...
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<参照> - 日本政策投資銀行:観光DMO等活動優良事例集 -なぜDMOが必要なのか-
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今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
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