2020年の東京オリンピックに向け、様々なインバウンド対策や誘致施策が行われています。それに呼応するように、訪日外客数、インバウンド消費ともに着実な成長を遂げています。
市場が拡大するに連れ、観光庁が発表する「訪日外国人消費動向調査」を始めとした各種調査において、「訪日外国人」に関する調査精度はどんどん高まっており、また多角的な示唆が得られ始めています。
しかしながら、次のステージ、すなわち「来てくれた訪日外国人をどうやってもてなすか、どうやって地方に流すか」から「どうやったら訪日旅行に興味がない外国人にも訪日需要を喚起することができるのか」という潜在的訪日客の発掘のステージに進まなければ、ポスト東京オリンピックのインバウンドビジネスに対応するのは難しいでしょう。
そこで訪日ラボでは、訪日外国人向けの調査ではなく、各国で普通に暮らす外国人を「潜在的訪日客」ととらえ、その訪日需要に関する調査を定期的に行います。調査にあたっては、世界80か国4,000万人の調査回答者へのアクセスを有し、海外リサーチに特化したソリューションを提供するSyno Japan株式会社に協力いただきました。早速見ていきましょう。
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「日本旅行をしたい理由・したくない理由」から探る次のインバウンド需要【アメリカ編】調査概要
今回、調査にあたっては今年から観光庁がプロモーションに力を入れている欧米豪市場の中でも、もっとも現状インバウンド需要があるアメリカを対象にインターネット調査を実施しました。
コンセプトムービーが公開から1か月で1000万再生突破 観光庁&JNTOが仕掛ける欧米豪向け大規模キャンペーン「Enjoy my
観光庁とJNTO(日本政府観光局)は、2月6日から、近年インバウンドビジネスで注目を集める欧米豪市場向けの大規模プロモーション「Enjoy my Japan グローバルキャンペーン」をスタートしました。本プロモーションが開始してから一ヶ月余りが経過しましたが、YouTubeで公開されている「Enjoy my Japan グローバルキャンペーン」のコンセプト動画は3月16日現在で 1,500万再生を突破 しており、好調さが伺えます。「Enjoy my Japan グローバルキャンペーン」のキ...
質問項目は、「あなたにとって、日本は観光目的の旅行先になるか」を訪ね、はい・いいえの回答に従ってそれぞれの理由を選択形式で訪ねています。これによって、アメリカ市場における「訪日需要喚起ポイント」と「何がボトルネックになっているのか」を探ります。
今回の調査で見えてきたことは
- アメリカ市場における「潜在的訪日客」がすでに40%いる。高所得者層ほど訪日意欲が高い傾向。
- 歴史体験や食など、いわゆる「コト消費」コンテンツはアメリカ市場において需要は高い。特に高所得者層ほど顕著。
- アメリカ市場における訪日需要喚起のボトルネックは「高そう」というイメージや「よく知らない」という認知の低さ。今後のPR活動に課題か。
でした。では、調査結果を見ていきましょう。
アメリカ市場では「潜在的訪日客」がすでに40%いる
- 質問
- 日本は「観光目的の旅行先」になるか、あなたの考え方をお聞かせ下さい。※単一回答
- 回答
- 興味がある・行く・行きたい:38.32%
- 興味があるが、行きたくない:28.03%
- 日本への旅行に興味がない:33.65%
日本が観光目的の旅行先になるかを質問したところ、アメリカ人のおよそ40%近くが「訪日旅行に興味がある・行く・行きたい」と回答し、潜在的インバウンド市場が十分にあることが伺えます。
一方で、「興味があるが、行きたくない」が28.03%、「日本への旅行に興味がない」が33.65%といったネガティブな回答は60%強あり、この層の訪日需要喚起が今後の課題となりそうです。
高所得者ほど訪日意欲が高い傾向に
さらに年収別に集計してみると、年収が10万ドル(≒約1,100万円)以上の高所得者層では60%弱が「訪日旅行に興味がある・行く・行きたい」としており、観光庁が近年ターゲットとしている欧米豪圏富裕層へのアプローチは潜在的需要からも理にかなったターゲティングのようです。
従来からインバウンド市場の「コト消費」の担い手だったアメリカ市場では、やはり体験系コンテンツの需要が高い
- 質問
- 日本への旅行に「興味があり、行きたい」と思う理由は何ですか?当てはまるもの全てお答えください。※複数回答
- 回答(上位5項目を抜粋)
- 日本の歴史・伝統文化体験:69.68%
- 自然・景勝地観光:59.20%
- 繁華街の街歩き:55.03%
- 日本食や日本酒:50.43%
- 買い物:42.53%
中国を始めとしたアジア圏訪日外国人が、いわゆる「コト消費」にシフトする前から体験系コンテンツの需要が高かったアメリカ市場ですが、やはり潜在的訪日客においても、「日本の歴史・伝統文化体験」や「自然・景勝地観光」といったコンテンツに需要があります。
また「その他」の自由回答においてはVFR(知人友人の訪問)を目的としている声がいくつか見られました。
最近話題の「VFR=知人・家族訪問」訪日客4,000万人誘致の鍵に?
訪日外国人の旅行目的はまちまちです。観光をしに訪日する人もいれば、出張や研修などビジネス目的で訪日する外国人もいます。中には日本で働いでいる、もしくは勉強している知人や親族に会うことを目的に訪日している外国人も存在しています。こうした人たちは、旅行業界ではVFRと呼ばれています。インバウンド対策にお困りですか?「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!訪日ラボに相談してみる目次VFRとは?:Visiting Friends ...
高所得者・富裕層ほど「コト消費」傾向が強い模様
日本への興味関心を問う質問において、前問同様10万ドルを境に年収別に集計してみると、高所得者層・富裕層ほど「コト消費系コンテンツ」への需要が高い様子が見られます。
「訪日旅行したくない」理由トップは”高そうだから”
- 質問
- 日本への旅行に「興味があるが、行きたくない」「興味がない」と思う理由は何ですか?当てはまるものをお答えください。※単一回答
- 回答
- 高そうだから:23.80%
- 海外旅行に行くつもりがない:16.85%
- よく知らないから(行きたいと思うところがない):13.60%
- 他の国のほうが優先度が高いから:10.36%
- 日本が嫌いだから:8.35%
訪日意欲を問う最初の設問に対して「興味があるが、行きたくない」「日本への旅行に興味がない」などネガティブな回答をした人に対し、その理由を問うと「高そうだから」が一番の理由に上がりました。
「海外旅行に行くつもりがない」や「日本が嫌いだから」については致し方がないものの、その他の回答については、適切な情報発信によって訪日需要の喚起のしようがある回答が数多くあります。
また、「その他」回答者の自由回答を見てみると「トランプ大統領が世界中で嫌われており、他国民のアメリカ人への嫌悪がありそうだから海外旅行したくない」といった世相を表すような回答も見られたのが印象的でした。
意外にも年収によらず「高そうだから」という理由は上位にいる
他問と同様、年収別に集計してみると、意外にも「高そうだから」という理由は収入の大小によらず上位にランクイン。
明らかに収入で回答に有意な差があるのが「他の国のほうが優先度が高いから」という回答で、年収10万ドル以下が8.67%なのに対し、10万ドル以上では25.79%となっています。
そのため、第一問の訪日意欲を問う質問にて「高所得者層の60%が訪日意欲あり」との結果が得られたものの、まだまだ取りこぼしがある様子が見られます。
まとめ:あらたな市場開拓のためにも、「潜在的訪日客」の研究も始めよう
インバウンド市場の拡大によって、様々な企業の参入・分析ツールの登場・各地での事例化から、「訪日外国人」の分析・研究が進んでいます。しかしながら、「潜在的訪日客」の研究も進めていかないことには、狙って市場を拡大させていくことは難しいでしょう。
2020年やそれ以降の「ポスト五輪」を見据えインバウンド市場を盛り上げていくには、この「潜在的訪日客」の発掘が必要不可欠であり、次なる一手を打っていくためにも、この領域へのアンテナも高くしていく必要があるでしょう。
<調査概要>
- 調査対象・有効回答数 :1049人
- 属性:男性502人、女性547人
- 調査日:2018年6月5日〜2018年6月7日
- 調査方法:インターネット調査
- 調査協力:Syno Japan株式会社
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今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
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