【MICE×地域振興】経済効果1,100億の流出を食い止めろ!「パシフィコ横浜」が取り組んだ3つの地域貢献施策とは?

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日本で開催された国際会議の件数は、2017年に過去最高となる414件となり、世界全体では7位、アジア・太平洋地域では、1位を維持しています。(2018年5月17日、日本政府観光局発表)

その背景には、観光庁が2013年に「グローバルMICE戦略・強化都市」として7都市を選定、現在では、12都市(東京都、横浜市、京都市、神戸市、福岡市、名古屋市、大阪市、札幌市、仙台市、千葉市、広島市、北九州市)を「グローバルMICE都市」として認定し、MICE専門家の派遣やマーケティング支援をすることで、MICE誘致の強化が進められてきたことがあります。

近年、アジア競合国との国際競争は激化傾向にあり、他国の動向や流行を常に注視する必要があります。今回の記事では、国内有数の複合MICE施設「パシフィコ横浜」が実施してきた地域貢献施策をご紹介します。

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MICEの経済効果を実感し、地域に還元できる取り組みとは?

パシフィコ横浜の2013年度版アニュアルレポートによると、2012年度にパシフィコ横浜で開催された催事による全国への経済波及効果は2,070億円でした。それに対して、横浜市に対する経済波及効果は約870億円と全体の約42%となっており、地域外へその効果が流出していることが伺えます。

そのようななかで、考案されたのが「地域企業とのコラボレーション」でした。MICEを通じた経済効果を実感してもらうために、地域に還元できる取り組みを積極的に行うことにしたのです。では、「具体的に何をしたのか?どんな成果が期待できるのか?」横浜の地域企業との共同企画開発を長年担当されている、パシフィコ横浜の大村正英氏にお話を伺いました。

MICE誘致のカギとなるユニークベニューの提案

数千人が参加する大型国際会議を横浜で開催するには、国際会議場と展示ホールを持つパシフィコ横浜が必要不可欠です。

世界の他都市と競合し、MICE誘致をする上では、施設規模に加え、都市の魅力やロケーション、支援内容、開催意義など、さまざまな要素を提案し、比較検討されますが、その一つとして必要とされるのが、「その街でしか体験できない」地域と連携したユニークベニューの提案です。

最近では、歴史的建造物や文化芸術施設だけでなく、商店街や公園、公道などの公共スペースを活用したパーティー等の需要が広がり、地域の人たちとの交流を通して日本文化の理解促進の一助を担っています。

年間400万人を超える来場者があるパシフィコ横浜

年間400万人を超える来場者があるパシフィコ横浜

地元百貨店とのMICEおもてなし企画

2015年5月、国際会議参加者に対し、横浜高島屋と共同で開催した「日本文化体験と免税ショッピングツアー」では、「着物の着付け」や「茶道・香道体験」を実施、特に学会限定割引クーポンを使った「デパ地下体験」は、好評でした。

着物を着てお茶を楽しむ国際会議参加者

着物を着てお茶を楽しむ国際会議参加者

「日本文化体験+免税ショッピングツアー」実施概要

日時:2015年5月15日(金)~17日(日)14:00-18:00
会場:横浜高島屋
対象:第12回アジア栄養学会議・第69回日本栄養・食糧学会大会」参加者
参加費:無料
内容:「免税ショッピング」
   「割引サービス」(3,000円以上で5%割引)
   「日本文化体験」(着物着付け、芸妓フォトサービス、茶道・香道、折り紙)
   「デパ地下体験」(当プログラム限定割引クーポン発行)
   「送迎シャトルバスサービス

地元鉄道との特典付き一日乗車券企画

2016年7月、国際会議の参加者に対し、横浜観光コンベンションビューローと横浜高速鉄道と共同で、特典付き「みなとみらい線一日乗車券」を無料配布するモニター調査を実施しました。

市内回遊を促進するため、観光・体験・飲食等の特典をつけた一日乗車券へのニーズを探るものです。「鉄道と海上交通との連携」や「観光・文化芸術施設の入館特典」、そして「鎌倉等の他都市との広域連携」などのニーズが高く、特典付き一日乗車券は、横浜を訪れる外国人のおもてなしに有効であるという結果を得ることができました。

国際会議の外国人参加者に配布されたアナウンスメント

国際会議の外国人参加者に配布されたアナウンスメント

「横浜版インバウンドパス(仮称)」実証実験実施概要

日時:2016年7月24日(日)~29日(金)
対象:「第31回国際心理学会議(ICP2016)」の外国人参加者
参加費:無料
内容:学会オリジナルデザインの「みなとみらい線一日乗車券」の配布
   「特典サービスクーポンガイド」の配布
   「参加者アンケート」の実施

横浜野毛地区のお店とのユニークベニュー開発

昭和のレトロ感が漂う野毛地区は、みなとみらいにはない下町の気分を味わうことのできる街です。そこで、国際会議参加者に対するユニークベニュー化を見据え、夕食後の飲み屋街や夜景鑑賞、街歩き等を楽しみながら、横浜の隠れた良さが発見できる「野毛 横浜おもてなしナイト(2018年6月28日開催)」のモニター会を実施し、MICE関連事業者や市内関係機関の方々にその可能性を探っていただきました。

重要なポイントは、地域の方が歓迎し、自主的に取り組みたくなる仕組みをつくることです。ここでは特筆すべき要素を3つご紹介します。

仕組みその①:座席を店舗内で必ず確保する

開始時間が19時と遅い時間でしたので、入店待ちが出た場合に、モニター参加者が歩道や店の前で大きな声で会話をすることが近所迷惑になると予想されました。そこで、確実に店内で飲食ができるよう、事前に各店舗の協力を得て、参加者全員分の席を各店舗に確保しました。

仕組みその①:座席を店舗内で必ず確保する

仕組みその①:座席を店舗内で必ず確保する

仕組みその②:コンシェルジュを路上に配置する

初めての野毛探索の人にとっては、小さな路地が多い街で目標のお店を見つけるのは難しいかもしれない、また、楽しくてつい、いつもより飲みすぎてしまいトラブルになってしまうかもしれないと予想されたため、道案内と店紹介、参加者のケアを目的としたコンシェルジュを路上に配置し、スムーズに参加者を誘導することができました。

仕組みその②:コンシェルジュを路上に配置する

仕組みその②:コンシェルジュを路上に配置する

仕組みその③:ゴミ拾いを徹底する

「イベント実施前より街をきれいにする!」を心掛け、モニター会の参加者から有志を募り、翌朝にゴミ拾いを実施。地元の区役所から軍手や火バサミの貸し出しやごみ袋、ゴミ処理の協力をいただきました。

仕組みその③:ゴミ拾いを徹底する

仕組みその③:ゴミ拾いを徹底する

今回実施したモニター会は、地域企業や行政、各店舗のご協力を頂けたことで大変好評でした。今後、このようなユニークベニューの取り組みを持続可能な活動に発展させ、企画自体の精度を高めるためには、各所との日頃のコミュニケーションや関係づくりが大切です。

まだまだできる地域のユニークベニュー開発

野毛地区で実施したモニター会は有料にもかかわらず、県や市、大手旅行会社、ホテル、大学などから声がかかり、定員100名をはるかに超える180名が参加しました。

今回のモニター会で得られた調査データは、今後のユニークベニューの拡張と発展において大変有意義な結果となりました。例えば、雨天でも安心して行動できるアーケード式商店街を活用した「貸切イベント」や、野毛地区以外の商店街と連携した「飲み歩きツアー」、ナイトタイムエコノミーとして深夜でも楽しめる「新規店舗の開発」など、取り組みを広げる根拠となる貴重なサンプルになるでしょう。

「野毛 横浜おもてなしナイト」を企画し、これからのユニークベニュー開発について語るパシフィコ横浜の大村正英氏

「野毛 横浜おもてなしナイト」を企画し、これからのユニークベニュー開発について語るパシフィコ横浜の大村正英氏

まとめ

  • MICE誘致において、地域とコラボレーションしたユニークなコンテンツ開発は、まだまだ日本において未成熟である。
  • より発展させていくためにも、“地域の良さ”を発見し、細やかなコミュニケーションを通じて“地域の積極的な協力を得る”ことで、新たな発想と実現が可能となる。

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この記事の筆者

日本コンベンションサービス株式会社(JCS)

日本コンベンションサービス株式会社(JCS)

MICE都市研究所メンバーによる執筆。JCSは、国際会議や企業ミーティングの企画・運営、通訳・翻訳サービス、大型カンファレンス施設の運営等を展開しています。いま注目されている「MICE」の最新トレンドや事例、ビジネスネタを幅広くご紹介します。

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