【徴用工判決】好調続く韓国インバウンドに急ブレーキか/韓国最高裁 新日鉄住金に元徴用工へ約1千万円の賠償命じ、「国際法違反」と日韓外交に波紋が

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韓国の最高裁にあたる韓国大法院が元徴用工の訴えを認める形で、新日鉄住金に元徴用工への賠償を命じました。賠償金額は1人あたり1億ウォン(※約1000万円)で、元徴用工を巡る裁判の中で、日本企業に対して賠償を命じる判決が出たのは初となります。支払いを拒んだ場合は新日鉄の韓国内の財産差し押さえの可能性もあるとされています。

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韓国の日本に対する請求権は1965年の日韓請求権協定によって「完全かつ最終的に解決済み」

今回韓国側が要求している徴用工をめぐる賠償請求ですが、そもそも韓国は日本政府と1965年に合意した日韓請求権協定第2条で、徴用工への未払い賃金を含む日韓両国間の請求権問題は「完全かつ最終的に解決されたことを確認」しています。

どういうことかというと、当時韓国で徴用工として正当に請求権を持つ個人に日本政府が保証金の直接支払いを提案したものの、韓国政府はこうした個人への保証は韓国政府が行うことを希望。そしてこうした保証金を含む形で、韓国はこの時、日本から5億ドル(※現在のレートで換算すると566億円)(無償3億ドル、有償2億ドル)、民間借款の3億ドルの合計8億ドルの経済協力支援金を得ているのです。これは当時の韓国の国家予算の約2倍の金額であったことを考えると、いかに莫大な経済支援が行われたのかがわかります。

今回の判決について、韓国政府は「司法の判断を尊重する」としていますが、国際条約である日韓請求権協定より司法判断が優先されるとなると国際法違反となるため、日本政府としては法的対応として、国際司法裁判所への提訴を行う可能性があります。

そもそもの始まりは1997年

今回大きな話題となっている元徴用工を巡る韓国大法院の判決ですが、始まりは1997年に元徴用工4人が大阪地裁に新日鉄住金を訴えたことから始まっています。

この裁判で大阪地裁は新日鉄に損害賠償責任は無いと判断、2003年に日本の最高裁で原告が敗訴しています。その後元徴用工の4名は2005年2月に韓国に場所を移しソウル中央地裁に提訴するも2008年に4月敗訴。その後ソウル高裁にも控訴していますが2009年7月に敗訴しています。

しかしその後、2012年5月に韓国大法院は徴用工に関する「保証金の請求権が日韓請求権協定で解決されたとみるのは難しい」とし、控訴審の破棄、ソウル高裁での審理差し戻しを指示。2013年7月にソウル高裁は元徴用工1人あたり1億ウォン(※約1000万円)の賠償を認めましたが、新日鉄側はこれを不服として再度上告していました。

安倍総理は「国際法に照らしてありえない判断。毅然として対応」と発言

今回の判決は2013年7月以降5年以上経っての判決となりますが、1965年の日韓請求権協定に則って考えればこうした元徴用工への個人保証は韓国政府が行うものであり、日本企業が賠償請求を負うのは道理として間違っています。

日韓請求権協定は日本政府と韓国政府の国家間の合意である国家条約で、今回の韓国大法院の判決は国際法違反の判決であるだけに、安倍総理も「今般の判決は国際法に照らしてありえない判断。日本政府としては毅然と対応してまいります。」と明言。

安倍晋三首相によるTwitterの投稿
▲安倍晋三首相の投稿:Twitterより訪日ラボ編集部スクリーンショット

Twitter:安倍晋三首相の投稿(https://twitter.com/AbeShinzo/status/1057188600020852737)

また、自民党外交部会、外交調査会、日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会などは、10月31日に党本部で合同会議を開催。この中で韓国側に原告側が求める賠償金の支払いに関して、日韓請求権協定に基づく仲裁委員会の設置を日本政府から韓国政府に求めるよう政府に求めることを決議する方針です。

また外務省の金杉憲治アジア大洋州局長によると、韓国で日本企業に対する同様の元徴用工に関する訴訟は他にも15件あり、韓国で被告となっている日本企業が69社(※一部では80社との報道もあります)あるとのことで、今回の判決同様に元徴用工1人あたり1000万円の賠償金が認められた場合、日本企業の元徴用工への賠償金額は2兆円を超えることになります。

韓国の「いつものパターン」への日本政府の対応に注目

今回の賠償請求で思い出されるのは慰安婦問題でしょう。慰安婦問題に関しても、韓国の日本に対する請求権は日韓請求権協定によって「完全かつ最終的に解決済み」であったはずが、慰安婦達が個人の請求権はなくなっていないとして賠償金を要求。

93年8月に宮沢内閣の河野官房長官が元慰安婦に「おわびと反省」を表明。日本政府は日韓請求権協定によって賠償請求に関する問題は解決済みという立場のため、民間募金の形をとって「女性のためのアジア平和国民基金(アジア女性基金)」を創設しました。

その後、2015年12月に「日韓間の慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決」を確認した慰安婦問題日韓合意が発表され、韓国政府が元慰安婦支援のため設立する財団に日本政府が10億円を拠出していますが、これで韓国側にとっての慰安婦問題が集結したとする見方は少ないのが実情です。

今回の元徴用工問題も、日韓請求権協定によって日韓両国間の請求権問題は「完全かつ最終的に解決済み」であるはずですが、韓国大法院が日韓両国間の請求権問題を蒸し返す判決を出した形となります。

韓国政府の狙いとしては「司法の判断を尊重する」立場を取りつつ、国際法違反となるため、「間をとって」慰安婦問題同様に民間募金の形をとる/韓国政府が設立する財団に日本政府、被告企業らが賠償資金を拠出するシナリオを描いているのかもしれませんが、日本国内の強い反発を受け、日本政府がこのシナリオ通りに沿って進むとも考えにくいのが現状です。

民間で懸念されるのは両国間の市場の冷え込み

今後の日本政府の対応、韓国政府の対応は大いに注目されるところですが、民間で懸念されるのは韓国における日本製品不買、日本における韓国製品の不買、旅行、インバウンド市場の冷え込みです。

政府間の対立によって市場が冷え込むという事例は、2017年4月に韓国がアメリカの最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」を配備したことを受けて、中国市場での現代自動車が販売に苦戦したこと、配備を巡る対立から中国政府が3月15日から韓国への団体旅行を禁止したことが理由で韓国を訪れる中国人観光客が40%減少するなどの問題が起きたことが記憶に新しいわけですが、同様の事例が日本と韓国の間でも発生する恐れがあります。この問題が果たしてどのような結末を迎えるのか、インバウンド業界としても注視が必要でしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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