2018年の年間訪日外国人客数は3,000万人を超え、2020年に4,000万人という政府の目標も現実味を帯びてきています。東京オリンピックに向けて、さらなる訪日外国人の増加が予想されます。
しかしながら、次のステージ、すなわち「来てくれた訪日外国人をどうやってもてなすか、どうやって地方に流すか」から「どうやったら訪日旅行に興味がない外国人にも訪日需要を換気することができるのか」という潜在的訪日客の発掘のステージに進まなければ、ポスト東京オリンピックのインバウンドビジネスに対応するのは難しいでしょう。
そこで訪日ラボでは、訪日外国人向けの調査ではなく、各国で普通に暮らす外国人を「潜在的訪日客」ととらえ、その訪日需要に関する調査を定期的に行います。調査にあたっては、世界80か国4,000万人の調査回答者へのアクセスを有し、海外リサーチに特化したソリューションを提供するSyno Japan株式会社に協力いただきました。早速見ていきましょう。
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「日本旅行をしたい理由・したくない理由」から探る次のインバウンド需要【ベトナム編】調査概要
今回の調査にあたっては、ベトナムを対象にインターネット調査を実施しました。
質問項目は、「あなたにとって、日本は観光目的の旅行先になるか」を訪ね、はい・いいえの回答に従ってそれぞれの理由を選択形式で訪ねています。これによって、ベトナム市場における「訪日需要喚起ポイント」と「何がボトルネックになっているのか」を探ります。
今回の調査では、
- ベトナム市場における「潜在的訪日客」はすでに86%いる。女性のほうが訪日意欲が高い。
- ベトナム市場では自然や歴史体験など、いわゆる「コト消費」コンテンツの需要が高い。男性に比べ女性のほうが興味の幅が広い。
- ベトナム市場における訪日需要喚起のボトルネックは「高そう」というイメージ。一方「行きたくない・興味がない」理由は男女差が大きい。ターゲットを設定してPRすることが必要。
ということがわかりました。では調査結果を見ていきましょう。
「潜在的訪日客」は8割超
- 質問
- 日本は「観光目的の旅行先」になるか、あなたの考え方をお聞かせ下さい。※単一回答
- 回答
- 興味がある・行く・行きたい:85.96%
- 興味があるが、行きたくない:11.05%
- 日本への旅行に興味がない:2.99%
日本が観光目的の旅行先になるかどうかを質問したところ、ベトナム人のおよそ86%が「訪日旅行に興味がある・行く・行きたい」と回答しました。
同様の調査をアメリカ・台湾・マレーシアを対象に行いましたが、「訪日旅行に興味がある・行く・行きたい」と答えた人はアメリカで38%・台湾で65%・マレーシアで63%でした。これらの結果と比べると、ベトナム人の訪日意欲は非常に高いといえます。
女性のほうが訪日意欲高い
同じ項目を男女別に集計してみると、「訪日旅行に興味がある・行く・行きたい」とした男性は83.56%、女性は88.85%で、女性のほうが訪日意欲が高いことがわかりました。
「コト消費」需要が高まっている
- 質問
- 日本への旅行に「興味があり、行きたい」と思う理由は何ですか?当てはまるもの全てお答えください。※複数回答
- 回答(上位5項目を抜粋)
- 自然・景勝地観光:71.23%
- 日本の歴史・伝統文化体験:62.70%
- サービスの質がいいから:49.00%
- 温泉入浴:48.47%
- 日本食や日本酒:48.16%
最近のインバウンドでは「モノ消費よりコト消費」という傾向がありますが、ベトナム市場においてもこのトレンドは当てはまるようです。
また、約半数の人が「サービスの質がいいから」をあげていますが、アメリカへの調査では26%・台湾では42%・マレーシアでは43%となっており、比較的ベトナムでは日本の「サービスの質」に魅力を感じる人が多いようです。
なお、自由回答の項目では、訪日旅行に興味がある理由としてVFR(=Visiting Friends and Relatives、知人・親族訪問)をあげた回答が複数みられました。
女性のほうが興味が多岐に渡る
先ほどと同様、同じ項目を男女別に集計してみると、女性のほうが多くのことがらに興味を持っていることがわかります。
「自然・景勝地観光」「日本の歴史・伝統文化体験」はそれぞれ女性のほうが男性より13%ほど高く、特に「温泉入浴」は20%ほど高くなっています。
「訪日旅行したくない」理由トップは”高そうだから”
- 質問
- 日本への旅行に「興味があるが、行きたくない」「興味がない」と思う理由は何ですか?当てはまるものをお答えください。※単一回答
- 回答(上位5項目を抜粋)
- 高そうだから:39.35%
- 一緒に行ってくれる人がいないから:21.94%
- 海外旅行に行くつもりがない:21.29%
- 為替的に今はお得じゃないから:20.65%
- 行くのが遠いから:19.35%
訪日意欲を問う最初の設問に対して「興味があるが、行きたくない」「日本への旅行に興味がない」などネガティブな回答をした人に対し、その理由を問うと「高そうだから」が一番の理由に上がりました。
他の国への調査でも「高そうだから」はトップになりましたが、やはり訪日旅行には「高い」というイメージがあるようです。「潜在的訪日客」に実際に訪日してもらうためには、そのようなイメージを払拭することが必要です。
男女で「訪日旅行したくない」理由に差が
訪日旅行に「興味があるが、行きたくない」「興味がない」理由についての回答を男女別に集計すると、男女で大きな差がみられました。
男女ともにトップは「高そうだから」ですが、その割合は男性33.33%、女性50.00%とかなり差があります。続いて男性の2位は「一緒に行ってくれる人がいないから」になりましたが、女性の2位は「為替的に今はお得じゃないから」という結果になっています。
また、女性では5.36%で8位の「よく知らないから(行きたいと思うところがない)」は、男性では20.20%で3位となりました。ベトナム人男性の間では、訪日旅行の知名度がまだ低いようです。
まとめ:
今回行ったベトナムへの調査では、ベトナム人の訪日意欲は他国と比べても非常に高く、「潜在的訪日客」がかなりいることがわかりました。
また、「訪日旅行したくない」理由については男女差が大きいことがわかりました。ターゲットを設定する際に「ベトナム人」で大きく一括りにするよりは、男女別で異なるプロモーションをしたほうが効果的だといえます。
2020年の東京オリンピックに向けてあと1,000万人訪日客を増やすためには、今までに訪日旅行をしたことがある人にアプローチするだけでは不十分です。これからはこういった「潜在的訪日客」にもしっかりと目を向けることが重要です。
<参照>
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
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- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。
この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
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