【中国】モバイル決済浸透率 驚異の68%のワケ…背景にある「信用スコア(ゴマ信用・セサミクレジット)」を解説/中国のモバイル決済事情&最新のユーザー動向! 

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こんにちは、クロスシー編集部です。

今回は中国で普及が進む「モバイル決済」について、その普及度合いと、ユーザーを惹きつけている機能について解説します。

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2019年1月現在の中国モバイル決済の普及状況とは? Alipay、WeChat Paymentで9割

中国の「モバイル決済」は、スマホ上のアプリでQRコードを読み取ったり、バーコードを読み取らせたりすることで、アプリ内にチャージしたお金を支払いに充てることができる仕組みです。現金やクレジットカードではなく、銀行口座の資金を直接支払にあてることができるのが特徴です。

ECサイト「タオバオ」の運営で知られるアリババ系列のサービスであるAlipay、また中国最大規模のメッセージングアプリWeChatを運営するテンセント系列のサービスである「WeChat Payment」が2大決済サービスとして、それぞれ53.76%、38.95%と市場の9割以上のシェアを獲得しています(2018年第一四半期のデータより)

これら以外にも、保険で有名なPING ANグループ(中国平安)が運営する「壱銭包」、百度の運営する「百度銭包」、中国人民銀行の開発する「雲閃付」(QuickPay)や、家電とECサイトで有名な蘇寧グループの「蘇寧銭包」、公益活動に力を入れている「易宝支付」など様々なブランドが存在します。

▲2018年第1四半期(1~3月)モバイル決済の取引額別マーケットシェア
▲2018年第1四半期(1~3月)モバイル決済の取引額別マーケットシェア

その市場規模は2018年の第1四半期(1~3月)で取引額は初めて40兆3645億元と、初めて40兆元(660兆円、1元=16.5円で換算)を超えました。また前年同期比較の増加率は6.99%成長であり、この数字は2017年の各四半期における数字(22.50%~46.78%)と比べ低下しています。
▲2017年第1四半期から2018年第1四半期までの取引額と前年同期比
▲2017年第1四半期から2018年第1四半期までの取引額と前年同期比

ちなみに、現在の中国のインターネット利用者数は8.02億人(2017年末より3.8%増)、インターネット普及率は57.7%です(2018年6月30日までのデータ、2018年8月20日CNNIC中国インターネット情報センターの発表による。以下同じ)。モバイルユーザーは7.88億人で全インターネット利用者の98.3%に上ります。

その様な中、今回テーマとするモバイル決済を含む電子決済の2017年時点での中国全体での普及率は76.9%、モバイル決済の浸透率は68%という数字が報告されています。また2018年6月末時点でのインターネットを通じた資産運用サービスの利用率は21.0%、ユーザー数は3974万人に達し、これは半年で30.9%の成長だそうです。

中国でモバイル決済が普及した理由、そして複数のモバイル決済を使い分ける 決め手は「信用スコア」

なぜモバイル決済が普及したのか

中国人がモバイル決済を利用する理由には「現金を持ち歩く必要がなく便利だから」というのも一つですが、その他に「利用すると割引があるから」「利用するごとにポイントが貯まりお得だから」というものもあります。

利用すると割引になるケースにはたとえばWeChatと連動したものがあります。WeChat Paymentで購入をした場合に割引が適用となると、これを利用した支払いを選択するユーザーが現れます。この支払いと連動して、たとえばブランドの公式アカウントを自動的にフォロー開始するような設定をすることができます。

その後もブランド側からユーザー(フォロワー)に向けてクーポン券やセール情報が配信できるため、ユーザーにとってはお得に商品が買えるというメリットが、店舗側にとっては集客チャネルとして活用できるというメリットがあります。加えてその中で、ユーザーの消費動向や居住地やその他の関心領域を収集し、ブランドのファンの動向の分析に生かすことができます。

AlipayとWeChat Paymentの使い分けは? Alipayのサービス「芝麻信用」(セサミクレジット)の強み

では中国人ユーザーは、AlipayWeChat Paymentについて、どのような基準で使い分けしているのでしょうか。

基本的には、ECサイトや実店舗が、アリババ系のサービスなのか、それともテンセント系のサービスなのかで使えるモバイル決済の種類が決まってしまいます。アリババ系列のサービスでは基本的にはAlipayしか利用できません。ECサイトのタオバオやTmall/Tmall国際、昨年話題となった無人スーパー「盒马鲜生(ハーマーシエンション)」などがこれにあたります。

両者が使える場合には、ユーザーは先に紹介したような割引のあるなしで利用するモバイル決済の種類を決定することもありますが、こういった差別化できる要因もない場合はAlipayを選ぶという場合も多いようです。これはAlipayに連動する芝麻信用」(ゴマ信用・セサミクレジット)という機能が理由となっています。

この「芝麻信用」(ゴマ信用・セサミクレジット)はアリババ系列の信用格付け機関がユーザーに得点(スコア)を与えるサービスです。このスコアはAlipayの利用状況が優良である場合に蓄積されていきます。そして、このスコアが高いユーザーは様々なサービスで有利な条件を享受できるようになるのです。そのため、消費活動、特に大きな金額の支払いにはAlipayを利用し、信用度を高め様々なメリットを享受しようと考える人もいるようです。

「芝麻信用」(ゴマ信用・セサミクレジット)が高くなるとこんなメリットが享受できる! 先行するアリババと、今後の追随に期待がかかるテンセント

もう少し具体的に「芝麻信用」(ゴマ信用・セサミクレジット)のサービスを見ていきましょう。

芝麻信用」(ゴマ信用・セサミクレジット)とはアリペイの子会社が運営する信用格付け機関です。企業と個人の信用情報に関わるデータを収集、整理、分析しており、この結果に基づき信用スコアを算出し取引リスクの可視化を行います。点数は350~950の範囲で示され、このスコアの算出には、信用履歴、行動の傾向、約束履行の能力、個人の特性、人間関係の5つの指標が存在しています。スコアは650もあればかなり良い数字と判断されます。

芝麻信用」(ゴマ信用・セサミクレジット)は、これまでの信用格付け機関と異なり、ネットでの様々なサービスでの取引状況と行動のデータに基づく信用度が算出されます。ECサイトでの購入履歴などのデータだけでなく、クレジットカードの支払状況、銀行口座間の送金や金融資産の運用経歴、水道光熱費の支払い状況、賃貸契約の状況、これまでの居住地やSNSでの人間関係といった様々な要素を用いていることが最大の特徴です。

このデータは多種多様なサービスの提供現場に利用されています。一例に、クレジットカード、消費者金融、融資、ホテル、賃貸契約、交通機関の予約や婚活、学生生活に関わる各種手続き、市役所のサービスなどが挙げられます。

スコアの高いユーザーは、銀行がキャッシュカードのオンライン発行サービスを受けられたり、旅行代金の後払いや、レンタカーや賃貸のデポジットの免除だったり、シンガポールのビザのオンライン発行といった利便性の高いサービスを受けることが可能になります。自身の信用度をセサミクレジットで証明できるため、これまでサービスの提供側がリスク回避のために備えていたいくつかの手続きを省略することができるのです。ただし、これらのサービスを受けるための自分の信用スコアの開示は、ユーザー本人の同意なしには行われません。

WeChatでも「テンセントクレジット」

実はこの信用格付け機関には、テンセント系列の「騰訊信用」という組織も存在します。テンセントの公式回答によれば、騰訊信用が提供する「テンセントクレジット」は、インターネット上の支払い履歴など3つの指標から信用スコアを算出します。信用スコアの高いユーザーは、セサミクレジット同様レンタルサービスを利用する際デポジットが免除となる等の利便性の高さが享受できます。このテンセントクレジットの運営元である騰訊信用はセサミクレジットを運営する企業と同じく2015年1月に国家機関から認証され、現在そのサービスの適用範囲を広げつつあることが報道されています。


 

▲テンセントクレジットのスコア
▲テンセントクレジットのスコア

まとめ ~信用スコアのインバウンド領域への応用で、中国人観光客の集客に一歩先の施策を~

現在これらの信用スコアを応用したインバウンド向けのサービスはほとんど見られません。ですが、インバウンドでも中国国内同様に、Wifiのレンタルや各種サービスデポジットを免除するといったワンランク上のサービス提供にこういった数字を役立てることも可能でしょう。

Alipayのユーザーは昨年6月の時点で8.7億とも言われ、WeChatのユーザーは約1年前から10億を超えています。こうした中国に普及しているプラットフォームを用いてインバウンド旅行客向けにサービスの差別化を図ることは、集客に有効な施策となるでしょう。

<参考>

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株式会社クロスシー編集部。中国語圏向けに日本情報の提供をするインターネットメディア運営・レップ事業を展開すると共に、訪日観光客向けのマーケティング・ソリューションを提供しています。日本の観光立国を実現すべく、メインターゲットとなる中華圏への観光情報、サービス、商品について、日中間の情報格差を埋め、観光客にとって最高の日本体験の提供を目指しています。

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