2019年1月22日から27日の6日間で、国際観光見本市(Feria Internacional de Turismo:通称FITUR)が、スペインのマドリードで開催されました。
この国際観光見本市は、観光に関するイベントとしては世界最大規模のものであり、毎年20万人以上が来場します。今年は世界165の国や地域から10,487の企業が参加し、886のブースが設置されました。もちろん、訪日インバウンド需要を取り込もうという日本のインバウンド関連企業・団体も数多く出展しています。
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国際観光見本市「FITUR」の舞台はマドリードのFERIA de MADRID
毎年FITURの舞台となるのは、フェリア・デ・マドリード(FERIA de MADRID)です。マドリード市内の中心部から地下鉄で約20分ほどのところにあり、マドリード空港からもタクシーで約15分というアクセスの良い総合展示場です。
見本市の会場内はスペイン国内・ヨーロッパ・南北アメリカ大陸・アフリカ・アジアと言った地域別の出展のほかに、FITURが定めたいくつかのテーマに関する企業も出展していました。
今年FITURで定められたテーマは以下の5つでした。
- テクノロジー発展と観光
- 保健・健康産業と観光
- フェスティバルと観光
- 映画産業と観光
- LGBTと観光
観光部門のテクノロジー企業の出展数183社は、ほとんどがスタートアップやベンチャー企業です。このような企業が開発している商品は多種多様で、ホテルやクルーズの予約システムをはじめ、ホテルの部屋のドアロックシステムなどを発表している企業もありました。
また、今年のFITURでは、LGBTと観光産業の関係についてもテーマとして取り上げられました。
スペインでは様々なホテルやディスコ、そして毎年開催されるような音楽イベントまでLGBTフレンドリーを謳っているものが少なくありません。
彼らあるいは彼女たちが、安心して旅行を楽しめる環境を整えることは、スペイン観光のイメージアップにつながります。また、LGBTの人々は比較的可処分所得が高いという理由もあり、多くの観光業関係者がこのマーケットに注目しているようでした。
FITURで見たスペイン国内の観光産業の変化
最近のスペイン国内の観光産業の流れとして、野外でスポーツやアクティビティを楽しむための観光が増えてきたことが上げられます。
伝統的なスペインの観光業界の主要商品は「太陽と海岸 (El sol y playa)」と表現され、海辺で太陽を浴びながらのんびりするバカンスが、観光客の需要だとスペイン観光産業は認識していたのです。
しかし、現在スペインを訪れる観光客の好みは多様化しています。そのためスペイン観光業界も、変化に対応し様々な商品を開発する必要に迫られているのです。新しい需要を受け、今までとは異なる観光商品を販売している企業も少なくありません。
たとえば出展企業の「Arrivo Cycling Holiday Experience」は、スペインのマヨルカ島でサイクリスト向けの様々な旅行パック商品を販売しています。目玉商品は、スペイン人の有名な元プロのサイクリストと一緒に走るサイクリングイベントです。イベント参加費はもちろん、宿泊するホテルなども加えたパック旅行を販売しています。
「Viaje Bici Maestrat」という旅行会社は、バレンシアの北にあるペニスコラという街が本拠地です。この企業の主要商品は、地元に密着した自転車ツアーです。海辺のリゾートホテルに滞在しながら、樹齢数百年のオリーブの木が生い茂る林や、春に開催される有名な火祭りなどを地元のガイドと共に自転車で回る、という商品を販売しています。
日本ではまだあまり知られてはいないこの地域ですが、美しい景色とおいしい食べ物に事欠くことはなく、また自転車のための優先道路も完備されている、自転車旅行には最適な場所なのです。ほかにも室内駐輪場や自転車のメカニックを備えたホテルを紹介する企業など、その商品は多種多様です。
スペインはスキー大国でもあります。地理的には南欧に分類されるスペインですが、山がちな国土であるため、意外にもスキー場が各地にあるのです。特にスペインで人気が高いのは、アラゴン地方やカタルーニャ地方をはじめとする、ピレネー山脈沿いの地域です。
スペインでは、スキーは雪遊びの延長上にあります。そのため各スキー場には、スキーのほかに犬ぞりやスノーシュー、クロスカントリースキーまで体験できる「雪遊びコーナー」が必ずあります。
FITUR でのアジア諸国・日本のライバルはインド?
今年のFITURで活発な活動を見せていたのが、インドからの出展者でした。インド政府の観光部門はもちろん、高級ホテルチェーンなども積極的なプロモーションを会場内で展開していました。
昨年からスペイン・インド間の直行便就航が開始されたため、スペイン人の旅行好きの人々の間で、インドへの関心が高まっているのです。ちなみに、マドリード、デリー間の直通フライトの所要時間は約14時間です。これはマドリードー成田間の直行便と同じくらいの飛行時間です。つまり、スペイン人にとっては、日本に旅行へ行く感覚で、インド旅行を考えられるようになりました。
オリエンタル諸国が身近になったことで、彼らの旅行先として、日本とインドどちらへ行こうか、と悩む人が今後増えるのかもしれません。
FITURに出展した日本企業は27団体:精力的な訪日インバウンド需要喚起
FITURに出展していた訪日インバウンド需要の喚起を狙う日本企業は、スペインに支店を置く旅行会社や、航空会社など27団体で、特大の暖簾が目を引く、大きなブースで出展していました。
FITURのような大きな国際観光見本市の場合、日本企業の出展ブースは、中国や韓国そしてベトナムなど、他のアジア諸国と隣り合わせの位置になることが多いようです。そのような場合、どこのアジア諸国もテーマカラーとして「赤」を多く使っていることに気が付きます。東アジア諸国の集まるブースは、赤の割合が非常に高かったです。
そのような赤色に染まるブースの中、茶色い特大の暖簾と、日本ブースのスタッフの方が着用していた青いお祭り法被は、非常に目を引きました。
多くのスペイン人にとって、日本は「一度は旅行したい、憧れの国」である一方、「日本での滞在費の高さ」が心配事として挙げられます。FITURの日本ブースには、一般的な日本の情報は一通りそろっている印象を受けました。しかし、日本に行きたいと考えるスペイン人のために、「お得に楽しめる日本旅行」の詳しい情報があれば、訪日インバウンド需要が促進され、スペイン人旅行者が増えるのではないでしょうか。
FITURでのスペインの小さな町や村のプロモーション
2月にはヨーロッパ各地でカーニバルが始まります。スペインも例外ではありません。スペイン中部のカスティーリャ・ラ・マンチャ地方にあるミゲルトゥラという村からは、カーニバル気分全開の出展者が会場に集合しました。
そして、観光と切っても切り離せないものの一つが、グルメです。FITURでは多くのブースで、シェフたちが伝統的な料理はもちろん、現在流行のフュージョン料理などを披露しました。
変化の真っただ中にいる、現在のスペイン観光業界ですが、昔の経験と新しいものをどう組み合わせていくかが、この国の課題なのかもしれません。
まとめ:スペインの観光産業の変化とインドのスペイン国内での台頭
「夏に太陽を浴びながら、海辺でのんびりするためのバケーションの地」から「1年を通じて、様々なアクティビティを体験することができる場所」へとイメージを変化させようとしています。観光業界に働く人々は、需要の変化を敏感に感じ、新しいスペイン観光の流れを作ろうとしている姿が印象的でした。1年を通じて、様々なアクティビティを体験することができる場所」へとイメージを変化させようとしています。観光業界に働く人々は、需要の変化を敏感に感じ、新しいスペイン観光の流れを作ろうとしている姿が印象的でした。
一方で視点を訪日インバウンドに移すと、スペイン人観光客にとっての魅力的な観光地として、最近はインドが注目を集め始めています。今後、スペイン人訪日観光客のインバウンド需要を増加させるためには、インドと日本を、いかに差別化するかを考えた戦略が必要になるのではないでしょうか。
イベント名 Feria Internacional de Turismo : FITUR
開催国・都市 スペイン・マドリード
開催日 2019年1月22日~27 日
会場 Feria de Madrid
対象 一般消費者、業界関係者
来場者数 20万人(2018年実績)
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