2020東京オリンピック選手村|建設場所・配慮すべき食と宗教・訓練施設・環境保護・過去の成功事例を紹介

海外からの観光客の誘致はじめ、様々な経済効果をもたらすとみられているオリンピック・パラリンピック大会ですが、その一つの要因となるのが「選手村」です。

2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催に際しては、東京都中央区晴海に整備に選手団が滞在する「選手村」と呼ばれる場所が確保されます。

実はこの東京の選手村は、大会終了後にはマンションとして販売、賃貸住宅として活用される予定で、販売される住居は4,000戸以上に上ります。今年の8月に販売が開始される予定で、ゴールデンウィークには1,000組もの見学者がモデルルームを訪れているそうです。

この記事では、選手村の予定地や選手村の内部に設置予定の施設、その跡地の活用プランについて紹介していきます。 


選手村とは?

選手村とは、オリンピック・パラリンピックの出場選手たちが大会期間中に宿泊する施設です。

通常のホテルではなく、一般客が宿泊しない施設が用意されます。こうすることで、選手たちにくつろげる空間を提供し、競技に向けて集中力を高めることができるようにという配慮です。 

東京オリンピック選手村はどこに作られる?

東京オリンピックでは、選手村は東京都中央区の晴海に整備される予定です。

宿泊棟については、東京都が進める市街地開発事業において民間事業者が整備する住宅棟を一時的に使用することとされています。 

2020選手村コンセプトは「もう一つのわが家」

すべての選手が安心して快適に楽しく生活できる、もう一つのわが家。」が2020大会の選手村のコンセプトとされています。

コンセプトに使われている「もう一つのわが家」という言葉からは、選手たちが異国の地にあっても、安心して穏やかな時を過ごせる空間を提供しようとする思いを感じ取ることができます。

東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の公式資料には、選手村のコンセプトと狙いについて以下のように表現されています。

選手村は、選手が競技に向けて集中力を高める場所であり、また、楽しむための場所でもある。そのため選手村は、利便性、安全性及び 快適性の面で高いサービス水準を満たす必要がある。東京オリンピック・パラリンピック競技大会の選手村は、選手第一主義の理念に基づき、これらの要求を最高水準で満たすものとする。

環境への配慮も

オリンピックにかかわる事業の一環として、選手村の設営や運営に際しては、選手たちへの配慮だけでなく環境への配慮必要という共通認識があります。

前節と同じく、公式資料には以下のようにまとめられています。

選手村は、2020年東京オリンピック・パラリンピック環境ガイドライン、建築物環境計画書制度、東京都の長期都市計画である「2020年の東京」に基づく包括的で検証可能な温室効果ガス削減計画に沿って開発されるため、温室効果ガスの排出は最小限に抑えられる。

仮設の施設建設にあたっては、大会後の移設やリサイクルによる再利用が計画されています。またエネルギーの供給においては、太陽光等の再生可能エネルギーの活用、海水ヒートポンプや、清掃工場の排熱利用、食品廃棄物を利用したバイオガス発電などの活用により、二酸化炭素を排出するエネルギーの利用を節約する方針です。

また選手村では、高効率で省エネルギーな設備や、情報通信技術を活用したエネルギーの管理システムを導入してエネルギー消費の管理や抑制をすすめていくそうです。 

選手村での生活、食とトレーニング、そして日常生活

続いては選手村の内部施設と、提供されるサービス、オリンピック後の施設の活用について紹介していきます。

特に、オリンピック・パラリンピック開催後の選手村の活用方法については、これまでに開催されたオリンピックでもその処理が適切でないと指摘されているケースもあります。2020年の東京オリンピックにおいても、どういった対策が準備されているのか、各業界の注目が集まっています。 

順に見ていきましょう。

選手のコンディションに欠かせない食事


選手村におけるサービスの中でも、最も重要視されているのが、選手たちに提供される食事です。

食事は、選手のコンディションを良くも悪くも大きく変える可能性を秘めています。衛生面、栄養面、アレルギー表示、文化・宗教的背景といったさまざまな観点から細心の注意が払われます。

組織委員会は、参加選手が良好なコンディションを維持でき、競技において自己ベストを発揮できる飲食提供を実現することを目標として挙げています。

同時に、食による「文化交流」も選手村の醍醐味の1つと認識されています。選手たちが食事をとるメインダイニングホールは、選手村の中央に設けられ、各国の選手がここで顔を合わせることとなります。メインダイニングホールは単なる食事の場としてだけでなく、選手が集い、コミュニケーションをとる交流の場としての役割も期待されています。選手専用のバスターミナルに隣接した位置でもあり利便性にも優れた設計です。メニューは、各国の名物料理や日本食を含んだものとなる予定です。 

食における多様性への配慮として、昨年2018年3月に組織委員会が公開した「東京2020大会飲食提供にかかわる基本戦略」において、海外からの取材陣を含め、選手村の食に関連して以下のように表明しています。

このため、菜食主義、宗教上の配慮(ハラールなど)といった飲食提供対象者の事情に対応できるよう、食品の取扱に最大限配慮し、これらの事情を有する飲食提供対象者に対して選択肢を確保する。また、選択肢が存在することを伝えるため、事前の情報提供に加え、表示、掲示物等を最大限活用し、適切な情報提供を行う。

どんな施設がある?

選手村の宿泊棟の近くには、居住者センター、カフェに加え、選手の交流の拠点となるレクリエーション施設やカジュアルダイニング、リラクゼーション施設が設置される予定です。

選手たちが競技の練習に取り組む練習会場は、選手村からアクセスの良い場所に位置するような全体設計となっていますが、居住ゾーンにもフィットネス・トレーニング施設や400mトラック、プール、テニスコート、ジョギングコースが用意されており、日常的なトレーニングは練習会場まで赴くことなく近場で行えるようになっています

選手村への滞在が、宗教的理由による日常的な行動の妨げとならないよう、居住ゾーンから遠くない位置に宗教センターも建設されます。こうした施設は、長期間日本に滞在する選手たちが、その信仰心に基づき本国にいる時とかわらぬ振る舞いをすることを可能にします。

また、こうした施設への移動には選手村の中を巡回するバスを利用できます。導入されるバスはバリアフリーで環境負荷の低いものが予定されています。 

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が終了した後の選手村はどうなる?

東京オリンピックに限らず、選手村の課題とされているのがオリンピック閉幕後の利用方法についてです。

これまでに開催されたオリンピックでの事例でいうと、実は選手村は、オリンピック・パラリンピック大会の閉幕後に収益化の図れるような使い道がなく、負のレガシー(遺産)となってしまっている地域も少なくありません。

こうした前例の失敗要因を研究し、東京都は2020年の東京オリンピック・パラリンピック閉幕後における選手村のて、住宅棟モデルプランを発表しています。 

開催後の活用方法

2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会の閉幕後には、今回準備された選手村を一般人の居住区域として活用されることが計画されています。

この地域は、以下のように3つのゾーンに区分けされることが構想されています。

  1. 住宅ゾーン:超高層タワーなどを含む宿泊棟の並びに、住宅ゾーンを形成します。
  2. 商業・にぎわいゾーン:近隣に住む人々のコミュニケーションの場を作るべく設けられる区域。ショッピングモールなどの導入を予定。住宅棟に隣接し、快適な暮らしをサポートする狙い。 
  3. 教育ゾーン:モデルプランでは、住宅棟に住む人々の子育て支援にも重点を置いている。現段階では学校の建設、地区内の児童たちのための教育施設を導入することを具体策として挙げている。
▲[選手村 大会終了後における住宅棟のモデルプラン]出典:東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会資料
▲[選手村 大会終了後における住宅棟のモデルプラン]出典:東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会資料

オリンピックレガシーとして何が残る?

オリンピック・パラリンピック大会の開催後も、大会のために準備されたインフラは「オリンピックレガシー」と呼ばれ、その永続的な活用が期待されます。

例えばオリンピック・パラリンピック大会の開催を機に見直された環境対策や防災対策、交通対策は、その後の都市形成にも役立てられていきます。

また、こうした「レガシー」は物だけににとどまりません。国際交流や新技術の活用も、そうしたレガシー、すなわち「社会的遺産」(ソーシャル・キャピタル)・文化的財・環境財の一つとして引き継がれていきます。

ユニバーサルデザインのまちづくりや水辺空間の活用は、オリンピック開催や選手村整備の副産物として社会を潤していくことが期待されています。

ハード面では、オリンピック開催にあたり整備されたジョギングルートや各会場などは、都心にありながら緑にあふれ開放的な空間として、「スポーツ都市」としての東京の発展を後押しするはずです。 

今までのオリンピックは?活用の成功事例を紹介

これまでのオリンピックでは負の遺産として、廃墟化してしまっている選手村もありますが、オリンピック・パラリンピック大会の閉幕後に、選手村として使われていた施設のその後の活用に成功している事例もあります。

例えば1992年に開催されたバルセロナオリンピックの選手村は、その後「5つ星ホテル」へと変化を遂げました。今現在もなお、観光客はじめ大勢の利用客にあふれています。リゾートの雰囲気にあふれたヨーロッパでも指折りの5つ星ホテルとして名高いこの施設は、かつて選手村として利用されていたとは思えないほどの素晴らしい空間となっています。 

また、2012年に開催されたロンドンオリンピックの選手村も、閉幕後の活用に成功した一例です。もともと選手村が築かれた土地は、ロンドン市内の最貧困地域でした。それがオリンピック・パラリンピック大会の開催を通じて、学校や医療機関が併設される人気住居エリアへと変化しました。この元選手村を含む近隣の一帯は現在、「クイーンエリザベス・オリンピックパーク」と呼ばれています。

開催中だけでなく、理想は開催後も様々な資産を還元できる選手村

選手村は、オリンピックレガシーとしてうまく活用して、住宅地や観光施設などの集客につなげている地域もあります。しかし、有効活用できず「負の遺産」となってしまった地域もあります。

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会では、閉幕後の選手村の活用について構想を掲げており、今後この計画に沿った進行がなされるかどうかが重要となってくるでしょう。当然ながら、開催後の経済効果がより高まるような取り組みが期待されています。開催地に住む我々は、観戦者、また国民として、オリンピックレガシーへの知識を深め、政府や組織委員会の取り組みを注視することが必要でしょう。


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客のインバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!