欧米豪を中心とした訪日外国人観光客が急増している熊野古道では、5月10日、中辺路を歩いていたオーストラリア人女性が滑落し亡くなるといった事故が発生しました。
世界遺産としての価値と歩行者の安全の両方をいかに守るかについて、改めて考えさせられる機会となっています。
今回は、熊野本宮観光協会のこれまでのインバウンド対策をふまえ、今後の課題と取り組みについて見ていきましょう。
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熊野本宮観光協会によるインバウンドの満足度向上に向けた取り組み
訪日外国人観光客の宿泊者が、2004年の世界遺産登録時から40倍にも増加している熊野地域では、特に欧米豪からのインバウンド客からの人気の高さが顕著です。スペインの「サンティアゴ・デ・コンポステーラの道」と熊野古道の共通巡礼手帳を作成することで、より熊野古道を身近に感じてもらうとともに、熊野の歴史や文化に触れられる機会をPRしています。
インバウンドの急増を受け、受け入れ態勢を強化している熊野本宮観光協会では、これまでさまざまな取り組みを実施しています。平成23年頃からは、必ず英語対応が可能なスタッフを窓口に配置し、お客様対応は年中無休で9時から17時まで行い、観光客のサポートに当たっているとのことです。
外国人スタッフによる外国人目線の意見も取り入れながら、地域の宿泊施設や店舗とコミュニケーションをとることで、以前はインバウンド客受け入れに消極的だった宿泊施設や店舗も今では歓迎するといったプラスの変化が現れています。
熊野古道の安全をどう守る?道幅の狭い箇所で発生した滑落し事故
今回のインバウンド客の滑落死事故は、熊野古道の中でも特に観光客に人気のルートである中辺路で発生しました。熊野古道の散策コースは整備がなされているものの、道幅は徐々に細くなり人1人がやっと通ることができるほどの箇所も少なくありません。事故現場の道幅も、約80センチと周辺に比べて狭くなっており、後ろを振り返った際に体のバランスを崩し滑落してしまったとのことです。熊野古道における滑落死事故は、少なくとも世界遺産登録後では初となりました。
これまでは史跡となっている熊野古道に柵などの設置をすることは難しく、安全への懸念はあった一方で、1人1人が注意する意識を持ち熊野古道を歩くといった状況でした。世界遺産を構成する史跡等の面積は約200ヘクタール、熊野古道の総延長は約200キロにも及ぶ広大なエリアにおいて、史跡や自然の保護と同時に安全への対策も急務となっています。
熊野古道の安全確保に向け、2段階の注意喚起を
今回の滑落死事故を受け、田辺市では5月17〜29日にかけて、熊野古道の危険箇所を改めて調査しました。那智勝浦町においても、6月中旬より、確認が不十分な箇所の点検を始めています。
新宮市では普段からパトロールを委託するといった対策を講じ、危険箇所の確認は行なっているとのことでした。遍路文化が根付き世界的にも注目を集めている四国八十八箇所霊場巡拝のコースでは、遍路道の修繕といった安全対策が行われています。
田辺市観光振興課は、熊野古道のエリアが広範囲に渡るため、今後は複数の自治体が連携して安全対策を講じていくことの重要性を訴えました。危険箇所の情報や共通認識は、今回の調査で共有できたとし、今後は、歩く前の事前啓発と現場での注意喚起の2段階で、安全を守っていきたいとのことです。
看板の設置も検討しており、インバウンド向けにも注意喚起ができる多言語案内の整備が期待されます。
まとめ:自治体間の連携でインバウンド客の安全確保と史跡保護へ
熊野古道での事故を受け、史跡保護とともに安全対策を講じることの重要性を改めて認識し、熊野古道の安全対策への取り組みが検討されました。
今後も東京オリンピック・パラリンピックや大阪万博などをきっかけに、熊野古道でもさらなるインバウンド誘客が見込まれます。多言語対応といった受け入れ態勢整備に加え、安全対策にも尽力することで、より強固なインバウンドの受け入れ態勢の構築が期待できるでしょう。
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<参照>
・msn:世界遺産、景観も安全も 熊野古道で滑落死 旅行客増で対策急務
・JNTO:多くの外国人を集める熊野本宮観光協会の取り組みと課題
・国土交通省:お遍路の癒しや四国の文化を受け継ぐ「史国」伝統継承プロジェクト
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