エコツーリズムとは?地方創生と環境保全を両立・事例と海外の傾向

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エコツーリズムとは、従来の消費を楽しむスタイルの旅行ではなく、環境保全を意識した移動や滞在、観光を意味します。

近年、産業の持続可能性への関心の高まりから、エコツーリズムは話題です。日本観光振興協会日本旅行業協会JATA)、日本政府観光局JNTO)が企画する「第5回ジャパン・ツーリズム・アワード」でも、こうした観点から社会性の高い取り組みの評価された組織がノミネート、表彰されています。

インバウンド市場が拡大する現代の日本においても観光事業は経済の根幹を担う重要な要素の1つで、エコツーリズムは押さえておくべき基本概念と言えるでしょう。

この記事では、エコツーリズムの概要、歴史や関連法、インバウンドとの関連性について解説します。 

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エコツーリズムとは

エコツーリズムとは自然環境、文化、歴史等を観光の対象としながら、同時に環境の保全性と持続可能性を考慮するツーリズム(観光)のことです。

エコツーリズムの拡大によって環境保護や地域振興への意識を向上させる効果が期待されています。

以下では、エコツーリズムの概要や歴史、関連法について解説します。 

エコツーリズムの定義:地域固有の魅力を観光客に伝えることこそが、保全への道

2003年、環境大臣のもとに催された「エコツーリズム推進法」において「自然環境や歴史文化を対象とし、それらを体験し、学ぶとともに、対象となる地域の自然環境や歴史文化の保全に責任を持つ観光のありかた」とエコツーリズムの概念定義がなされました。

上記の定義からは、エコツーリズム観光によって自然環境や歴史文化の尊さに対する理解を促進しつつ、将来的な保全を目指していくためのものであることがわかります。 

エコツーリズムの歴史

エコツーリズムは当初途上国における経済振興の手段として環境資源や歴史文化を主とした観光が促進されたもので、日本においては1991年の「沖縄におけるエコツーリズム等の観光利用推進方策検討調査」実施が、エコツーリズムが注目を集めた要因となりました。

その後は2000年頃にかけて民間推進団体の設立などを背景にエコツーリズムの普及を目指す動きが加速し、2003年の「エコツーリズム推進会議」へ繋がりました。

また、政府は2007年に「エコツーリズム推進法」によって自然環境の保全、観光振興、地域振興、環境教育の4つの観点に重点を置いたエコツーリズム推進についての枠組みを定めました。 

エコツーリズム推進法

2007年に議員立法により成立し2008年4月より施行された「エコツーリズム推進法」ではエコツーリズムを推進するための総合的な枠組みを定めました。

同法は自然環境の保全、観光振興、地域振興、環境教育に重点を置き、地域ごとに創意工夫を凝らしたエコツーリズムを目指すもので、施行以降は全国各地で地場の環境資源や魅力を活かしたエコツーリズムに対する意識が向上しました。 

日本のエコツーリズム事例:埼玉県飯能市

近年、エコツーリズムの機運はますます高まっています。全国各地でさまざまなエコツーリズムの推進が行われていますが、埼玉県飯能市では特に精力的にエコツーリズムの推進活動に取り組んでいます。 

以下では、飯能市におけるエコツーリズムへの取り組みについて解説します。 

【埼玉・飯能】山奥なのに外国人で盛況、なぜ?環境保全と観光客満足度が両立する観光の「エコツーリズム」インバウンド誘客への応用例3選を紹介

インバウンドの地方誘客促進が叫ばれる中、エコツーリズムを活用し地域活性化を目指す動きが活発化しています。エコツーリズムとは、自然環境、そして文化・歴史等を観光の対象としながら、環境の保全性と持続可能性を考慮する観光のことです。エコツーリズムを主軸においた観光業を展開している一つが埼玉県飯能市です。飯能市を訪れる観光客のリピーター率は50%を超え、インバウンド誘客にも効果を発揮しているといいます。今回は、エコツーリズムを取り入れインバウンド客の誘致ならびに地域活性化を目指す、埼玉県飯能市・京...

埼玉県飯能市での森林文化都市宣言

埼玉県南西部に位置する飯能市は豊かな自然環境に囲まれた街で、市域の約7割以上を森林が占めています

同市では、豊かな自然を守るために森林文化都市宣言を発表しており「全ての地域と人の参加」をコンセプトに、環境保全を市民全体の目標としています。

この保全運動を先頭に立って指揮する存在こそ、エコツーリズム推進法に基づき設けられた「飯能市エコツーリズム推進協議会」で同団体は地域住民や事業者、NPO法人などの架け橋的存在となり、それぞれに対して実現可能な役割分担をしています。

協議会ではエコツーリズムを適切に推進するための枠組みとして「飯能市エコツーリズム推進全体構想」を設けており、エコツーリズムを通した観光振興や地域振興を目指す、と同時に観光客に美しい自然環境の提供を可能にし、地域住民の環境保全に対する意識の向上を図っています。 

飯能市エコツーリズム推進全体構想

「飯能市エコツーリズム推進全体構想」は同市が持つ固有の自然環境を活用することによって、多くの観光客に心の豊かさや感動を与えるとともに、観光振興による地域の活性化を目指すことを目的として打ち出されたものです。

具体的には、ニッコウムササビやホンドカヤネズミ、オオタカなどの動物や、子の権現の二本スギ、滝の入タブの木などの植物に代表される植物、天覧入りの谷津をはじめとするそれらの生息地、そして伝統文化や伝統産業を保全しつつ、同時に観光資源として活用する取り組みを進めています。

多くの観光客が飯能市でのエコツアーを楽しんでいると言います。少なくない観光客が、飯能市が主催するエコツアーを通して環境保全や保護に対する意識を改め、エコツーリストとしての自覚を抱くようになるそうです。 

身近な自然や文化を活用

飯能市では市民全員で創り上げるエコツーリズムを目標としており、専門的な知識を持つ人々だけでなく誰もがガイドとなれるエコツーリズムを提唱しています。

そのため、飯能市で行われているエコツアープログラムは地域住民が自ら企画、実施しており、観光客との交流や身近な自然に改めて触れることで住民の地域に対する親しみを高めることにもつながっています

また、飯能市ではエコツーリズムをさらに推進していくための取り組みにも力を入れており、地域住民を対象とした「エコツーリズムオープンカレッジ」を実施しています。

同プログラムはエコツーリズムについての基礎知識や地元の自然や歴史文化、ガイドとして必要なスキルを学べる場で、市内からもエコツーリズムに対する意識向上を目指しています。 

エコツーリズムとインバウンド

エコツーリズムは観光資源の活用につながるため、インバウンドにおいても集客効果を見込めるとして注目されています。

以下では、エコツーリズムインバウンドの関連性について解説します。 

持続可能な観光

エコツーリズムによって得られるのは持続可能な観光です。

商業施設の新設や都市開発によって観光を推進することもできますが、それらが持つ集客力や魅力は永久的なものではなく、開発にともなって失った自然を取り戻すには金銭的、時間的に膨大なコストを必要とします。

一方エコツーリズムでは自然環境を保護し、観光資源とすることによって観光推進を図ります。

地域経済の発展や観光振興によって地域が潤い、利益の一部が次なる環境保全や継続的な保全活動に流れることが理想です。これにより、持続可能な循環型ツーリズムが完成します。 

オーストラリア人はエコツーリズムが好き

自然豊かな国として知られるオーストラリアではエコツーリズムの考え方が広く認知されており、オーストラリアにおいて実施したアンケート調査では半数以上が自らをエコツーリストであると回答しています。

一方現在の日本では、エコツアー経験率やエコツアーへの参加意欲を問うアンケートにおいてエコツーリストの割合は10%程という結果が出ています。

こうしたエコツーリズムに対する世界的な意識は今後ますます高まっていくと考えられます。日本のインバウンド産業の成長にはエコツーリズムに対する理解の浸透は欠かせないでしょう。 

宿泊施設の空きが減少

エコツーリズムを主眼においた観光では、半日から1日を要するプログラムが多く、観光客の宿泊促進に繋がります。つまり、観光資源を保全することによる観光振興だけでなく、地場の宿泊施設の利用者数が増えることによる地域振興も期待できるでしょう。

また、四季によって異なる魅力を呈する自然が対象となるエコツアーでは、季節に応じてプログラムの内容や解説素材が異なるため、同じ場所でもプログラムや内容を変えられます。そのため、1度プログラムを体験した人々の中からリピーターを獲得できる可能性も高く、季節による観光客数の変動を軽減することもできます。 

エコツーリズムは地方創生と環境保全を実現

エコツーリズムは地方創生と環境保護を両立できる考え方であるとして注目を集めています。

地球温暖化や海面上昇など、さまざまな環境問題が叫ばれている今、自然の美しさや尊さを理解できる観光プログラムに対する需要は高いと言えるでしょう。

また、人工的な開発によらない観光資源の活用方法を広めることは、観光業界にとっても収益性の高さをもたらしてくれるかもしれません。 

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インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。

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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」

2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。

「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。

初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。

参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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