中国の人口は2019年現在で約13.9億人、そのうちインターネット利用人口は約8.3億人とどちらも世界一の人数を誇っています。これだけの人数が消費者となりうる中国では、実店舗もEC(電子商取引)も盛んに取引が行われていますが、そこに参入した海外企業が必ず成功しているかというと、実はそうでもありません。
中国展開の難しさについては多く話題にされていますが、スーパー銭湯の「極楽湯」は、そんな中でも中国で堅実な業績を収めています。
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極楽湯の中国展開は上海から
株式会社極楽湯ホールディングスは、1980年創業、1996年よりスーパー銭湯「極楽湯」を日本全国に展開している銭湯業界の日本最大手です。
2013年に上海にて海外店舗1号店を出店したことをきっかけに、中国において直営4店、フランチャイズ4店を展開しています。
中国では、極楽湯は日本の温泉文化を現地に持ち込んだ先駆者として存在感を強めています。
中国展開を始めた2013年には上海に2店舗、武漢に1店舗の合計3店舗を出店しました。2019年現在では上海、武漢、青島などの各都市で、直営とフランチャイズでそれぞれ4店舗の合計8店舗を展開しています。年内には更に上海や蘇州などで6店舗を新設し、合計14店舗にまで増やす計画だと言います。
成功の秘訣は中国人の習慣&心理の理解
極楽湯の入館料は日本では大人700円程ですが、中国では大人138元(約2,200円)と3倍以上の価格に設定されています。この価格では客足に影響が出るのではないかと心配になりますが、上海にの直営店2店舗では春節(旧正月)前後などの繁忙期には各店に1日4,000人以上が訪れ、待ち時間は3時間にも及びます。客層としては20〜30代の女性客が最も多いそうです。
上海の極楽湯は床面積が1万平方メートル程度と、日本の店舗の約6倍もの大規模な施設となっています。
その中には温泉だけではなくネイルサロンや麻雀室、子供用の遊び場など様々な付随施設が準備されています。エンターテインメントとしては他にも化粧品、小物、浴衣やアニメ関連商品の販売も行っており、多角的に日本文化を楽しめる工夫が凝らされていると言えるでしょう。
その結果、入館者の平均滞在時間は5時間となっており、日本のスーパー銭湯と比較しても遜色ありません。
中国の一般家庭には浴槽が設置されていないため、中国人は湯船に入って入浴を楽しむ習慣を持っていません。極楽湯はそんな中国人に日本式の衛生管理を受け入れてもらうことにも成功し、更にエンターテインメント要素と日本の雰囲気を館内に上手く配合したことで中国人の心を掴んでいます。
上海に続け!ターゲットは武漢
極楽湯は上海での店舗展開に成功した後、2番目の都市として湖北省の武漢を選びました。2016年11月には「極楽湯金銀潭温泉館」を開業し、若者や家族連れを中心に右肩上がりの人気を博しています。
2018年4月には、収益の安定化を目指して館内に宿泊施設を開業させました。今後も日本文化を体験できる総合エンターテインメント施設としての性格を強めていくことになりそうです。

工業都市・武漢の特徴
湖北省の首都である武漢は、人口1,089万人の大都市です。中国国内都市別GDPランキングでも2018年には全国第9位になるほどの経済力を持ちつつも、海外企業はその他の大都市と比べるとさほど進出していないため、限られたパイを取り合う必要にも迫られないという長所が存在します。
主要産業は工業で、中国国内企業の他には主にフランス、ベルギー、アメリカ、ドイツなどの企業が進出しています。
開店してみて分かったターゲット層
武漢にて店舗を開く前には、極楽湯はターゲットとして隣接している水族館を訪れた子連れ家族や、付近にある展示会場で開かれるイベントの参加者などを想定していました。
ところがいざ開業してみると純粋に日本文化に興味があり日本を体験したいという層の来店が多く、また仕事で武漢を訪れる層にもよく利用されることが分かりました。年齢層としては当初想定していた家族連れだけではなく、意外にも多くの若年層が見受けられました。
中国人のニーズに応えつつ、日本を演出するさじ加減が大切
2019年1月には上海、武漢に続く3番目の直営店進出先に長春を選びました。景気が冷え込んでいると言われることも多い中国東北地方で、極楽湯が今後どのような経営戦略を立てるのかが注目されます。
日本人は侘び寂びの文化を大切にしており、内装も簡素かつ単純なものを好む傾向にありますが、中国人は派手なものを好む傾向にあります。せっかく日本文化を忠実に再現しようと「侘び寂び」の概念で店舗を作ると、中国人から「もっと派手で豪華にした方が良い」という意見が出ることも多々あります。
しかし、中国人の感覚で派手に店舗を作ってしまうと「なんちゃって日本文化」となってしまい、日本の雰囲気を求めてくる客層にがっかりされてしまいます。しかし一方で、日本の設計やサービスを再現しても、現地在住者にとって本当に居心地の良い空間にはなりません。日本の雰囲気を上手く保ちつつ、中国人にも受け入れられる環境を設計するバランス感覚が必要だと言えるでしょう。
<参照>
東洋経済:https://toyokeizai.net/articles/-/291678
日刊ゲンダイ:https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/255874
日刊ゲンダイ:https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/255952
搜狐:https://www.sohu.com/a/293163523_206729
JETRO:https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2018/2fbfd155cd86128b.html
極楽湯(中国):http://www.gokurakuyu.cn/
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インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
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【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
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