2016年、安倍首相を議長とする「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」は「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定しました。
この記事では、日本が「観光立国」となるために、このビジョンで打ち出した改革と観光目標の解説や、目標に対する2018年までの実績比較を行います。また、2019年に政府が推進するインバウンドへの取組も紹介します。
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「観光立国」への政府の取り組み/大枠をおさらい
日本が「観光立国」を目指す政府としての取組は、小泉政権が打ち出した「骨太の方針」から始まりました。2002年に小泉内閣は、「骨太の方針」の一環として、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」を策定しました。この基本方針で政府は「内外の人々にとって魅力ある日本を構築し、観光産業を活性化する」と定めており、主に国土交通省に対して、様々なグローバル観光戦略を実行するように指示を出しました。
この指示を受けて、国土交通省は国土交通大臣を実施本部長とした「ビジットジャパンキャンペーン」を立ち上げ、各省庁を巻き込みながら、訪日観光客の増加を目指した様々な取組を開始しました。
ビジット・ジャパン・キャンペーンとは
ビジット・ジャパン・キャンペーンは、2003年に始まった訪日外国人観光客の誘致を目的としたプロモーション事業です。これにより、訪日外国人観光客数や消費額は年々増加し、2019年には訪日外国人観光客数は3,188万人、消費額は4.8兆円とそれぞれ過去最高を記録しました。今回は、ビジット・ジャパン・キャンペーンの内容、これまでの成果、今後の方針、事例について解説します。インバウンド対策にお困りですか?「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談...
「明日の日本を支える観光ビジョン」とは?
2016年3月、安倍首相を議長とする「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」は、今後のインバウンド政策の指針となる「明日の日本を支える観光ビジョン」を決定しました。
このビジョンでは、大きく以下2点が決定されました。
- 「観光先進国」へ向けた「3つの視点」とそれに基づく改革
- 2020年・2030年までの観光目標(訪日外国人数・訪日外国人消費額など)
関連記事「明日の日本を支える観光ビジョン」政府や観光庁の取り組みの構造
「明日の日本を支える観光ビジョン」の3つの視点とは?
「明日の日本を支える観光ビジョン」で発表された「3つの視点」を一つひとつ解説します。
1. 観光資源の魅力を極め、地方創生の礎に
この視点では、地方が持つ観光資源の魅力を引き出し、外国人を含めた観光客への活用を促すべく以下取組が定められました。
- 赤坂や京都の迎賓館などの、伝統や歴史のある日本の公的施設を外国人を含む方々に一般開放すること
- 今まで保護を優先してきた文化財に対し、観光拠点とするために集中的に整備支援を行う。また、多言語での解説を促進し、文化理解ができる場として活用すること
- 日本にある国立公園を、体験・活用ができる「ナショナルパーク」とすべく改善を行うこと
- 原則的に全都道府県・全国の半数の市区町村で「景観計画」を作り、無電柱化などを行うことで魅力ある景観へと改善・保護していくこと
2. 観光産業を革新し、国際競争力を高め、我が国の基幹産業に
この視点では、観光産業を活性化させるための戦略的な制度づくりや市場開拓が定められました。
- 古くからある観光制度の規制緩和や抜本的な改革を行い、観光経営人材の育成や、民泊制度の整備を含めた宿泊施設の不足打開に取り組むこと
- 富裕層をターゲットとしたプロモーションや、MICE誘致、ビザの戦略的緩和などにより新しい市場を開拓すること
- 疲弊した温泉街や地方都市の活性化を目指すべく、観光地再生・活性化ファンドなどを通して継続的に投資し、DMOを全国に100形成すること
DMO インバウンド用語集
インバウンド用語 DMO とは について解説します
3. すべての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境に
この視点では、快適に訪日観光客が旅行するために、以下取組が打ち出されました。
- 顔認証システムなどを用いた入国審査や、通信環境のキャッシュレス決済の整備などのソフトインフラを改善すること
- 「ジャパンレールパス」を訪日後も購入可能とし、LCCやクルーズ船などの就航を通じ、日本全国へつながる交通網の利便性を向上させること
- 年次有給休暇取得率70%へ向上させ、休暇取得の分散化による観光需要の平準化を図ること
「観光ビジョン」2020年・2030年の目標値と2018年の数値を比較
インバウンド促進による国内需要喚起が、政府が目標とする「GDP600兆円に向けた成長エンジン」となると期待される中、「明日の日本を支える観光ビジョン」では、2020年、2030年の観光目標が決定されました。この観光目標を、2018年までの実績比較とともに解説します。
訪日外国人旅行者数
訪日外国人旅行者数は、2020年に4,000万人、2030年に6,000万人が目標です。2011年以降、訪日外国人客数は右肩あたりに伸びており、2018年の訪日外国人客数の実績は3,119万1,856人までに達しました。2020年には東京オリンピックがあることを考えると、2020年目標の4,000万人は達成可能と予想されます。
訪日外国人旅行消費額
訪日外国人旅行消費額の目標額は、2020年が8兆円、2030年が15兆円です。2018年実績は4兆5,189億円で、訪日外国人客数の増加に比べて消費額が伸び悩んでいます。訪日外国人の一人あたりの消費額は現在15万円ほどですが、2020年にインバウンド消費を8兆円にするためには、一人あたり20万円ほど消費してもらう必要があります。
地方部での宿泊者数
地方での宿泊者数の目標は、2020年に7,000万人泊、2030年には1億3,000万人泊です。「地方部」とは、東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫以外の地域を指します。2018年の実績は3,636万人泊で、2020年にはこれを約2倍にしないと目標に届きません。2016年から2017年への伸び率は18.7%(+513万人泊)、2017年から2018年の伸び率は11.3%(370万人泊)ですので、この2年間の伸び率実績だけをみると、2020年に7,000万人泊達成は難しいかもしれません。
リピーター数
外国人リピーター数は、2020年に2,400万人、2030年に3,600万人が目標です。2018年の実績は1,937万人でした。近年、訪日回数二回目以上のリピーターの割合は6割前後で推移しており、2016年は1,426万人、2017年は1,761万人でした。今後もこのペースで増加が続けば、2020年の2,400万人は達成できる見込みです。
観光庁:6月14日に「観光ビジョン実現プログラム2019」を策定
2019年6月、観光目標の達成に向けた有識者との「観光戦略実行推進会議」にて、「観光ビジョン実現プログラム2019」が決定されました。今後1年間を目途とした政府の取組計画である、この「観光ビジョン実現プログラム2019」の4つの柱をひとつずつ解説します。
外国人が真の意味で楽しめる仕様に変えるための環境整備
多言語対応や、Wifiなどの通信環境の高速化を促進し、MaaS(鉄道・バスなどの多様な団体による交通機関を一括で管理/予約/決済を行うシステム)や、観光地までの交通機関の拡充を図り、外国人観光客にとっての利便性を向上させます。また、宿泊施設の不足を解消すべく、旅館・ホテルでの外国人人材の活用や、一人当たりの生産性向上をははかるシステム構築を行います。併せて、2018年9月に策定された「非常時の外国人旅行者の安全・安心確保のための緊急対策」の実行により、日本で安心して観光を楽しめる環境を整えます。
地域の新しい観光コンテンツの開発
地域が持つ、観光資源を生かし、観光コンテンツとして活用すべく、日本文化に関する展示の拡充を図ります。また、見るだけでなく体験型観光コンテンツを開発すべく、農業体験の機会提供、「農泊」ができる民宿・古民家を整備、国立公園自然体験コンテンツの拡充や、城泊・寺泊、グランピング等の規制緩和を図ります。既存のスノーリゾートや旅館を再生・活性化すべく多言語対応、設備更新への金融支援等も行います。
日本政府観光局と地域(自治体・観光地域づくり法人※)の適切な役割分担と連携強化
上記2つの柱を実行するため、各自治体・観光地域づくり法人(DMO)の適切な役割分担を実施します。日本政府観光局は、日本各地の魅力を海外へ発信する体制を強化すると同時に、日本各地へ提供するデジタルマーケティング強化も行います。東アジアへのキャンペーン拡充や、中東・中南米といった新しい市場に対しても誘客アプローチにも取り組みます。
出入国の円滑化等
顔認証システムの導入により、空港手続きの円滑化を図ると同時に、ビザの戦略的緩和や、空港の発着回数増、海外からの地方空港への直行便の就航などを通じ、来日しやすい体制を整備します。
2020年の目標達成できるかに注目される
2016年に策定された「明日の日本を支える観光ビジョン」について、その観光目標や達成に向けた日本の取組について紹介しました。今後日本が「観光立国」として更なる発展を遂げる布石として、その2020年の目標を達成できるか否かが、注目されています。
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