日本でも人気なゆるキャラは、海外でも多く取り上げられ人気を博しています。
ゆるキャラによるインバウンド向けPRの代表例にくまモンがあります。くまモンは、熊本県庁が2010年から展開しているPRマスコットキャラクターで、2011年のゆるキャラグランプリの王者となっています。
くまモンはその表情や可愛さから多くの人を魅了しさまざまなところで商品化され、外国人にとっても人気を博しています。
日本のアニメやキャラクターのファンが多い中国でも、当然注目を集めており、ECサイトのタオバオでも様々な商品が販売されています。
同時に、中国市場では避けることのできない「偽物」問題にも対峙せざるを得ません。
この記事では、中国でくまモンが人気になった理由や、新たな問題について解説していきます。
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くまモンのパクリ疑惑?「好運熊」
中国ではドラえもんといった人気キャラクターを、許可を得ずに商品化するいわゆる「パクリ商品」が多く作られ、販売されています。
こうしたキャラクターには商標登録されているにもかかわらず、そのデザインに酷似した商品を販売するケースも少なくありません。販売元は盗作を認めないことが多く、裁判に発展することもあります。
ここではくまモンの盗作疑惑について詳しく解説していきたいと思います。
中国のテレビ局による盗作疑惑
中国安徽省テレビ局の番組にくまモンに酷似した「好運熊」(ラッキークマ)と呼ばれるキャラクターが登場しました。
この「好運熊」は視聴者に電子マネーをプレゼントしたり商品を紹介する番組に出演しています。このキャラクターはくまモンと違って毛並みの色が茶色になっていましたが、姿形はそっくりです。
しかしくまモンと比べてみてもところどころに違和感を感じさせます。このキャラクターは盗作疑惑として大きな話題になりました。
熊本地震の直後、中国国民からも大批判
2016年に起こった熊本地震は、中国でも広く伝えられ、また人気キャラクターゆかりの地とあって大きな衝撃をもって受け止められていました。
熊本の被災直後にこの「好運熊」が登場したことも手伝ってか、多くの中国人がこのやり口を批判しています。特に、「好運」は「幸運」を意味し、明らかに幸運でない熊本とリンクする存在でありながらそのような名前を付けることにも非難が殺到したと言います。
この「パクリ疑惑」には「恥ずかしくないのか」、「盗作じゃないか」といった書き込みも多くあったそうです。
熊本県は「熊本熊」公式認定を機に商標登録、悪用を防ぐ
中国ではくまモンに似たキャラクターを「酷MA萌」として商標登録をし、悪用していたケースも存在しました。こうした盗作への対抗策として、県は「熊本熊」の改名を機に中国で商標を申請し、幅広く商標を押さえて盗作が出回ることがないように体制を構築しています。
くまモン以外にもこれまで「クレヨンしんちゃん(蝋筆小新)」、「ウルトラマン(奥特曼)」、「無印良品(無印良品、MUJI)」が中国企業によって商標登録されてしまうケースがありました。
くまモンが中国で人気の理由は?
日本のお土産屋では、ゆるキャラに関連したお土産が多く見られます。海外でも同様に、くまモンがデザインされた商品が展開されています。
まずはなぜくまモンが中国で人気となっているのかについて整理します。
特別なイメージに紐づけられていない
中国のマスコットと言えば、今から11年前北京オリンピックのフーワーがあります。パンダや聖火といった、中国やオリンピックと関連した題材をモチーフにした5つのキャラクターは、おおむね好評を博していたものの、オリンピックというイメージが強くその後広まることはありませんでした。
くまモンの場合は、「くま」という名前以外に、特に何かを強く主張するモチーフが存在しません。様々な場面でも利用できるという印象を与えているようです。
デザインがシンプル→グッズを作りやすい
また、くまモンのデザインはいたってシンプルなものなのでグッズを作りやすいという点でも人気の理由の一つです。
他のマスコットを見てみても多くの色が使われていたり、形が複雑なものもあります。それと比べるとくまモンは使用する色も少なく、形も圧倒的にシンプルだといえるでしょう。
こうした特徴は商品の生産にかかわるコストをおさえることにつながり、結果としてくまモン関連の商品の生産が増えるということにもつながっているようです。
「酷MA萌」浸透せず…「熊本熊」を公式認定
くまモンが最初に中国名として名付けられたのは「酷MA萌」でした。しかしこの名前は中国国民には浸透せず、その後新しく「熊本熊」という名前が付けられ統一されました。そして改名に合わせて今まで男の子として扱われていたくまモンでしたが、クマであること全面的に出てしまいました。
ここでは中国名が変更された経緯を詳しく紹介していきます。
中国名、初めは「酷MA萌」(クーマーモン)
日本でくまモンが誕生してから中国でも人気が出始めたころ、最初の表記はローマ字で「KUMAMON」となっていました。
そこで、より多くの人に親しんでもらえるように当て字で「酷MA萌」(クーマーモン)という名前が付けられました。この「酷」も「萌」もネットなどで出現する新語によく使われる文字で、「酷」は英語の「cool」(かっこいい)、「萌」は日本で用いられるような「萌え」を取り入れた表現となっています。
この名前は2013年に熊本県と上海事務所のスタッフが相談した上で名付けています。
中国大陸、台湾、香港、シンガポールで商品登録されましたが、国民にはあまり浸透しませんでした。
「熊本熊(ションベンション)」に改名
こうした事態を受け、2019年3月にくまモンは中国で「熊本熊」(ションベンション)という名前に改名することになりました。
この改名により、中国や台湾では熊本熊の名で統一されることになりました。改名に合わせて東京のアンテナショップなど各地で、掲出している中国名の表記を急きょ書き換えたと言います。
熊本熊の名前は中国人にとって分かりやすい名前のようで、「‟熊本熊”の方が覚えやすいし、中国らしい感じがします」と答える中国人観光もいるそうです。
人として扱う設定のはずが、熊であることを強調?
実はくまモンは‟クマのオス”ではなく‟男の子”という設定になっています。オフィシャルサイトのプロフィールで性別について「オスじゃなくて男の子!」と記載し、「知事から熊本県の営業部長兼しあわせ部長に抜てき」といった「人扱い」をされてきました。
中国における改名を通じ、クマであることを強調するような名前になってしまいましたが、県サイドでも愛着を優先する方針を示すなど、中国展開への積極的な姿勢を示しました。
キャラクターを活用したPRは効果的、盗作には要注意
ドラえもんやアンパンマンなど、中国では日本のキャラクターの盗作疑惑が絶えず見られ、枚挙にいとまがありません。例えば、中国でドラえもんに酷似したキャラクターを商標登録し、それを受け「著作権侵害」として訴えましたが「商標はドラえもんではない」と主張されることもあったそうです。
商標登録をすることにより使用料などが適切に確保できるようになるはずですが、中国の企業側が盗作ではないと主張すると難航することも珍しくありません。
インバウンド向けにたくさんの日本のキャラクターの盛り上がりを見せています。すでに認知が拡大しているものであれば、これを活用しない手はありません。
キャラクターに対するファンの忠誠心は、往々にして非常に強いという特徴があります。中国に向けた展開ではどのようにキャラクターの使用料を徴収していくのかを考えることも大切ですが、くまモンの例のように、忠誠度の高いファンによって国内での自浄作用が期待できる場合もあるでしょう。
強硬な手段だけでは問題の解決が難しい場合でも、発想を転換することでパクリに対する有効な対策が生まれるかもしれません。
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