中国ECアプリが「ユーザーのスクショ」を見逃さないワケ

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ショッピングや動画視聴、SNSのチェックなど、スマートフォンを一日になんどもチェックする人も多いのではないでしょうか。気になる情報をみつけて、画面をスクリーンショットに収めることもあるでしょう。

筆者の場合は後で読み返したい記事、参考にしたいインテリアのイメージ、それを友達に共有したい時などにスクリーンショット機能を活用しています。

中国のECアプリでは利用者の間で生まれるスクリーンショットを通した口コミや情報のシェアが売上に繋がることを見越して、”スクリーンショット” をより活用するための機能が用意されています。

今回はそのようなユーザーの行動を見逃さない中国ECアプリの事例と、そこから生まれる口コミ・情報シェアの文化をご紹介します。


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スクリーンショットはこのように活用される

はじめに、人がスクリーンショットを撮る理由・状況について整理をしたいと思います。

様々な状況が考えられますが、以下に分類されるケースがほとんどです。

  • あとで見返したい、利用したい(自分軸)
  • 誰かにシェアしたい、報告したい(他人軸)

筆者もよくスクリーンショットを撮りますが、自分で見返したい場合と、誰かに見せたい場合がほとんどです。

しかし、日常を過ごす中でスクリーンショットを撮ったこと自体を忘れ、結局何も活用されないこともあります。

中国ECアプリでは、この「活用忘れ」を防ぐためにその場でスクリーンショットを活用するための工夫が施されています。

それでは早速、中国アプリの実例を紹介いたします。

タオバオ(淘宝網)の場合

中国最大のCtoC型ECである「タオバオ(淘宝網)」ではユーザーのスクリーンショットを検知すると、2つのメニューが出現します。

  • 友達にシェアする
  • 問題を報告する

友達にシェアをする場合はWeChat」、「ショートメッセージ」へのリンクボタンが表示され、問題を報告する場合は「チャットボット(阿里小蜜)」へと誘導されます。

日本で広く使われているアプリの場合、スクリーンショットを誰かにシェアする場合は通常、1. スクリーンショット撮る→2. チャットアプリなどを立ち上げる→3. 画像を選択する→画像を送信するといった複数のステップが発生します。

一方、タオバオの場合は1. スクリーンショットを撮る→2. 表示されたメニューからチャットアプリに移動する→3. 画像を送信するステップとなり、ユーザーの行動をより簡略化させています。

▲スマホアプリ「タオバオ」でスクリーンショットを撮ったところ
▲スマホアプリ「タオバオ」でスクリーンショットを撮ったところ

京東(JD.com)の場合

「タオバオ(淘宝網)」、「Tmall(天猫)」等を運営するアリババと並び中国ECの巨頭である京東でも、スクリーンショットを検知することで「シェア」と「問題報告」のメニューが表示され、商品ページでスクリーンショットを撮った場合は「類似商品を探す」メニューも追加で表示されます。

ユーザーが自分たちのサービスを使いながらスクリーンショットを撮るということは「何かしらの目的があるはずだ」と捉え、その目的を達成させるための機能が適切なタイミングで提供されています。

▲スマホアプリ「京東(JD)」でスクリーンショットを撮ったところ
▲スマホアプリ「京東(JD)」でスクリーンショットを撮ったところ

拼多多(Pinduoduo/ピンドゥオドゥオ)の場合

複数人で同じ商品を購入することで購入単価を下げる「共同購入」が有名な「拼多多」では、スクリーンショットを撮るとWeChat」「QQ」「QQモーメンツ」の3種類の導線が出てきます。

商品を多くの人に「シェアする」ことで成り立っているサービスなので、商品シェアをいかに簡単に行えるかは拼多多サービスレベルにそのまま繋がる非常に重要なポイントです。

▲スマホアプリ「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」でスクリーンショットを撮ったところ
▲スマホアプリ「拼多多(ピンドゥオドゥオ)」でスクリーンショットを撮ったところ

ユーザーの何気ない「スクリーンショット」という行為に意味を見出し、より良い体験づくりや、その後の拡散づくりに活用していこうとしていく姿勢は、ここで取り上げた全てのサービスに共通しています。

中国のシェア文化を語る上で外せない「QRコード」

ここまでスクリーンショットを活用するための機能についてご紹介しましたが、シェアするための「画像」自体にもより拡散を生み出すための工夫が施されていることがあります。

それは、画像に埋め込まれた「QRコード」です。

QRは「長押し」でアクセスできる

QRコードと言えばスマートフォンをかざすだけで情報を読み取れる便利な二次元バーコードですが、中国では読み取り以外の方法でこのコードを読み込むことができます。スマートフォンの画面上でQRコードを直接「長押し」すると、設定された情報にアクセスできます

月間10億人以上が利用するメッセンジャーアプリ「WeChat」にも長押しでQRコードを開く機能が標準搭載されています。例えばWeChatのチャットで送られてきた画像にQRコードがついている場合、その画像を長押しするだけでQRコードを認識し、リンクが開きます。もちろん、表示されているQRコードをスキャンすることもできます。

チャットでQRコード付き画像を送れば、コードとURLを一度に伝達することができ、一度の手間で伝えられる情報が一気に増えます。

このように、スマートフォン上だけで完結するQRコードを通した情報拡散が日常的に行われており、「QRコード」は情報の拡散における重要キーワードの一つになっています。

小米(シャオミ)のQRコード活用例

中国の総合家電メーカー「小米(シャオミ)」の公式ECアプリの商品ページでは、シェアボタンが画面上部の目につきやすい場所にあります。この機能を使えば、ワンタップで「シェア用画像」を生成することができます。

シェア用の画像上では余計な文言は削ぎ落とされ、必要十分な情報だけが配置されています。画像下部には商品ページのリンク情報が含まれるQRコードが付いています。

こうすることでスクリーンショットの弱点である情報の不完全さ、URL情報は別途共有しなくてはならない手間を見事にカバーしています。

▲スマホアプリ「小米(シャオミ)」でシェア用画像を生成したところ
▲スマホアプリ「小米(シャオミ)」でシェア用画像を生成したところ

この場合、もはやスクリーンショットはただの画面の切り取りではなく、画像とURLが一緒になった「シェアに最適化された伝達手段」とも言えます。

中国で頻繁におこる「情報のシェア」旅行先の選択にも影響

2017年にExpedia Media Solutionsが実施した「ASIA PACIFIC TRAVEL TRENDS 2017」の調査によると、「旅行を予約する際の意思決定プロセスに影響を与える要因はどれですか?」という問いに対し、「ネット上での家族、友だち」という答えが日本では15%であったのに対し、中国では50%にものぼるという結果になりました。

また同じく影響を与える要因として「SNS」回答した割合は日本が13%であるのに対し中国では38%となっています。

中国ではオンラインで取得する、信頼する人からの情報や口コミが重要視されていることがわかります。

▲[旅行のブッキングに際して影響を与えるもの/中・日・豪]:Expedia Media Solutions
▲[旅行のブッキングに際して影響を与えるもの/中・日・豪]:Expedia Media Solutions

この結果からは、日本は中国と比べ雑誌やテレビ、ラジオといった伝統的メディアを重視していることがわかります。こうした差異を踏まえずに、日本の感覚で中国向けのプロモーションや広告を打てば、ターゲット層にリーチすることは難しくなってしまうでしょう。

中国の「スクショ文化」の成長の背景には、もともと知人や家族といったコミュニティで頻繁に情報交換が行われていたという事実があります。有益な情報を他人に与えられることはコミュニティでの評価を高めるため、積極的にいい情報はシェアしたいと考える人も少なくありません。ECサイトやチャットサービスの普及は、こうした中国人の口コミ好きで内輪で情報をシェアしたがる傾向をさらに強める要因となったでしょう。

インバウンド市場への応用も

中国では多くの商品や体験の情報交換、口コミが生まれやすい環境があります。こうして共有された情報を元に購入や予約の意思決定が下されていることも明らかになっています。

インバウンド領域でのサービス展開の際には、口コミや、一般人による写真等映像コンテンツのSNSへの拡散を後押しするような工夫が競合との差別化にも有効となるのではないでしょうか。

より多くの情報拡散や口コミを生むためにも、訪日観光客に写真を撮ってもらえるようなフォトスペースを用意したり、紹介ページやECサイトのURLを入れたQRコードを用意するなど、拡散を歓迎していることが伝わる環境を用意することも一考に値するかもしれません。


<参照>

https://info.advertising.expedia.com/hubfs/Northstar-APAC-final.pdf

https://baijiahao.baidu.com/s?id=1622165602974190958

その他キャプチャは筆者によるもの

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この記事の筆者

兵頭 和(ビントウ)

兵頭 和(ビントウ)

2016年中国北京での社会人インターンを経て2017年よりEC事業会社にて越境EC天猫国際)運営、国内ECの開発企画、ディレクションを担当。現場目線で中国アプリサービスを解説する。愛媛生まれ。

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