訪日ロシア人に対し、旅券の事前登録制によるビザの取得免除を導入する方向で検討が行われています。どのような内容になるのかはまだわかりませんが、日露平和条約締結交渉を加速させたい日本政府としては重要な取り組みと言えるでしょう。
「日本で就労をしたい外国人」と「外国人を採用したい日本企業」にとってもビザの緩和は喜ばしいことですが、不法就労や治安面の課題にどう取り組むかが問題となるでしょう。
この記事では複雑な「就労資格」にはどのような種類があるのか、外国人を採用する際はどのような点に注意すればいいのか、などをご紹介します。
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ビザとは?
外国人が他国に滞在するためには、双方の政府が定めた滞在許可(ビザ)を得る必要があります。ただし観光目的で海外旅行に行く際は、多くの国でビザの発行が免除され、パスポートのみで渡航することが可能です。
パスポートとビザの違い
定められた期間よりも長く滞在する場合や、ビザの取得が義務付けられた国への入国には、ビザの発行が必要となります。
帰属する国の政府によって発行された、国外にいる人の身分証にあたるのがパスポートであるのに対し、ビザは、渡航先の国に合法的な手続きを踏んで入国していることの証明です。すなわち入国・滞在許可証の役割を果たしています。
ビザが不要な渡航先への期間内での観光滞在であれば、パスポートのみで渡航することができます。
ビザについて
パスポートのページにスタンプとして押されたり、ステッカーのようなものを張り付けられたりすることが多いビザですが、複数の種類があります。
代表的なものは、仕事の都合で海外に長期滞在することになった人を対象とした「ビジネスビザ」、留学などの際に必要な「学生ビザ」などが挙げられます。
これらのビザは、渡航先にあたる国の大使館や領事館での申請が必要となり、審査を行ったのちに発行されます。長期滞在者に向けたビザは、申請に必要な資料の種類が多かったり、申請に時間がかかったりすることもあるため、注意が必要です。
ESTAとは
2009年以降、アメリカへの渡航にはESTAの登録が必要になりました。Electronic System for Travel Authorizationの略で、「アメリカにおける入国者へのビザ免除システム」を指します。
この手続きを踏めば、ビジネスや観光などを目的とした入国者はアメリカ国内にビザなしで90日間以内の滞在が可能です。
ビザの種類
国家間の関係、滞在の目的や期間などによってビザの種類が異なるため、申請の際はまず自国と渡航先の間で、どのような取り決めがなされているかを知ることが重要です。
ビザ(査証)と在留資格の違い
ビザの他に、外国人の滞在に関する制度として「在留資格」があります。ビザと在留資格は似た文脈で使われることもありますが、ビザが「記載された範囲内の活動を行うための日本入国許可」として在外公館(外務省)が推薦する、という性質をもっています。
それに対し、在留資格は「外国人がその国に在留することに対して与えられる資格」です。在留資格ごとに、その外国人が国内でできる活動の範囲が規定されています。
日本で仕事をする場合
日本で外国人が仕事をする場合、一定期間の滞在であれば、医師、研究者、法律家、文化、芸術、マスコミなどの限られた職種に対して資格が与えられます。
留学目的など、就労を目的としていない在留資格で働くと処罰対象となってしまいます。パートタイムやインターンなど、給与を日本企業から受け取る形式の仕事は、すべてその対象となります。
これらの制約がなくなる「永住者資格」もありますが、すでに長期間滞在していることなどの条件があり、取得が難しい資格だとされています。
すでに長期にわたって日本に滞在している人に対しては「定住者」として就労資格が与えられることもあるほか、配偶者が日本国籍を保有している場合は比較的スムーズに就労が可能になるようです。
日本で仕事をしない場合と例外
日本への渡航目的が単なる観光である場合は、就労に関するビザや在留資格の心配をする必要はありません。留学生として日本を訪れる場合は、その期間や出身国によって異なりますが、学生用ビザの取得が必要な場合があります。
例えば観光ビザなしで90日間以内の滞在が許可されたパスポートを持っている外国人は、その期間内であれば日本の教育機関で勉強をすることができます。しかし90日よりも長い滞在を希望する場合には、領事館を通じてビザを申請する必要があります。
その他には、ワーキングホリデー制度というものがあり、日本とワーキングホリデー協定を結んでいる国の国籍を持つ者に限り、協定の定める範囲内での滞在、就労が許可されるビザが発行されます。
就労ビザの取得方法
外国人が日本で就労するためには、一般的には「就労ビザ」と呼ばれるものを取得する必要があります。ここでは、ロシア国籍保有者がどのように日本の就労ビザを得ることができるかを解説します。
ロシアからから呼び寄せて採用する場合
まずロシア国内の日本領事館に「在留資格認定証明書」の交付を申請します。その際には、法務省のホームページから取得できる在留資格認定証明書交付申請書や、申請に必要な証明書類の提出が必要です。
具体的には、学校の卒業証明書や、「技術、人文知識、国際業務の『区分』に該当することを証明する文書」などが挙げられます。その他、直近3か月以内に撮影された証明写真や返信用封筒などの準備も必要です。
これらの書類を不備なく準備し、申請が受理されれば、「在留資格認定証明書」が本人のもとに郵送されます。
続いてビザの申請を行い、無事に発行された時点で本人は日本に渡航できるようになり、国内での就労が可能になります。ただし、これもビザに規定された範囲内での就労に限定されるので、内容をよく確認して仕事を探さなければなりません。
すでに日本に居住している外国人を採用する場合
すでに日本に滞在している外国人を雇用する企業にとっては、ビザおよび在留資格の有無は非常に重要なポイントです。
対象の外国人がビザや在留資格を所有していたとしても、その資格に許可された範囲でなければ、非合法的な労働だと判断されてしまいます。
そのため外国人の採用を考えている場合は、現在の「在留資格」の範囲内に採用予定の業務が含まれているかどうかを確認する必要があります。
そのうえで雇用契約書を作成し、署名を残して契約内容を明らかにすることや、入国管理申請手続き、在留資格の変更、その他の各種手続きなど、法的に必要なプロセスをすべて踏んで初めて、雇用契約を結ぶことができます。
注意すべきこと
外国人採用に大切なのは、外国人雇用の制度について最低限の知識を身に着けておくことです。また、採用を考えている外国人の前職や出身などをきちんと確認し、怪しいところがないかを確認することも重要です。
また、ビザに記載された有効期限は契約の範囲に収まっているか、再入国許可があるかなど、細かい点までチェックしておくことで、不法就労活動を助長することがないようにする必要があります。
渡航目的とビザの照合を忘れずに
外国人が日本滞在時間を充実したものにするためには、目的に合わせ、必要な範囲をカバーしたビザを申請することが必須です。
ロシア人に限らず多くの外国人にとって、日本で就労するためのビザを獲得するのは簡単なことではありません。ビザを取得できたとしても、時間や業務などに制限がある場合もあります。
外国人を採用するためには、ビザや在留資格に関する最低限の知識を自ら身に着けること、雇用する外国人の持つ資格の種類と就労にかかわる制限についてよく確認することが大切です。
<参照>
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