九州への訪日外国人は2018年に約511万人と過去最高の数字を叩き出し、うち訪日韓国人は240万人でした。データが示すように、九州の街中にはアジア系の訪日外国人が多く、その中でも特に韓国人の姿は目立ちます。
しかし、2019年から日韓関係は悪化の一途をたどっています。日韓関係が悪化するにつれて、順調な伸び率を見せていた訪日韓国人の数は大幅に減少しました。
歴史的にも深いつながりのある日本と韓国の関係悪化は、すでに長期的な問題となっています。この記事では、観光客の現状を考慮した、九州の観光事業回復のための対策について紹介します。
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九州に来る外国人観光客の半分が韓国人
距離の近さから長崎県対馬市は8割以上の訪日外国人が韓国人だと言われています。
そのため「日本の韓国化」という過激な言葉で形容され、韓国人観光客が減少した現在では「脱韓国」と発言する国会議員まで出てきています。
2018年韓国人入国者は240万人
九州への訪日外国人は昨年2018年に約511万人と過去最高の数字を叩き出し、うち訪日韓国人は240万人でした。
訪日韓国人は全体で10%の伸び率となり、LCC(格安航空会社)の新規就航便も急増したことが大きな要因となっています。
中でも鹿児島空港は前年の2.56倍と大幅に数字をアップさせました。
対馬航路でも入国者数が40万人を超えるなど、東日本大震災があった2011年から右肩上がりに外国人の九州入国が増え、それに伴って訪日韓国人の数も増えています。
韓国人が多い理由はアクセスの良さ
福岡〜ソウル間は飛行機で1時間、さらに高速船を利用しても3時間でアクセスできる立地の良さがあります。
料金は片道1万円〜1万5千円程度(シーズンにより異なる)と国内旅行と変わらない値段です。
上記の理由から訪日韓国人の多くが、週末などの短期間での訪日が多く、またリピーターも多い傾向にあります。
日韓関係の悪化で観光業に打撃
日韓関係が悪化するに従って、順調な伸び率を見せていた訪日韓国人の数は大幅に減少しました。
2019年の7月だけを見ても、福岡空港の韓国人入国者は前年同月比で12%も数字が落ち込み、その数は約9万4千人に留まっています。
対馬と釜山を結ぶフェリーにはより大きな影響を受け、8割もの観光客が減少しているといいます。
その他、ホテルの予約や福岡、釜山間を往復する高速船なども軒並み大打撃を受けています。
訪日外国人全体の2割を韓国人が占めるため、政府の掲げる2020年訪日旅行者4000万人の目標にも大きな影響を与えそうです。
韓国人に人気の九州スポット3選
滞在日数が少ないのが訪日韓国人の特徴であり、そのために彼らには「弾丸旅行」で日本を訪れる傾向にあります。
旅行検索エンジンである「KAYAK 」が発表した「日韓旅行者が選ぶ人気の弾丸旅行先ランキング」によると、1位ソウル、2位福岡、3位大阪でした。
1~3日ならどこへ行く?弾丸旅行先ランキング!日本人VS韓国人
目次弾丸旅行先ランキング韓国人に人気急上昇・福岡日本人の短期旅行は「国内」弾丸旅行先ランキング旅行検索エンジンのKAYAKは7月27日、「日韓旅行者が選ぶ人気の弾丸旅行先ランキング」を発表しています。韓国人に人気のある都市は福岡、日本人は8割以上が国内旅行を好むという結果となりました。日韓旅行者が選ぶ人気の弾丸旅行先ランキング韓国人に人気急上昇・福岡1~3日の弾丸旅行先として人気の都市を調べるため、アジア太平洋地域の旅行者を対象にホテル検索数をランキング化。日本人と韓国人の人気都市の違いを...
キャナルシティ博多
福岡地所が運営する、レストラン、映画館、ショッピングなどができる複合型商業施設であり、福岡の中心地にあります。
バスツアーと提携している免税店「ラオックス」が入っており、韓国人に限らず外国人観光客の集客に成功したことと、ABCマートや無印良品といった日本の有名ショップやラーメンスタジアムがテナントに入っていることが外国人から支持を得ている理由でしょう。
韓国で最大規模の会員数を誇る「新韓カード」で決済が行えるほか、無料Wi-Fiなどインバウンド対応にも力を入れています。
太宰府天満宮
日本人よりも韓国人の観光客の数が圧倒的に多いと言われているのが太宰府天満宮です。
天神駅からわずか20分で行くことができ、学問・至誠・厄除けの神様として祀られている菅原道真公は韓国でも高い知名度を誇ります。
日本以上に厳しい韓国の受験戦争では、大学進学率が80%を超え(日本では約55%)学歴社会が根強く、受験シーズンでなくてもご祈願に訪れる韓国人が後を絶ちません。
スターバックス太宰府天満宮表参道店は、日本に13店舗ある「コンセプト店」になっており、SNSの人気撮影スポットとしても話題を集めています。
湯布院
SNSがきっかけとなり、爆発的な人気を集めたのが湯布院です。
韓国人の有名ブロガーを招いて湯布院にある池のひとつ金鱗湖をアピールしてもらったところ、予想以上の反響があり、近くの飲食店にまで訪日韓国人が大挙して押し寄せるようになりました。
湯布院は大分県にあるため、韓国からダイレクトで訪れる人は少ないものの、博多から高速バスが出ていることや、町全体の情緒ある風景が外国人観光客を魅了しています。
訪日韓国人に人気の高いコト消費「温泉」
訪日外国人による消費動向において、モノ消費からコト消費への移行がここ数年でより顕著になってきていますが、訪日韓国人の間で特に人気の高いコト消費が「温泉」です。「ヒーリング」という言葉が2-3年前に韓国で大流行し、当時から急速に高まっていた海外旅行への興味とヒーリング人気が合い重なり、日本の地方の温泉地・温泉旅館に泊まる韓国人が九州地方を中心に、過去数年で急激に増えているのです。また、一人当たりの消費額が比較的低いと言われる訪日韓国人ですが、温泉旅館に泊まる多くの韓国人旅行者層(30-40代...
観光事業の悪化を止める施策とは
これまで訪日韓国人に人気の九州スポットをご紹介しましたが、その数が減少することによって観光地は大きく収益を減らしています。
これまで毎日3便の運行だった高速船も2便となり、観光ルートとなる商店街からバスツアーなどいたるところで日韓関係修復を求める声が上がっています。
この状況を打破するためにはどのような対策が必要になるのでしょうか。
観光誘客を強化
日韓関係の悪化から長崎県対馬の観光客は前年比7月から4割、同8月には8割減少しました。
長崎県は、大打撃を受けた対馬市を支援することを決定しました。
県議会の9月補正予算案には追加として9,500万円の新たな予算が上乗せされ、2019年11月〜2020年3月までの宿泊費を3,000円割引にする「行っ得!対馬宿泊割引キャンペーン」を実施しています。
アジアでは台湾や香港から新たな観光客を獲得するため、旅行商品の企画支援も行う予定です。
ブログでのPR
韓国人に対する有効なアピール手段として、テレビや雑誌のマス広告ではなくバイラルマーケティングと呼ばれるインターネットの口コミを広めるマーケティング方法があります。
韓国ではマス広告よりもバイラルマーケティングの方が重点を置かれ、国内では約70%のシェアを占める独自検索サイト「NAVER」があり、これを用いてブログを閲覧しています。
つまり、ブログの体験談や口コミから情報収集をして旅行先を決める韓国人に対しては、内容の充実したブログで情報発信することが有効であり、より多くの魅力を伝えることができます。
NAVER Koreaの仕組みやSEO対策、理解すれば訪日韓国人の集客力アップ!
NAVER Koreaは韓国を代表するIT企業、NAVERにより運営されている検索エンジンです。NAVERは、先日、ヤフーとの経営統合協議が報道されたLINEの親会社でもあります。NAVER Koreaは、韓国の主要検索エンジン市場で圧倒的なシェアを誇っています。そのためNAVER内のコンテンツは韓国人ユーザーの目に触れる機会が多く、訪日韓国人向けのインバウンド対策に最適なプラットフォームであるといえるでしょう。しかし、NAVERの仕組みや韓国人の検索傾向には特徴があり、それらの特徴を理解...
訪日韓国人に訴求できる観光メディア&ソリューション5選 |
2018年の訪日韓国人数は753万9,000人(前年比5.6%増)となり、過去最高記録を更新しました。国籍別では中国の838万人に次いで多くなっています。もともと、インバウンド市場では訪日韓国人は大きな市場でした。2014年までは年間の訪日中国人数よりも訪日韓国人数の方が多く、伸び率も20%台が続く期間や40%台の年度も複数回存在します。現在では伸び率は1桁にとどまっていますが、今後もLCCの増便や物理的な距離の近さなどが要因となって、インバウンド市場における訪日韓国人の存在感は変わらず大...
多種多様な国からの観光客を迎え入れる
観光資源が乏しく、九州の中では思うようなインバウンド消費を行うことができなかった佐賀県が、タイの観光客をターゲットにして3年間で訪日タイ人を10倍以上増やした実績があります。
これを実現したのが「ロケツーリズム」であり、佐賀県が2013年からバンコクのドラマプロデューサーや映画監督と交渉し、佐賀をロケ地として活用しました。
佐賀県の観光課はこの事業に大幅な人員と予算を割いて、製作者を全面的にバックアップしています。
これにより誕生した「タイムライン」という映画がタイ国内で爆発的なヒットとなり、ロケ地である佐賀県の知名度が大幅に上昇、タイ人観光客が「聖地巡礼」に詰めかけるようになりました。
このような取り組みを行えば、「韓国人しか来ない九州」から観光客に多様性が生まれることとなり、観光収入の増加につながっていきます。
「タイ・ファースト」に努める佐賀県の悩みは、圧倒的な旅行消費金額の低さ:あの大ヒットミュージカル映画の便乗動画で、拓け新たな市場!
佐賀県はインバウンド誘致に成功し、2017年の外国人の延べ宿泊者数は385,250人泊となり2011年と比べると10倍以上増加しています。急成長の背景には佐賀県の戦略的なインバウンド施策がありました。本記事では、ロケツーリズムや酒蔵ツーリズムを活用した佐賀県の観光戦略を紹介していきます。目次佐賀県のインバウンド動向は?佐賀県のインバウンド需要は?2013年と2018年の外国人宿泊者の増加割合が1位タイからの観光客急増の鍵は映画ロケ?ロケツーリズムの成功事例徹底したターゲット設定映画の成功を...
観光客の現状を把握した上での対策を
歴史的にも深いつながりのある日本と韓国の関係悪化は、長期的な問題となりそうです。
観光地の魅力を発信する場合には、ターゲットとなる国に合わせた手段をとること、敏感になっている国民感情を煽らないようにすることが重要でしょう。
日韓関係が改善することで訪日韓国人減少問題は解決するのでしょうが、観光産業にも適切な対策をとることが求められています。
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<参照>
日本経済新聞:鹿児島・対馬に韓国人増、九州訪日客18年511万人
国土交通省九州運輸局:九州への外国人入国者数の推移について
西日本新聞:九州の外国人入国者急減 7月、韓国人観光客減が主因か
PRTIMES:KAYAKのプレスリリース
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今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
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