近年、訪日外国人観光客が増加していることや国内の少子高齢化で人材が不足している問題から、街中でも外国人の従業員が目立つようになってきました。
日本政府も外国人留学生が卒業後に幅広い職種に就けるようになる在留資格の変更に積極的になっており、今後ますます外国人採用が進むと見られています。
日本で働く韓国人の数や、韓国政府による海外就職支援について紹介します。
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日本での韓国人採用の現状
2017年末までに「技術・人文知識・国際業務」 のビザを取得して日本で就職した韓国人は累計21,088人にのぼり、初めて2万人を突破しました。
その背景には、韓国の学歴重視の激しい競争社会が色濃く関係しています。
今日までの日本での韓国人採用の現状を解説します。
2017年には初めて日本就職者2万人を突破
日本国内の韓国人採用が増加した背景は、日本の少子高齢化などにともなう人手不足と、若者の就職難に頭を悩ませる韓国の利害が一致した結果とみられています。
韓国の雇用労働省と外務省は、2018年6月に今後5年間で1万人の韓国人を日本で就職できるように支援していくことを決めました。
日本と韓国の文化は近く、日本側にとっても韓国人学生は日本語能力が他国よりも比較的高いというメリットもあります。
就職したい韓国人学生と人材不足の日本企業でのマッチングが期待されています。
就職目的の在留資格取得者数3,700人、国籍別で第3位
法務省によると、2017年(平成29年)に専門的な技術や知識等を活かして日本の企業等への就職を目的とした「技術・人文知識・国際業務」のビザを取得した外国人は30,065人でした。
ビザの交付を受けた人数はアジア諸国が全体の80.1%を占め、そのうち韓国人は3,766人で、中国人の6,162人、ベトナム人の4,965人に次ぐ3位です。
職務内容では「翻訳・通訳」が全体の15.7%、「技術開発(情報処理分野)」が全体の15.6%を占めています。
政府お墨付き、特定技能で進む外国人人材の採用の時代だからこそ見ておきたい「外国人採用・派遣」サービス8選
来年2020年の東京オリンピック・パラリンピックを前に、政府は「外国人材の受け入れ」について、新たな在留資格「特定技能(仮称)」を創設することを発表しました。「特定技能(仮称)」は、2019年4月に、働き方改革実行計画に盛り込まれ、具体的な一歩が踏み出されることになりそうです。新たな在留資格「特定技能(仮称)」を創設し、慢性的な人手不足に悩む特定分野での外国人受け入れを推進する方向で検討を進めています。「特定技能(仮称)」では、これまで外国人が就労できなかった分野での就労が可能になります。...
外国人留学生の就職先の拡大
法務省は、2019年5月30日付で日本の大学・大学院を卒業・修了した外国人留学生の就職先を拡大するよう、告示を改正すると発表しました。
これまで留学生が日本で就職を希望する場合には、大学で学んだ知識や経験を活かす仕事に就く場合にのみ、在留資格の変更が可能でした。
原則として日本語能力試験のN1合格者が対象ですが、改定後は一定の条件を満たせば「特定活動」という在留資格が最大5年まで与えられ、飲食店や小売業などの接客業務を含む幅広い職種に就くことができるようになります。
外国人観光客の増加にともない、外国語と日本語が両方話せる人材の確保に頭を悩ませていた接客業の現場には朗報といえるでしょう。
韓国K-MOVEの取り組み
韓国国内では近年、若年層の就職難が大きな社会問題となっています。
韓国の学歴重視・競争社会は日本とは比べ物にならないと言われており、ソウル大学・高麗(コリョ)大学・延世(ヨンセ)大学を合わせてSKYと呼ばれる一流の大学に入り、大企業に就職することがステイタスとされています。
しかし、韓国国内の内需は小さく、大企業の採用枠も少ない現状では高学歴でも就職できない人たちがあふれています。それを支援するのがK-MOVEです。
韓国人の海外就職を支援
K-MOVEとは、韓国の若者たちの海外就職を支援する、韓国政府のプログラムの総称です。
韓国政府の雇用労働部と外交部(在日韓国大使館)が中心となり、企画財政部、教育部、産業通商資源部と韓国産業人力公団(HRD)、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)などが行っていたそれぞれの支援政策をまとめ、国家として積極的に海外就職支援を行っています。
主な活動は、就職先の各国にK-MOVEセンターを開設して就職先の発掘と斡旋を行う、韓国国内のK-MOVEスクールで若年層の就職支援をすることが挙げられます。
しかし就職後の退職者の多さや、利用者の就職後の状況を把握できていないといった問題を抱えており、思うように成果が上がっていないのが現状です。
韓日つなぎプロジェクト
韓国政府は2018年6月18日に、若年層が日本で就職できるよう支援すると発表しました。
「韓日つなぎプロジェクト」と名付けられた就職ケアは、今後5年間で韓国の若年層1万人が日本で就職することを目指しています。
これはK-MOVEプログラムの一環で、韓国人材の優秀さを日本企業にアピールして就職先を発掘したり、韓国系企業への1社1人採用運動なども展開しています。
また、「Career in Japan」や「日本就職博覧会」などのイベントを開催し、就職希望者と採用希望企業のマッチングを行います。
就労後の離職を防ぐため、定着支援金の増額、支給期間の延長も行っています。
就職して1か月後には200万ウォン(約20万円、1ウォン=約0.1円)、半年後には100万ウォン、1年後にさらに100万ウォンの支給を決定しました。
2019年9月の就職博は延期に
2019年9月24日、26日にソウルで開催予定だった「2019下半期グローバル雇用大展」は、韓国内での日本製品不買運動や日本旅行取りやめなどの日韓関係が悪化した影響で開催を11月に延期されました。
若年層の就職難が深刻化する韓国で、日本への就職窓口が立たれるのは韓国人学生にとって大きな痛手といえます。
韓国人が「日本旅行はもういかない」理由とボイコットジャパンで激減する訪日韓国人への対策とは
ボイコットジャパン運動により日本旅行にいかないという韓国人が急増し、相次ぐキャンセルに観光従事者は大きな打撃を受けています。韓国人の日本旅行や日本製品の不買運動は、日韓関係の悪化が原因です。韓国人の方は日本の旅行についてどのように考えているのか、現在の訪日韓国人の動向について紹介します。関連記事韓国ナンバーワンの検索エンジンNAVER(ネイバー)とは韓国のブログサービス5選韓国インバウンドやるなら必ず知っておくべき NAVERブログのアルゴリズムとは?韓国が「ボイコット・ジャパン」しきれな...
韓国人を雇用するメリットは?
日本でもグローバル化が進み、外国人の雇用を積極的に行う企業も増えてきました。
日本は少子高齢化が進みつつあり、人材の確保が深刻な課題となることが懸念されています。
その一方、韓国は政府が海外就職を支援するほどの就職難で日本での就職を希望している学生が大勢います。
双方の利害が一致しそうな韓国人雇用ですが、そのメリットをご紹介します。
日本語力が高い
学歴重視の競争社会で育ってきた韓国人学生は、勉強熱心で日本語力の高さが際立ちます。
高校の第二外国語では日本語の履修者が最も多く、2018年12月の日本語能力検定では中国(195,754人)に次いで2位の受験者数(41,972人)です。
中国との人口の差を考えれば韓国人の受験者数の多さがわかります。
また、日本語能力検定では韓国人受験者は一番高いレベルのN1からN3までの受験者数が他の国よりも多く、日本語能力が高いといえます。
年功序列への理解
欧米の実力主義が徐々に広まりつつありますが、日本はまだまだ年功序列の企業文化が根強く残っています。
初任給が低く、勤めている年数が増えるごとに給料も増えるという体制は、外国人からは理解されにくい文化です。
しかし、韓国では年上を重んじる傾向が強く日本以上に年功序列が厳しくなっているため、日本企業の体制を理解しやすいといえます。
日本と韓国は文化や気候も似ているところがあるので、日本に来ても他の外国人より馴染みやすい側面があります。
雇用形態への理解
日本では残業が当たり前、有給休暇は勝手に取得できないという企業が多いといわれています。
欧米では有給休暇を消化したり、残業はしない、または残業分の賃金はしっかりもらったりすることは当然の権利としてありますが、韓国でも雇用状況は日本と似ています。
そのため、韓国人は他の国の人よりも日本企業の雇用形態を理解しやすいと言えるでしょう。
韓国では大企業に就職することを目標にする人が大多数のため、サムソンやLGなどの大手企業に就職した人は辞めません。
一方で、中小企業は賃金も安く待遇も悪いので、仕方なく就職したけれど少し勤めて転職を繰り返す人も多くいます。
そうした人々にとっては、日本語を習得して日本で就職するということは魅力的に映ることもあります。
国を挙げた就職支援 | 韓国人は日本企業に馴染みやすい?
韓国国内での若年層の就職難という背景から、韓国政府は国を挙げた海外就職支援を行っています。
韓国人学生は競争社会で育ってきているため、ハングリー精神があり日本語の習得にも積極的です。
日本での就職のために努力し、文化や気候が似ているため日本の環境に馴染みやすいという面もあり、韓国人採用も年々増えています。
日本政府も少子高齢化の影響から日本語能力の高い外国人の雇用に積極的になっており、外国人留学生の在留資格の変更も可能になりました。
今後少子高齢化が進むと、労働力の確保が重要な課題となってきます。外国語を話せる日本人の雇用が難しくなっている接客業の現場では、日本語能力の高い外国人の採用は人手不足解消のための解決策となるのではないでしょうか。
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