「インターネット前提社会」のオマージュとして囁かれるようになった「ドローン前提社会」、すなわちドローンがインターネットと同様の必須インフラとして扱われる時代は、すぐそこまで迫っています。
ドローン先進国と呼ばれる中国や欧州、アメリカでは、すでに多くの企業がドローンと関連技術を商業利用し、成果を上げています。一方、ドローン開発に関して後れを取ったといわれる日本国内においても、ドローン市場の規模は年々成長を見せています。
この記事では、すでにドローンの活用に成功している先例を見ながら、インバウンド業界への活用方法について紹介します。
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「ドローン前提社会」はもう数年先?空の産業革命
国内のドローン実装については、2019年6月に行われた成長戦略の閣議決定の中で、2022年度を目途に「有人地帯における目視外飛行(レベル4)」の社会実装を目標とする方針が採択されました。これに向けて、関連法整備やドローン技術の展開が進められています。
また、「無人地帯における目視外飛行(レベル3)」のドローン実装としては、福島県において2018年11月、日本郵便が郵便局間のドローンを利用した荷物輸送の実証実験を開始しています。
日本国内においても、すでにこれほどまでに社会受容の進んでいるドローンですが、海外での受容と規制はどのようになっているか比較してみましょう。
諸外国と比較するドローンの社会受容と規制
ドローン先進国の中でも、最も社会受容が進んでいるといわれている国の一つが中国です。
世界最大手のドローンメーカー・DJI社をはじめとして、多くのドローンメーカーや製造元があり、イノベーション都市・深圳では、毎年ドローンのエキスポも開催されています。
最近の新型肺炎(COVID-19)のニュースで、警察がドローンを操作して住人にマスクの着用を呼びかける動画が公開されるなど、実用化が進んでいます。
ドローン飛行の規制に関しては、2017年に規制が強化され、250グラム以上のドローンを個人で使用する場合には実名と機体の登録が必要となりました。
また、観光超大国として知られるフランスは、ドローンに対してオープンな国であるといえます。こちらも、ドローン三大メーカーの一つといわれるParrot社の拠点であることが一役買っています。
他国同様、ドローン飛行禁止区域や高度制限などはあるものの、後述する「ホビードローン」と呼ばれる種類のドローンに関しては、飛行エリアや飛行ルールに従っている限り、管轄当局の許可は不要で飛行できます。
日本では、2015年4月に「首相官邸無人機落下事件」がドローンの歴史の黎明期に発生し、ネガティブなイメージが印象づけられたため、社会受容は遅れ、規制も海外と比べて厳しい、といわれ続けていました。
しかし、昨今の国際的なドローン需要の高まりや、各業界が有効的にドローンを活用した事例を受けて、少しずつ機運が高まっているというのが現状です。
軍事・民間・ホビーまで広がり続ける用途
日本社会のドローンに対するネガティブイメージの醸成には、落下事件のほかにも、元が軍事目的で開発されたものである、という事実も関わっています。
しかし、こうしたドローンにまつわる「危険」というイメージからの脱却と、社会受容の促進のために、用途別のさまざまなドローンが開発されています。
代表的な例が、「トイドローン」もしくは「ホビードローン」と呼ばれる初心者向けの機体です。国内で販売されているドローンでも、安いものでは5,000円を下回ります。
さらに、重量が200グラム未満であれば、「無人航空機」ではなく「模型航空機」というカテゴリで扱われます。模型航空機は無人航空機の飛行に関するルールの適用外となり、空港周辺や一定の高度以上の飛行について許可を必要とする規定のみ適用されますが、小型無人機等飛行禁止法などは200グラム未満のドローンも適用対象です。
また、後述する「競技用ドローン」の登場によって、ドローンのスポーツレースなども開催されるようになりました。このような大衆向けの機体があることは、社会受容のための大きな足掛かりとなるでしょう。
ドローンを活かした各業界の実例
ドローン先進国では、既存の交通インフラに依存しない機動力、すなわち「エアモビリティ」という観点から、さまざまな分野で社会実装が進んでいます。地上の都合に影響されないという利点を活かして、配送ビジネス、インフラ点検、野生動物の生態調査に災害救助など、その用途は枚挙に暇がありません。
日本国内においても、ドローンが効果的に活用されている業界がいくつかあります。とくに代表的な、3つの例を見てみましょう。
1. 「空飛ぶカメラ」として:映像業界
ドローンの実装を最も早く、また最も直接的に行ったのが、映像業界です。映画・ドラマなどの撮影をはじめ、あらゆるシーンにドローンからの「空撮」が活かされました。ラジコンとは異なり、飛行中の安定性が格段に高く、また小回りも効くドローンは、小型無人機による空撮を現実的なものとしたのです。
上空からの映像というのは、本来であれば専用の大掛かりな機材を設置したり、高い費用を払ってヘリコプターからの撮影を試みたり、とにかく費用対効果の悪いものでした。しかし、ドローンの登場によって、数千~数万円ほどのコストで、個人レベルでも迫力のある映像が撮影できるようになったのです。
2. 白熱する「ドローンレース」:スカイスポーツ
「機動力」という言葉がつくと、そのマシン性能と運転技術を競い合う、スポーツレースとして昇華されるのも当然の流れといえるでしょう。空撮用とは異なり、最高時速や操作性を追求した「競技用ドローン」と、それを競わせる「ドローンレース」が登場しました。
ドバイでは、2016年3月に賞金総額1億円以上のビッグレース「World Drone Prix」が開催され、大きな盛り上がりを見せました。
また日本国内においても、東京モーターショー2019にて「FAI Drone Tokyo 2019 Racing & Conference」が開催され、「ドローン前提社会を目指して」と題されたカンファレンスと、日本初となる国際航空連盟(FAI)公認のドローンレースが二日間にわたって行われました。
このようにスポーツレジャーとして認知されることは、ドローンの社会受容に貢献する以上に、単純なイベントとしての集客効果を見込むことが可能となるでしょう。
3. 農薬散布に鳥害対策など活躍:農業
ドローンの実装によって革新的な変化が起きる、といわれているのが農業です。家の中にいながら畑全体の生育状況を把握でき、空中から農薬を散布し、不快な音を出して鳥獣を追い払い、さらには収穫した作物の拠点間輸送など、ありとあらゆる農作業がドローンによって転換可能となります。
離農、高齢化、人手不足などの問題点を抱える農業は、従事者への負担の軽減というのが大きな命題として挙げられていました。しかし、その解決だけには留まらず、農産物の品質の向上や収穫量の拡大といった、日本の農業全体の底上げがドローンによって可能になるといわれています。
ドローンによる作業の自動化・リモート化は、農業以外の一次産業にも大きく影響を与えることになります。ハイテク・IoT(Internet of Things)といったイメージが先行しますが、いずれ全世代を通じて、インフラや労働力としてのドローンが当たり前に受容される時代となるでしょう。
インバウンドにはどう活かす?
国際社会ではすでに「ドローン前提社会」が実現しつつあり、また日本国内においても社会実装は着々と進んでいます。いち早くドローンへの対応を進めることで、新たな経済効果を生み出したり、既存の問題の打破に至った実装モデルは、前述のようにいくつもありました。
そんななか、日本経済をけん引する成長産業ともいえるインバウンドの分野で、海外のドローン受容レベルとの間に差があることは、将来的に大きな損失となりかねません。インバウンドにおけるドローン関連技術のニーズや、既存の実装例を見てみましょう。
日本の景観を求めて訪れる観光客
インバウンド消費需要の傾向は、「モノ消費」から「コト消費」へと移行しています。すなわち、商品の購入やサービスへの出費で直接得られる「対価(モノ)」に対してではなく、それを通じて得られる「体験(コト)」を重視する、というものです。
外国人観光客の訪日目的において、豊かな自然や歴史的な建造物の鑑賞は大きな割合を占めています。そういった人たちに向けて、空撮を活かした魅力的な観光プロモーション映像を制作したり、観光客に自撮り用の機体を貸し出したりするなど、一歩踏み込んだ文化体験を提供できます。
ドローン持参の旅行者も
スマホやタブレットPCなどのスマートデバイスが本格的に普及して以降、各個人がスマートデバイスを所持していることが前提のサービスが提供されるようになりました。たとえば、ホテルに泊まれば充電ケーブルを貸し出していることが当たり前で、ふらっと入った飲食店でもフリーWi-Fiにつないでネットに接続できる、といった状態です。そして、日本国内におけるフリーWi-Fiの少なさや不便さを指して、「Wi-Fi後進国」という言葉も生まれてしまいました。
SNSや動画配信サービス全盛期の現代では、旅行先で持参したドローンを飛ばし、空撮したものをアップロードする、という旅行客も増えてきています。この「空撮」需要に提供側が対応できなければ、再び「後進国」のレッテルを貼られてしまうかもしれません。
ドローンによる空撮代行・レンタルサービス
ドローンへの対応と一口にいっても、関連法の把握であったり、操縦の難しさであったり、いずれも身に着けるとなると生半なことではありません。現時点においては、より専門的な知識と技術を提供しているプラットフォームに頼る、というのが有効な手段になります。
たとえば、観光プロモーション映像の制作などに際して、ドローンを用いた動画撮影の代行をする業者や、レンタルドローンの貸出を行っている専門業者もあります。
こういったサービスを活用することから、段階的にドローンの受容を進めていくというのが現実的でしょう。
<参考>
農林水産省:農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会
首相官邸 成長戦略ポータルサイト:モビリティ>閣議決定された施策
DRONE:日本初の郵便物を運ぶドローン、福島でデビュー
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