3.11「あの日」から9年。被災地宮城県、ホストタウン事業で世界に感謝を伝える

今年3月11日で、東日本大震災から丸9年が経ちます。そして現在も、4万8,000人近くの住民が避難生活を送っています。

ダークツーリズムという言葉があります。これは災害などによって被災した地域を対象とした観光を指し、被災地域の復興への寄与も期待されています。東日本大震災の被災地の一つである宮城県では、どのような取り組みがとられているのでしょうか。

また、今年は東京オリンピック・パラリンピックが開催される年でもあります。本大会に向け政府が働きかけ、地方自治体が取り組んでいる事業のひとつがホストタウンです。

東日本大震災で被災した地域にとっては、東京オリンピック・パラリンピックは震災後の復興を世界にアピールしてインバウンドの活性化につなげるまたとないチャンスでもあります。オリンピック開催に向けた、宮城県での取り組みを解説します。

ホストタウンとは

自治体が2020年に開催される東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に参加する国の選手や人々を受け入れ、スポーツ・文化・経済など多角的に交流をすることで地域の活性化やインバウンドの増加を図るというものです。

ホストタウンに認定されることで、交流事業の2分の1にあたる費用を国からの財政支援として受けられます。

ホストタウンに認定されたそれぞれの地方自治体は、オリンピック開催後も引き続きスポーツや文化を通した国際交流を続け、インバウンドの拡大やグローバル化、地域創生を目指します

ホストタウンに登録される条件

ホストタウンになるには、相手国・地域の自治体と協議をし、以下の3つの交流に取り組むことが求められます。

  • 大会に参加するために来日する選手との交流:大会の前後に、競技に参加する選手達との交流の場を持つ。
  • 大会参加国の方々との交流:参加国からゲストを招いて、文化や歴史を学ぶ。お祭りやイベントなどを紹介し合う。
  • 日本人オリンピック・パラリンピック出場選手との交流:過去にオリンピックやパラリンピックに参加したことのある日本人の講演会や競技体験などをする。

こういった取り組みを中心に大会が終わった後も持続的に行い、地域の更なるグローバル化、活性化、観光振興へとつなげていくのがホストタウン事業の目標です。

宮城県のホストタウンと取り組み

宮城県は、仙台市、白石氏、登米市、蔵王市、丸森市ホストタウン登録されています。

宮城県のホストタウン

宮城県のホストタウンは以下の通りです。

  • 仙台市ーイタリア
  • 仙台市・多賀城市ーキューバ
  • 白石市・柴田市ーベラルーシ
  • 登米市ーポーランド
  • 蔵王市ーパラオ
  • 丸森市ーザンビア

各自治体では、オリンピック東京大会の事前合宿の受け入れや日本文化の体験イベント、お互いの国の歴史を学ぶ交流など、さまざまな交流事業を計画しています。

特に仙台市は、認定以前にもイタリアとの交流があり、サッカーの合宿受け入れやバレーボール・野球チームの派遣などを行っています。その他の市も、以前よりスポーツなどで交流のある国の受け入れを決定しています。

この記事では仙台市、登米市、丸森町でのホストタウン事業について紹介します。

仙台市:ヨーロッパでは数少ない地震国イタリアと防災シンポジウム開催予定

仙台市は、以前より交流のあるイタリアのホストタウンとなりました。2002年には、FIFAワールドカップサッカー大会の開催時にイタリア代表の合宿を受け入れ、イタリアと各種交流事業を行っています。

「慶長遣欧使節団出帆400周年事業」などの実績を活かし、イタリアの事前合宿誘致などに積極的に取り組んでいます。

2020年のオリンピック開催までに、イタリアの関係者を招いてのキックオフイベントや仙台市出身のオリンピアンと地元の子供達との交流事業、音楽や食、アートなどをテーマとしたさまざまな交流イベントなどを開催していきます。

オリンピック開催後にも引き続き交流事業を行い、特にヨーロッパでは数少ない地震国であるイタリアと防災に関するシンポジウムの開催を予定しています。

登米市:施設の利用促進に繋げる

登米市には国内屈指の優れた競技環境を有する、長沼ボート場があります。ポーランドのボート選手団のオリンピック東京大会の事前合宿を支援することで、ボート競技の振興と地域の活性化を目指します

オリンピック開催までに、ポーランド大使館等を表敬訪問し、ポーランドボート協会スタッフ等招聘やオリンピアンとの交流を図ります。オリンピック開催中は送迎 ・市内案内 ・競技ボランティア・環境整備などの支援をし、ポーランドボート協会のコーチ等による講習会開催なども予定されています。

大会後もスポーツや文化面での交流を続け、子ども達の夢や希望が膨らむ取り組みをします。大きな大会を誘致し、ブランド化することで施設の有効な利用促進に繋げます

丸森町:ザンビアの農村との草の根技術交流

2011年から、丸森町はJICA(独立行政法人国際協力機構)の農業振興能力向上プロジェクトで研修生を受け入れています。それを機に、ザンビアの農村と丸森町住民との民間レベルの交流をおこなう、草の根交流が継続されています。

オリンピック東京大会の開催前には、日本人オリンピアンによるオリンピック体験の講演や、ザンビア大使館によるザンビアの紹介や交流を行います。

大会開催中は、会場やパブリックビューイングでザンビアの選手を応援し、選手を招いての文化交流を行います。

オリンピック終了後は、日本の文化や地域農業体験などを通じた住民との交流や、農業の技術交流などを続けます。また、ザンビアの歴史や文化を学習することや交流事業を通して日本と世界の違いを実感し、広い視野を持つ人材を育成するとともに、異なる文化を認め合える価値観を育みます

復興「ありがとう」ホストタウンから地域活性化につなげる

東日本大震災で被災した三県(宮城県、福島県、岩手県)には、復興「ありがとう」ホストタウンと呼ばれる制度があります。この制度は、これまでに復興支援をしてくれた海外の国や地域、支援してくれた方々を招いて住民との交流を実施するものです。国・県が連携し、自治体の登録を全面的にバックアップします。

宮城県の取り組みに対する指針

宮城県が掲げる取り組みに対する基本指針は、東日本大震災の被災からの復興を世界に示すことです。基本指針に基づき、3つの取組方針があります。

  • 宮城県の復興を世界へ :世界への感謝の意を込め、復興情報を発信して震災の伝承をする。また、大会の成功に貢献し、世界との多様な交流を推進する。
  • 宮城県の魅力を世界へ :県産品の安全性や魅力、サービスの向上で観光客の誘致を進める。
  • 宮城県のげんきを世界へ :オリンピックへの関心の高まりを活用して、スポーツ活動や健康の増進を促す。

復興「ありがとう」ホストタウン

復興支援に協力してくれた海外の国や地域、被災時等に支援してくれた方々を被災地に招き、地元住民との交流を行う事業です。

被災地に入りレスキュー活動をしてくれた各国のレスキュー隊員や、支援物資等を送ってくれた方々、ボランティアの方々など、復興に貢献頂いた方々を対象にしています。

震災の記憶を後世に残すため、復興のプロセスの説明や、被災地各地へのツアーなどを行います。被災地の過去と現在を比べ、どのように復興してきたのかを説明し、復興に貢献してくれた方々への感謝の気持ちを伝えます。

オリンピック開催後も大会関係者との交流を継続できるよう、競技終了後に、相手国・地域の選手や関係者等とリラックスした状況での交流を重視します。

ホストタウン事業の継続的な取り組みで地域活性化につなげる

ホストタウン事業は、オリンピック開催時のみにとどまらず、大会終了後にも継続することで地域の活性化につなげる狙いがあります。

ホストタウンになる自治体の中には、外国人観光客にまだ知られていない地域もあるでしょう。政府からの活動費の補助があるホストタウン事業をきっかけとして、世界に地域の魅力を発信することができれば、今後ますます増えると言われている外国人観光客のインバウンド効果も期待できます。

日本への関心が世界的に高まるこの機会にホストタウン事業に取り組み、交流を継続することで地元の良さを再発見し、それを上手く利用してその地域ならではの街づくりをすることが期待されています。

インバウンドに向けた宮城県の取り組み

震災の影響で減少したインバウンドを回復するため、宮城県はさまざまな取り組みを行っています。

外国人観光客の満足度の低さで上位に挙がる、WiFiスポットの充実や、多言語に対応した看板の整備などが進められています。

平成26年度には、無料公衆無線LAN設置支援事業を立ち上げて30施設にWiFiを設置することが決定されました。多言語案内板に関しては、平成27年より導入に向けた調査事業が開始され、外国人観光客の受け入れへ向けて動き出しています。

オリンピック・パラリンピックを機に、復興支援の感謝を世界へ

東日本大震災で被災した宮城県にとって、2020年のオリンピック・パラリンピックは復興を世界にアピールする絶好の機会と言えます。

ホストタウン事業をきっかけに海外の国々と交流を深め、地域の魅力を発掘して発信することで地域の活性化につなげることが可能です。交流事業を機に地元住民の関心を高め、イベントへの参加や関与を促す流れを作ることができれば、住みやすい街づくりや地域振興へも大きく貢献できるのではないでしょうか。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客のインバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!