「儀礼的無関心」という相互理解の形/芝園団地の中国人と日本人の共生に学ぶ

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埼玉県の芝園団地は、住民の多くが中国人であるとして一時注目を集めました。

トラブルを発端に、日本人の住民との共生に向けた取り組みが様々に提案されてきました。

今回は、インバウンドの多文化共生に向けた相互理解への可能性について、芝園団地の例を参考に解説していきます。


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芝園団地とは?住民の半分が中国人

埼玉県川口市に位置する芝園団地は、1978年に日本住宅公団、現在のUR都市機構が建てた賃貸住宅です。

1990年代から外国人居住者が増加し、現在は約5,000人の住民のうち50%以上が中国人となっています。

1990年代は外国人入居不可の賃貸物件が多かった一方で、公団の賃貸住宅は中長期の在留資格を持つ外国人も借りられたことから、外国人居住者が増加したと考えられています。現在芝園団地に住む中国人居住者はIT企業に勤めている人が多く、30代以上の中間層が家族とともに入居するケースが増加しました。

団地内にアジア系のレストランや商店が十数軒立ち並ぶほか、最寄りのJR蕨(わらび)駅の隣にあるJR西川口駅周辺では、本格的な中華が食べられる中国料理店が数多く見受けられます。このエリアは「西川口チャイナタウン」などと呼ばれています。 

マナーの悪化で日本人住民から苦情

中国人住民が増加する過程では、マナーに関するさまざまなトラブルが頻発しています。

2000年代には、ゴミが散乱し分別ができていない、自宅からゴミ捨て場にゴミを投げ捨てる人がいるなどの苦情が日本人住民から寄せられていました。

夜間にはベランダ越しに大きな声で話す人がいるほか、子どもの叫び声がうるさいといった騒音問題、中国の香辛料からなる料理の香りに対する苦情まで挙がっています。

中国人住民は母国と同じ生活をしているにすぎませんが、これまでにない生活習慣が持ち込まれることで、日本人住民が迷惑に感じ、苦情の形で訴えているようです。

芝園団地の取り組み「芝園かけはしプロジェクト」

芝園団地における、日本人住民と中国人住民の共存・共生を目指した取り組みの1つが、2015年に発足した「芝園かけはしプロジェクト」です。

芝園団地で地域活性化活動に取り組む学生ボランティア団体であり、高校生から大学院生まで、2018年11月時点で35名のメンバーが所属しています。

地域行事への参加と交流イベント

芝園団地は、中国人を中心に増加する若い外国人住民と高齢化する日本人が暮らす「将来の日本の縮図」といえます。

そのような状況下で、前述のような文化や習慣の違いによる生活トラブル、地域の担い手の減少といった課題を抱えているのが現状です。

そこで「芝園かけはしプロジェクト」では、多文化交流クラブや芝園サロン、地域行事への参加や交流イベントを企画しています。

初回のイベントでは、差別的な落書きがあった団地内のベンチを日中住民で塗り替えることで、友好的な関係の形成につとめています。

交流イベントは企画段階から住民とともに話し合い、参加者の主体性を高める工夫をしています。

相互理解の場に足を運んでもらえない場合も

日中住民の交流イベントなどを開催しても全員が参加するわけではなく、交流に消極的な人や興味関心の無い人は参加しないケースもあります。

とはいえ、交流を押し付けることで理解は進まないため、関心を持たない一方でコミュニティに悪影響を及ぼしているわけでもない人なら、無理に振り向かせる必要はないという考え方もできます。

「異文化と交わりたくない」意思を尊重するのは、一概には悪いとは言い難いのも事実です。

「儀礼的無関心」とは?相互理解を促進できるか

儀礼的無関心とは、アメリカの社会学者によって提唱された概念です。

他人同士が比較的近い距離感で一定時間を過ごす際に、他人が自分の存在に対して違和感を抱かないよう最低限の配慮をする礼儀作法を意味します。

儀礼的無関心の例としては、たまたま電車で隣り合って座った人と挨拶をかわしたりはせず、 普通は話しかけることもないといったケースが挙げられます。

儀礼的無関心の考えは、コミュニティ形成にも応用することができると考えられます。

ある文化を尊敬することと、その文化に基づくふるまいを実践するどうかは、別軸のことです。異文化に対して特別の好奇心や好意がなくとも、異文化を尊敬することはできます。

特別視せず、ある文化がそのままに存在できる環境を作ることも、相互理解の一つの形といえるのかもしれません。

ゴミ捨てや騒音を出さないといった「ルール」を守ることは、所属する文化が何であるかにかかわらず共同生活においては必要です。ただし、誰がそのルールを決めているのか、なぜ従うべきなのか、多文化社会にあってはその点が伝わるように配慮するべきでしょう。

多文化共生の今後の展望

外国人居住者と日本人が共生していく場所は、今後ますます増えていくと考えられます。地域やコミュニティごとに、相互理解を促進するイベントの開催も増えていくかもしれません。

こうした場面では、日本人は社会の多数派として、自分の意見の押し付けになっていないかに注意を払う必要があるでしょう。日本では当たり前のことでも、異文化で生活してきた人にとっては、「それがなぜNGとされるのか」の理由付けが理解しがたいこともあるはずです。

例えば、多くの場合、中国社会にとって子供は宝です。幼児や学童の出す音について、「快適な生活を妨げる騒音である」というロジックは理解しがたいという人もいるかもしれません。

日本社会に存在する文化的背景や、多数派の肯定するルールが尊重されることなどを説明するべきでしょう。こうした、自分が無意識に従っている価値規範を言語化することは時に難しく、こうした点が異文化の衝突の一因となっている可能性もあります。

現在、西川口に広がる新たなチャイナタウンは、本格的な中華料理が味わえるとして、日本人にも人気のスポットです。こうした、中国文化に積極的に接触している層が、今後の異文化を包摂した新しい日本、新しいコミュニティを作り出していくのかもしれません。


<参照>

・東洋経済ONLINE:中国人の街「西川口」の変貌っぷりが凄すぎる

・論座:共存から共生へ、試行錯誤の日々

・The Asahi Shimbun GLOBE+:芝園団地に住んでいます 記者が住民として見た、「静かな分断」と共生

・芝園かけはしプロジェクト:芝園団地を「かけはし」でつなごう

・芝園かけはしプロジェクト:活動内容

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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