パラリンピックの柔道は、視覚障がいを持つ選手を対象にした競技です。
他の競技と異なり、性別と体重を基準にクラス分けがされるなど、健常者の柔道と共通するルールが多いことが特徴です。また、初めて観戦する方にも分かりやすいルールで開催される競技です。
本記事では、東京パラリンピックにおける柔道の見どころやルール、注目選手などをご紹介します。
※新型コロナウイルスのパンデミックを受け、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックは1年程度の延期が決定しました。詳細な日程、選考基準などは、公式情報が発表され次第、順次更新します。
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パラリンピック柔道とは
柔道は、2人の選手が畳の上で技をかけあう競技です。
この項目では、パラリンピック柔道の対象となる選手やクラス分け、パラリンピック柔道ならではのルールや見どころをご紹介します。
パラリンピック柔道の選手は、視覚障がい者のみ
パラリンピックの柔道は、視覚障がいのある選手のみを対象にした競技です。
カヌーや陸上競技など、多くのパラリンピック競技では障がいの程度を基準にクラス分けがされますが、柔道ではオリンピックと同様に男女別・体重別にクラスが分けられます。全盲と弱視の選手など、障がいの程度が異なる選手同士が組む場合も、アイマスクなどを使用せずに試合が始まります。
ただし選手が全盲の場合、試合中に場内中央へ戻る際に介助が必要なため、柔道衣の両袖に赤い円形のマークをつける決まりがあります。
健常者の柔道との違いは、はじめ方
ルールはオリンピックの柔道とほぼ同じですが、パラリンピックの柔道では競技の始まり方が異なります。
オリンピックの柔道では選手が向かい合って立った状態で競技をはじめる一方、パラリンピックの柔道では審判が両選手を公平に組み合った状態にします。その後、審判が「はじめ」の合図を出すと試合が始まります。
試合中に選手が離れたり、場外に出てしまった場合などは「まて」の合図がかかり、試合開始の位置でもう一度組み直しをします。
視覚で情報を得ることが難しい選手が出場するため、音で情報を伝える場面が多いこともパラリンピック柔道の特徴です。主審は選手が場外に近づくと、「場外、場外」と声を出して注意を促します。
試合は選手同士が常に組み合った姿勢で実施されるため、体力の消耗が激しい競技でもあります。
柔道の見どころ
パラリンピック柔道は選手どうしが組み合った状態で始まるので、技をかけやすい道着の掴み方を探る「組手争い」がないことが特徴です。
審判が両選手を公平に組み合った状態に整えてから試合が始まるため、開始直後に一本技がかけられる試合も珍しくありません。
その一方で、組み合った状態から少しずつ選手が得意な組み方に移動するという試合展開もあり、迫力ある試合展開と持ち手争いのかけひきを両方楽しめる競技でもあります。
なおパラリンピック柔道では、コーチが試合中に声で残り時間などを知らせるサポートの仕組みもあります。健常者の柔道のルールと違いを見比べると、より競技そのものの理解が深まるでしょう。
東京2020パラリンピック柔道の開催概要
2020年東京パラリンピックでは、8月28日(金)から8月30日(日)までの3日間で柔道が実施される予定でした。
この項目では、開催日程や会場・選手のクラス分け・ルール変更など柔道の開催概要をお伝えします。
開催日程・会場
2020年東京パラリンピックの柔道は、8月28日(金)・8月29日(土)・8月30日(日)の3日間、日本武道館にて開催される予定でした。
また、試合は午前・午後に分けられ、8月28日と8月29日は10:30〜13:30・16:00〜18:30、8月30日は10:30〜14:00・16:30〜19:40とスケジュールが組まれていました。
クラス分け
2021年東京パラリンピックでは、性別と体重を基準にクラスが分かれます。
男子部門では60kg級・66kg級・73kg級・81kg級・90kg級・100kg級・100kg超級の7階級に分かれます。 いっぽう女子部門では、48kg級・53kg級・57kg級・63kg級・70kg級・70kg超級の6階級が設けられています。
ルールの変更
2016年末、国際柔道連盟(IJF)が柔道のルール改正をしたことにより、パラリンピックの柔道で適用されるルールにも一部変更がありました。
2021年東京パラリンピックの柔道には、男子の試合時間を5分から4分に短縮する、技の判定基準を「一本」「技あり」「有効」の3種類から「一本」「技あり」の2種類に絞るなどのルールの変更が施されています。
これらの変更は、「柔道を観客にとってさらに分かりやすく、ダイナミックな競技にする」というIJFの方針に基づいたものです。これまでのルールと比べると、新しいルールは「一本」で決着をつける試合を促すような内容となっています。
日本の注目選手
日本は開催国として男子7階級・女子6階級のすべての枠を獲得しています。選手の内定は、5月末時点の「東京パラリンピックランキング」の順位をもとに決められる予定です。
この項目では、パラリンピックの出場内定が有力視されている注目選手をご紹介します。
夫婦でリオパラリンピックに出場、廣瀬選手
廣瀬順子(ひろせじゅんこ)選手は、2016年リオパラリンピック・女子57kg級で銅メダルを獲得しました。パラリンピック柔道女子では日本初のメダル獲得選手としても知られており、今回の金メダル獲得にも期待がかかっています。
廣瀬順子選手の夫でもある廣瀬悠(ひろせゆう)選手は、2008年に開催された北京パラリンピックで男子100kg級、2016年に開催されたリオパラリンピックでは男子90kg級の出場経験があります。
東京パラリンピックでの金メダル獲得を目指しつつ、廣瀬順子選手の指導にも携わっています。
ロンドンパラリンピックの金メダリスト、正木健人選手
正木健人(まさきけんと)選手は、2012年ロンドンパラリンピックで金メダルを、2016年リオパラリンピックでは銅メダルを獲得した100kg級の選手です。全日本視覚障害者柔道大会では、2014年から2016年にかけて3回連続で優勝しました。
2019年にはアゼルバイジャンで開催されたIBSA柔道グランプリ バクー大会で3位、カザフスタンで開催されたIBSAアジアオセアニアチャンピオンシップで3位の成績を納めるなど、国内外で活躍しています。
40歳でリオに出場、藤本選手
藤本聰(ふじもと さとし)選手は、男子66kg級の選手です。1996年アトランタパラリンピック、2000年シドニーパラリンピック、2004年アテネパラリンピックで金メダルを獲得しています。
また、1996年から2016年まですべてのパラリンピックに出場しており、2008年北京パラリンピックでは銀メダル、40歳で出場した2016年リオパラリンピックでは銅メダルを獲得したベテラン選手です。
全ての大会でメダルを獲得しており、今回の東京五輪での活躍にも期待が寄せられています。
パラリンピック柔道ならではの接近戦がポイント
パラリンピックの柔道では、出場選手が公平に組み合った状態で試合が始まることが特徴です。オリンピックの柔道と異なり、接近した状態で技をかけあい始めるため、会場では緊迫感のある試合が繰り広げられるでしょう。
2021年東京パラリンピックの柔道では、男子の試合時間が4分に短縮され、技の判定基準が「一本」「技あり」の2種類に絞られるなど、より観客にとって分かりやすいルールが適用されます。
今回のパラリンピックは、日本でパラリンピックが開催されること、そしてルールの改正も相まって、多くの人がパラリンピック柔道を観戦するきっかけとなるのではないでしょうか。
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