安倍首相は、本日5月14日18時ごろから記者会見を開き、5月末まで延長されていた緊急事態宣言を39県の都道府県で本日解除することを発表しました。
地域別に緊急事態宣言が解除されるとどのような影響があるのか、解除になる地域と解除にならない地域にはどのような差が出るのか、インバウンド業界への影響を交えて考察します。
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5月14日 首相記者会見:雇用調整助成金を1日15,000円まで上限引き上げ
北海道、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、京都、兵庫を除く39件で、緊急事態宣言の解除が発表されました。政府は専門家の判断を仰ぎ、感染状況、医療提供体制、監視体制の数値を含め具体的な基準を作成しました。
緊急事態宣言解除には、2週間前と1週間前を比べ新規感染が減少傾向、直近1週間の感染者数の合計が10万人あたり0.5人に抑えられていること、感染経路がわからない感染状況を総合的に判断したとしています。
この基準に対し39の各地域では徹底的なクラスター対策をすることで、感染拡大を防止できるレベルに達したとして、本日解除する流れに至ったと安倍首相は述べました。緊急事態宣言が解除されなかった1都2府4県と北海道は、5月21日をめどにもう一度感染状況を評価し、可能であれば緊急事態宣言を解除する方針です。
また、政府はレストランなどの飲食店、百貨店、商店街、映画館やホテル、旅館、公共機関など80を超える業界ごとに感染予防のためのガイドライン策定し、緊急事態宣言が解除された地域の事業者にガイドラインにしたがって事業の本格的な再開を促しました。
解除された地域へのお願い
安倍首相は緊急事態宣言が解除された地域の国民に対し、規制緩和がされた諸外国で新たな感染者が増加傾向にあることを例に、緊急事態宣言が解除された後も感染拡大防止のための行動と意識を「3つのお願い」として訴えかけました。
- 段階的な日常へのシフト
- コロナ時代の新しい生活様式に即した変化の継続
- 新型コロナウイルスの警戒
安倍首相は緊急事態宣言が解除されたからと急激な移動の活発化や人との接触をしないように呼びかけました。また県を跨ぐ移動も5月中は控えるようにし、少しずつ段階的な日常の正常化にシフトすることを促しました。
また今後もテレワークや時差出勤の活用をし、新型コロナウイルスの危険が常にそばにあることを念頭に入れた新しい生活様式への意識と行動をとるように訴えました。
政府支援をさらに拡充する方針
安倍首相は、会見後に行われる政府対策本部にて2次補正予算編成に着手することを表明しました。2次補正予算では休業を余儀なくされている事業者の暮らしをまもるため、雇用調整助成金を抜本的に拡充すると表明しました。
これまで1日8,000円だった上限額を15,000円まで特例的に引き上げると共に、被雇用者が直接申請可能となり、直接受取も可能となるようにする方針とのことです。さらに家賃負担軽減の支援策も設立し、地域経済の核である中小企業への支援をさらに充実させていくとしています。
緊急事態宣言の解除対象地域
記者会見で明らかとなった緊急事態宣言の解除対象地域についてご紹介します。
「特定警戒都道府県」以外の39県
今回の緊急事態宣言の解除は、北海道、東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、京都、兵庫県以外の39の都道府県です。1都2府4県と北海道は引き続き緊急事態宣言が発令され、5月21日に再度、緊急事態宣言を解除するかどうか検討されます。
緊急事態宣言が解除された地域でも、引き続きソーシャルディスタンスの保持やテレワークの活用、3つの密を避けるなど感染予防の徹底が重要だと安倍首相は述べています。
また緊急事態宣言が解除された地域でも集団感染(クラスター感染)が確認された接客を伴う飲食店やバー、ライブハウスなどは営業自粛を要請されています。
5月12日に特定警戒都道府県に含まれない群馬県の山本知事が、緊急事態宣言が解除され人の移動が増えることにより感染者数が増加する危険性があるとして、西村経済再生担当相に緊急事態宣言の解除を見送るよう要請しました。
5月中は県を跨ぐ移動を自粛するように政府は呼びかけていますが、緊急事態宣言が解除となった各都道府県でどのように感染流行を防止していくのか、その方法が注目されます。
緊急事態宣言解除になる地域とならない地域への影響は?
本日5月14日に緊急事態宣言が一部地域のみで解除されたことによって、どのような影響があるのか簡単にまとめました。
教育格差拡大への懸念高まる
緊急事態宣言が一部地域のみで解除となったことで、解除になる地域とならない地域で教育の格差に対する懸念が高まっています。一部地域ではすでに学校が再開され、マスク着用や手洗いを徹底しながら短縮での授業を再開し、週明けの5月18日から通常に近い学校生活が再開される地域もあります。
5月末まで都立高校などの休校が決定している東京都などでは、オンライン授業を実施する学校もあります。しかしオンライン授業には学校側と生徒側双方でパソコン端末などやインターネット接続などの通信環境が必要となるため、準備が整わずプリント学習などで乗り切る学校もあります。
学校ごとに体制やマンパワーに差があり、教育格差が生じる要因となっています。
インバウンド業界への影響
一部地域で緊急事態宣言が解除されましたが、国内の感染状況を注視しなければいけない状況が続いており、海外との渡航制限の緩和についてはまだ時間がかかるとみられます。そのため訪日外国人旅行者が戻ってくるにはまだ相応の時間がかかると考えられ、インバウンド業界ではしばらく厳しい状況が続くでしょう。
一方で一部地域の緊急事態宣言解除によって事業を再開または拡大できる事業者は、将来の訪日外国人旅行者の回復に備えて、集客や受け入れ態勢の整備といった準備を加速することができるでしょう。
海外では経済再開のため規制を緩和する動きも出てきており、訪日外国人旅行者が戻ってくるタイミングを注視していく必要があります。観光庁は国内外の観光事業に対し、観光業の需要喚起や環境整備に投資する方針を公表しています。
事業者は状況を注視しながら、今できることを着実に行っていくことが求められます。
経済再開と感染防止の狭間で難しい舵取りが求められる
緊急事態宣言の延長により多くの個人や事業者が、収入の確保や事業継続に困難を抱えています。これ以上の経済活動の停滞は国の存続に関わると同時に、今までに経験したことのない外出自粛制限などに多くの国民がストレスを感じていました。
今回の緊急事態宣言は、せざるを得なかった状況での苦肉の策と言えるでしょう。海外でも少しずつ規制を緩和し経済活動を再開する動きが出てきており、各国の政府の方針と感染者状況に注目が集まっています。
中国・韓国などでは感染の第2波ではないかと考えられる集団感染が起こっており、日本でもこれまでの外出自粛が緩和されることによって、再び感染が広がる恐れがあります。
緊急事態宣言を解除したことによって感染者が増加すれば、再び外出自粛制限を行わなければならなくなるでしょう。それだけでなく、日本全体が安全でなければ、外国人が安心して日本を訪れることができず、インバウンド業界が回復することは難しいでしょう。
経済再開と感染拡大防止の狭間で、日本は難しい舵取りを求められています。訪日外国人観光客が戻りインバウンド業界が再び盛り上がるためには、緊急事態宣言の解除後も日本全体が感染拡大防止に取り組み、日本が安全な国であることを海外にアピールしていく必要があります。
来たる時期に備え、インバウンド事業者は感染防止に努めながら事業を再開し、集客や受け入れなど今できることを着実に行っていくことが求められます。
<参照>
産経新聞:群馬県知事が西村経済再生担当相に要望 緊急事態宣言解除の見送り
時事ドットコムニュース:愛知、福岡も解除検討 緊急事態宣言、大幅縮小へ―政府
毎日新聞:茨城・愛知・岐阜・福岡、月末待たず緊急事態解除検討 政府、計38県で調整
NHK NEWS WEB:政府 緊急事態宣言を14日一部解除へ 往来は引き続き自粛を
NHK NEWS WEB:緊急事態宣言 減少傾向続く県は解除検討 東京は見送りの見通し
時事ドットコムニュース:越境移動、自粛求めず 34県などで緊急宣言解除検討、政府方針―14日判断
FNN PRIME:緊急事態宣言14日に一部解除検討も…学校再開と休校継続で広がる教育格差
毎日新聞:特定警戒都道府県以外の34県間の移動可能に 緊急事態宣言解除で 政府が緩和方針
観光庁:令和2年度 観光庁関係 補正予算
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