なぜ「ツール・ド・フランス」は観光資源として優れているのか?「定例開催」「定番の景色」で宣伝効果が増幅

公開日:2020年05月21日

世界3大スポーツイベントの一つに数えられるツール・ド・フランスは、毎年7月のバケーション時期に開催されることもあり、フランスの一大観光資源となっています。

今年は新型コロナウイルスの影響で、8月末からの開催が予定されています。フランスではロックダウンの緩和から1週間が経過し、現地では感染の第二波を警戒しながらですが、日常を取り戻しつつあるようです。

今回はツール・ド・フランスが観光資源として優れている点について分析すると同時に、日本でスポーツイベントを観光資源として活用するための条件を分析します。


ツール・ド・フランスのここがすごい

毎年7月にフランスで開催される自転車レースである、「ツール・ド・フランス」(以下ツールと省略)。3週間かけて、フランス国内で3,000㎞以上にわたり、自転車選手がレースを繰り広げます。

ツールは、オリンピックやサッカーのワールドカップと並ぶ世界3大スポーツイベントの1つとしてヨーロッパで認知されており、毎年世界約190か国に配信され、約35億人の視聴者がレースを見守ります。

ツール・ド・フランスの経済効果

これだけ大きなスポーツイベントが毎年開催されるということは、その経済効果も非常に大きいということになります。

ツールの主催者は、傘下にスポーツ新聞社を持つアムアリ・スポーツ・オルガニザシオン(Amaury Sport Organisation通称ASO)という企業です。この企業が1回のツール開催により手にする利益は約1億5,000万ユーロと言われています。

この利益の中にはTVなどによる放映権のほかに、レース期間中の各スタート・ゴール地点となった市町村からの開催料も含まれており、2014年時点でその相場は6万~10万ユーロです。つまり、フランスの市町村はASOに10万ユーロを支払って、スタート・ゴール地点を誘致するということになります。

もちろん、この金額を支払うフランスの市町村にも、経済的な見返りというものがあります。

まず、ツールのスタート・ゴール地点になることにより、その村にツールの関係者(チームや報道関係者)が宿泊します。2013年のツール開催時にゴール地点となったある村では、その期間の宿泊客が10%増加したそうです。結果、約70万ユーロの経済的利益があったといいます。

つまり、このツール開催時だけで、ASOに支払った開催料の元を取ることができる可能性すらあります。何よりも、ツールでゴール地点となると、文字通り世界中にその村の名前が知られ、またその地域の観光名所はTVで放映されます。ツールは抜群の広告塔といえるでしょう。

ツール・ド・フランスに人が集まる理由

では、なぜ、ツール・ド・フランスはここまで経済効果が高いのでしょうか。まず、最大の理由は世界的に有名なスポーツイベントだから、ということでしょう。ヨーロッパはもちろん、世界中の多くの人にツール・ド・フランスの開催国や競技内容が認知されています。

そして、毎年開催されているということも挙げられます。ツールが一番最初に開催されたのは1903年のことでした。今まで2度の世界大戦による中断もありましたが、基本的には毎年開催されているスポーツイベントです。

そして前述した世界3大スポーツイベントのなかで、ツールだけが毎年開催されています。

毎年同じ時期に開催されることにより、人々の頭の中に「7月のフランス=ツール=世界最高の自転車レースを直接観戦できる」という図式が出来上がり、世界中から自転車ファンをフランスに呼び寄せることができるようになります。

レース観戦で景色も目に入る

特にTVでツールを観戦する人にとって、レース中の美しい風景を見ることは、フランスという国を知る一つの手段になっているということが挙げられます。

ひまわり畑の横を通る自転車選手という構図はツールの風物詩で、その地方にある美しい教会や自然の景色を見ることはTV観戦者の楽しみでもあります。映像を見た結果、その地方に興味を抱き、後日旅行に訪れることも少なくありません。

ツールを「追いかける」楽しみ方

現地フランスでは、キャンピングカーなどを運転しながら、ツールを追いかけている人が大勢います。彼らの主な目的は、ツールのスタート・ゴールなどで選手を応援することですが、同時にフランスの知らない街で、美しい景色を見たり、知らなかった食べ物や飲み物を食することも目的となります。

ツール・ド・フランスは様々な角度から「フランス」という国をよく知るための、大きな窓口となっています。

日本で、スポーツイベントで海外観光客をひきつけるために必要な戦略とは

ツールを観光資源としてみた場合、まず、ツールが毎年同じ時期に開催されているスポーツイベントであることが、観光客をひきつける要因の一つとなっていることに気がつきます。

「7月にフランスに行くと、ツールを見ることができる」ということ世界中で認識されているため、自転車レースファンが、そして、お祭りのような雰囲気が好きな人が、この時期にフランスに集まりやすくなります。これを日本に即して考えた場合、「毎年〇月に日本の〇〇(市町村の名前)に行けば、必ず観戦できる」スポーツイベントがあるということを、海外の人が知っていることが重要です。

また、フランス国外の観戦者にとっては、ツールが「フランスを知るための窓口」としての役割を持っていることにも気が付きます。実は、教会もひまわり畑も、ほかのヨーロッパ諸国でも頻繁にみられるものです。

しかし、こうした景色がツールを通じて毎年7月に「フランスの夏の景色」として世界中に報道されることにより、TV観戦者にフランスの景色として認識されるようになります。

その結果、ツールが終わった後でも「ツールで見たあの景色を生で見たい」と、フランスの小さな町村に観光客が来るようになります。

日本のスポーツイベントでも、そのスポーツやそのスポーツを取り巻く景色が「日本の景色」として海外の人に認識され、「あそこに行きたい」と憧れられる場所になることが、海外からの観光客をひきつけるために重要になってくるのです。

「毎年決まった時期に開催されること」と「海外の人に印象を残せる、日本の景色があること」が日本のスポーツイベントで重要なことなのではないでしょうか。


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客のインバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!