アーティストの椎名林檎が、東京オリンピック・パラリンピックの開閉会式で演出プランを担当する、「4式典総合プランニングチーム」に選出されました。
狂言師の野村萬斎や映画監督の山崎貴らとともに8名のチームを構成し、オリンピックの開会式からパラリンピックの閉会式まで、四部作のストーリーおよび演出を手がけます。
この記事では、プランニングチームの人選、東京オリンピックの開閉会式のコンセプト、椎名林檎が抜擢された理由を紹介します。
※新型コロナウイルスの感染拡大を受け、東京オリンピック(五輪)・パラリンピックは1年延期され、開会式は2021年7月23日(金)、閉会式は2021年8月8日(日)となりました。
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東京オリンピック・パラリンピック大会の開閉会式のメンバー発表
2017年12月、2020年夏に開催予定だった東京オリンピック・パラリンピックの開会式・閉会式のプランを設計するメンバーが発表されました。
メンバーには椎名林檎(アーティスト)、野村萬斎(狂言師)、山崎貴(映画監督)、MIKIKO(振付師)、川村元気(映画プロデューサー)の5名と、クリエイティブディレクターである栗栖良依、佐々木宏、菅野薫の3名が選出され「4式典総合プランニングチーム」と称されました。
以下では、人選の基準、演出のコンセプトを解説します。
人選の基準
オリンピック・パラリンピックは、世界中が日本に注目する機会です。開会式や閉会式の重要性も高く、国内外に向けてアピールする場ともいえます。
プランニングチームは、2021年以降も世界で活躍する世代を中心に選出されています。選出にあたっては、以下のポイントが重視されました。
- 映画制作に携わり、映像とストーリーを統合できる人材
- 日本・東京の伝統を演出できる人材
- 共生・パラリンピックを表現できる人材
- リオ大会のフラッグハンドオーバーセレモニー(大会旗の引継式)チームの知見を活用できる人材
これらの点にフォーカスして選出された8名が、基本プランをまとめます。
演出のコンセプト
競技日程は、オリンピック開会式、閉会式、パラリンピック開会式、閉会式の順に行われる予定です。東京オリンピックでは、これらの4式典を起承転結になぞらえ、4部作として構成する予定です。
4つの式典を通して発信するメッセージやストーリー内容の考案も、プランニングチームの役目です。
メッセージやストーリー内容は、メンバーが一から決めるわけではなく、全体のコンセプトとなるキーワードに基づき考案します。
全体のコンセプトには、以下の8つが設定されています。
- 平和
- 共生
- 復興
- 未来
- 参画
- アスリート
- 日本・東京
- ワクワク感・ドキドキ感
これらのコンセプトをもとに、8名のプランニングチームがどのような演出にまとめあげるのかに注目が集まります。
椎名林檎が選ばれた理由
椎名林檎は、プランニングチームの人選基準でもある、日本・東京の演出と、フラッグハンドオーバーセレモニーの知見の活用の2点で期待されています。
椎名林檎は、楽曲の歌詞で日本を感じさせる言語表現や、東京にまつわる地名をうまく取り入れています。
また、音楽監督を務めあげた同セレモニーでは、「和」の演出において高い評価を得ています。
以下では、椎名林檎の音楽性、そしてフラッグハンドオーバーセレモニーでの演出が選出にどのように影響を与えたのかについて解説します。
音楽性
1998年に「幸福論」でデビューした椎名林檎は、「新宿系」として独自のスタイルを確立します。これは、当時流行の中心であった「渋谷系」とは対極の存在で、アクの強い音楽性と表現されています。
同時に「椎名林檎」の人物像も、「新宿系」のイメージに沿う形でブランディングが進められてきました。
楽曲の特徴の一つに、歌詞の中に古語的な言い回しや「東京」をはじめとする国内の地名が多く登場する点があります。
2014年にリリースされた“NIPPON”ではPVや歌詞の内容に対して、「国家主義」や「純潔思想」などの批判もあがりましたが、本人はあくまでも作品であると主張しています。
賛否両論の声があがることも少なくないものの、日本文化や和の精神とロックを融合させた、新たな音楽を追求する姿勢は、多くの人から注目されています。
2016年リオ五輪でのフラッグハンドオーバーセレモニーでの高い評価
同式典で選曲や演出に携わった経験や、世界から高く評価された実績は、椎名林檎がプランニングチームに選出された一因となっています。
中でも音楽を手がけた椎名は、選曲、演出ともに高い評価を受けています。琴や尺八などを用いることで伝統的な「和」を表現するのではなく、ジャズやテクノを中心に「クールジャパン」を示す、斬新な方法をとっています。
オリンピックの閉幕式では、次の開催地へ大会旗を引き継ぐ「フラッグハンドオーバーセレモニー」が行われます。2016年のリオオリンピックで同式典の企画演出を務めたのは、椎名林檎、佐々木宏、菅野薫、MIKIKOです。
2020年東京五輪開閉会演出の狙い
これまでのオリンピックの開閉会式では、開催国の歴史に焦点をあてた演出が多く行われています。
2021年の開催が予定されている東京オリンピックでも、文化や歴史をメインテーマとした開閉会式が行われる可能性も高いといえるでしょう。
以下では、1964年の東京大会、2008年の北京大会、2012年のロンドン大会の開閉会式での演出と、東京オリンピックで目指す演出を紹介します。
過去の五輪開閉会式のテーマ(1964年)
1964年にも、初めて日本が開催国となった東京オリンピックが行われました。開会式では航空自衛隊の「ブルーインパルス」が曲技飛行を披露し、空に五輪を描く演出が話題になりました。ブルーインパルスは、航空自衛隊の部隊の一つで、主な任務は広報です。国防を象徴する存在であり、パイロットの技量や航空機の性能の高さの点で、国の威信を表現できる存在といえます。
聖火リレーでは、原爆投下当日の1945年8月6日に広島県三次市で生まれた陸上競技選手の坂井義則がアンカーを務めています。こうした人選は開催国日本の歴史を世界に伝える役割を担いました。
2008年の北京オリンピックでは、中国の歴史にフォーカスした演出が行われました。3,000人の人々による孔子の『論語』の朗読、巨大な活版印刷など、歴史に影響を与えた事物を盛り込んでいます。
2012年のロンドンオリンピックでも、歴史をメインテーマとした演出が注目されました。映画さながらの映像演出でイギリス史を振り返り、サッカー選手のデビッド・ベッカム、コメディ映画の主人公・Mr.ビーン、スパイ映画のジェームズ・ボンドなどが登場して会場を盛り上げました。
このように過去の開閉会式では、開催国の歴史や新旧の文化を反映した演出が多く行われています。
東京2020オリンピックで表現されるとみられているもの
東京オリンピックの開会式では、コンセプトの一つでもある「共生」をメインテーマとし、「休戦」のメッセージを発信する狙いがあるようです。
関係者によれば、世界で人気を集める日本のアニメを導入するとみられており、敵対するキャラクターが協力しあう演出が検討されているとの情報があります。
また、開閉会式の総合統括を担う野村萬斎は、NHKニュース「おはよう日本」の中で、演出についてインタビューに答えています。極秘情報のため、詳細な演出は伏せているものの、日本が世界に誇るテクノロジーの重要性に言及しています。
まだ広く認知されていないテクノロジーを演出に盛り込めれば、盛り上がる契機になるとの発言をしていることから、「伝統」と「テクノロジー」の融合がみられるのではないかと期待されています。
椎名林檎が目指す演出とは
NHKは、2014年に音楽番組"SONGS"の中で椎名林檎を取り上げています。番組では、東京オリンピック・パラリンピック競技大会委員の理事である蜷川実香との対談やインタビューを通し、椎名の演出に対する意識に迫っています。
この中で椎名林檎は、「恥をかかないもの」に仕上げること、「外から見た日本のカルチャーとのギャップをなくす」ことを強調しています。
2015年の「東京のグランドデザイン検討委員会」ではオリンピックをきっかけに、芸術の魅力を世界に発信すべきと発言しています。
これらの発言を踏まえると、開閉会式の演出を通して、まだ海外で認知の高まっていない、新たな日本文化の発信を目指すとみられています。
椎名林檎の確かなセンスと経験で、新たな日本文化をアピール
東京大会では、セレモニーの演出に携わった経験を活かし、日本・東京の伝統を発信する役目を担います。4つの式典では、「平和」や「復興」をはじめとする8つのキーワードをもとに演出がなされ、「共生」をメインテーマとして「休戦」のメッセージが発信されると考えられます。
これまで音楽業界で新たなジャンルを確立させ、幅広く指示を集めてきた椎名林檎が、プランニングチームの一員としてどのようなパフォーマンスを生み出すのかにも大きな注目が集まります。
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