株式会社 Airporterが自社のサービスを利用する訪日外国人を対象として行った調査で、全国籍の86%が日本を選択し、1位となりました。
訪日予定についても調査されており、中国人観光客は早ければ夏~10月の国慶節ごろに戻るのではないかと予想されます。また訪日予定時期や買い物予定について、中華圏の3か国・地域で明確な違いが見られました。
今回の調査結果を参考に、インバウンド回復に向けた第一歩である中華圏の訪日需要や訪日時期、予算などについて解説します。
《注目ポイント》
- 中国の外国人観光客は早ければ夏~10月(国慶節)ごろには戻ると予想
- 香港は10~12月で中国に次ぐ、台湾は1年以内
- 中華圏の訪日外国人:買い物したい場所は薬局が多い、予算は2019年と同様の傾向
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コロナ収束後に旅行したい場所:全国籍の86%が日本を選択
回答者に新型コロナウイルスが収束した後に訪れたい国を尋ねると、86%の回答者が日本を選びました。全回答者を出身地別に分けると、一番多い出身地が台湾(46%)、次に香港(16%)となり、この上位2つの出身地だけで全体の6割を占めています。
JNTOの「訪日外客統計」のデータから算出したところ、2019年は台湾から全人口の5人に1人が、香港からは3人に1人が日本を訪れました。
また観光庁の2019年分の訪日外国人消費動向調査によると、台湾と香港は訪日客数に占めるリピーター率が全国籍に比べ20%ほど高いことがわかっています。さらに「前回の日本来訪時期」を尋ねると、それぞれ過半数が過去1年以内に訪日したと答えています。
これらの調査結果から、他の国と比較して台湾や香港の訪日客は「日本に旅行に行く」ことのハードルが低く、訪日間隔も狭いことがうかがえます。
日本に次いで韓国やタイ、台湾が選ばれ、新型コロナウイルスの封じ込めに成功して安心・安全に旅行ができる国や地域が旅行先に選ばれやすいという傾向があるようです。
訪日予定時期「コロナ落ち着いたら」が6割
現時点で訪日する計画がある人にその予定時期を尋ねると、「コロナ感染症が落ち着いてから」と回答した訪日客の割合が64%となりました。 これは、3月23日から3月29日に実施された前回の調査結果である約16%の4倍の数値となります。
4月は新型コロナウイルスの世界的なパンデミックの影響で、各地でロックダウンや外出自粛措置が講じられていたことが背景にあると考えられます。
最も早く戻ってくる?中華圏の外国人観光客の訪日予定・予算を分析
続いては、インバウンド回復が最も早いと予想され、過去の訪日客数においても全国籍のうち大きな割合を占める中華圏の外国人観光客の訪日予定・訪日予算について分析します。
中華圏の外国人観光客の訪日予定時期:中国「7~9月」が最多
調査では、中華圏の外国人の訪日予定時期を出身国・地域別に集計しています。
台湾では「2021年4〜6月」と回答した割合が12%と最も高い一方で、特出した時期はありませんでした。しかしそれ以降になると割合が減少しているため、1年以内には訪日したいと考えている人が多いことがうかがえます。
香港では「2020年10〜12月」と回答した割合が15%と最も高く、中国の次に戻りが早い可能性があります。その一方で、「2021年4〜6月」と回答した割合も高いことから、新型コロナウイルスの感染封じ込めからある程度の時間が経過し日本国内の安心・安全がしっかりと確認されてからと、訪日に慎重な考え方を示す人も多いと考えられます。
中国では「2020年7〜9月」と回答した割合が18%と最も高く、中華圏においても全世界においても最も早くインバウンドが回復すると予想されます。
その一方で、日本政府は「夏以降にビジネス目的の訪日客の受け入れを再開し、その後観光客の受け入れを再開」との見解を示しているため、現状2020年7~9月の訪日は困難といえます。そのため訪日中国人観光客は、早ければ10月の国慶節には戻ってくるのではないかと予想されます。
中華圏の外国人観光客の旅ナカでの買い物場所:薬局多い傾向
訪日旅行中にどこで買い物をしたいかについて、台湾の訪日客はスーパー、コンビニ、アウトレットモールでの買い物を希望する一方で、百貨店や免税店での買い物はそれほど希望していません。比較的安価な商品が並ぶ場所での買い物を希望する人が多いことは、訪日時の予算の低さとも関連があるでしょう。
香港の訪日客は他の中華圏に比べて全体的に日本での買い物を希望する人の割合が高く、中でもデパートやスーパーでの購買を希望する割合が高くなっています。一方でアウトレットモールでの買い物を希望する割合は最も低くなっています。
中国の訪日客は他の中華圏以上に薬局での買い物を希望する割合が高い一方で、スーパーマーケットや100円均一、家電量販店での買い物を希望する割合は低くなっています。
台湾が84%、香港が85%、中国が91%と、全体的に薬局での買い物を希望している人が多いようです。しかしデータ全体をみると、国や地域によって訪日時の買い物希望場所にかなりばらつきがあることがわかります。
中華圏の外国人観光客の旅ナカ予算:2019年までの傾向続くと予想
調査では、中華圏の外国人に対し、訪日旅行中の予算額を尋ねています。
台湾の訪日客は、「予算10〜30万円」と回答した割合が36%と最も高い一方で、「予算5万以下」と回答した割合が中華圏において最も高く、訪日旅行が比較的安価に楽しめる手軽な旅行という位置づけになっているといえます。観光庁の消費動向調査によると、2019年の台湾人一人あたりの旅行消費額は11万8,288円でした。
香港の訪日客は、「予算10〜30万円」と回答した割合が60%と高く、「50万円以上100万円未満」と回答した割合も15%と中華圏の中で最も高くなっています。観光庁の消費動向調査によると、2019年の香港人一人あたりの旅行消費額は15万5,951円でした。香港は富裕層の比率の高さがアジアでも有数であり、訪日意欲の高い高所得者層の存在がうかがえます。
中国の訪日客は、「予算10〜30万円」と「予算30〜50万円」と回答した割合がそれぞれ全体の36%を占めました。観光庁の消費動向調査において、2019年の中国人一人あたりの旅行消費額は21万2,810円であり、引き続き中国における訪日予算の高さがうかがえます。
今回の調査結果と観光庁の2019年度の消費動向調査を比較した結果、アフターコロナにおける国・地域ごとの予算額の傾向は2019年と比べ大きな変化はないと予想されます。
中華圏の訪日外国人観光客を誘致し、インバウンド回復に向けた第一歩を
中国では新型コロナウイルスの感染が収束に向かいつつあり、今回の調査結果からも訪日予定時期が早いことがわかりました。新型コロナウイルスの感染状況や入国制限の状況にもよりますが、夏~10月の国慶節頃までには戻ると予想されます。
一方で台湾・香港は、リピート率が高く訪日需要は高いと考えられますが、新型コロナウイルスの感染状況や日本の安心・安全がしっかりと確認できてからと時期については慎重な様子がうかがえます。
国や地域による違いはありますが、中華圏は新型コロナウイルスの感染が収束に向かいつつあるため、欧米豪よりはインバウンドの回復が早いことが予想されます。すでに次回の訪日に備えて情報収集をしている訪日客もいるでしょう。
インバウンドの完全な回復を目指すにあたり、まずは次の訪日時期が早いことが予想され、過去の訪日客数においても大きな割合を占める中華圏への情報発信や、中華圏の訪日外国人に対するインバウンド対応を進めることが重要といえます。
5月25日にようやく全国で緊急事態宣言が解除されましたが、再び以前のような感染拡大を起こさずより早いインバウンド回復を目指すためにも、一人ひとりの感染防止への心がけや自国の安心・安全を示す取り組みが求められます。
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<参照>
株式会社Airporter:プレスリリース
観光庁:訪日外国人消費動向調査 「2019年年間値の推計」※確報値
JNTO:訪日外客統計 2019年12月暫定値
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