私有地に無断立ち入りする外国人、不法侵入にならない?観光公害の背景に常識の違い、北欧の「自然享受権」という考え方

完全無料 口コミアカデミー 「インバウンドの教科書」出ました! 国別・都道府県別データ・トレンドをカバー 見てみる

北海道・美瑛町に広がる「展望花畑 四季彩の丘」の花のじゅうたんが満開になる8月には、毎年国内外からの多くの観光客が押し寄せてきます。実はこの国内でも屈指の観光スポットは、訪日外国人に悩まされた場所の一つでもあります。

広大な地面に色とりどりに咲く花畑を写真に収めれば、SNSにアップするにふさわしい「インスタ映え」の画像となります。こうした撮影を目的に、私有地である畑に無断で入り畑が荒らされる被害が発生しています。

日本で生活するならば、入っていい場所といけない場所があることは当然のルールです。ところが世界では「私有地」でも誰でも無断で入ることを許している国もあります。インバウンド受け入れの現場では、こうした常識の違いからトラブルにつながることも少なくありません。

この記事では、訪日外国人が増加する中、トラブルが急増している「土地」に関するルールや法律について紹介します。

関連記事
名物の木を切り倒し「インスタ映え」の踏み荒らしに対抗
豪エアーズロック、永久に登山禁止を決定
対馬の神社が「韓国人お断り」を表明


【訪日ラボは、インバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025」を8月5日に開催します】

カンファレンスについて詳しく見てみる

なぜ無断で「私有地」に入ってしまう外国人がいるのか

訪日外国人に限らず、そこが入ってはいけない場所と認識できていないというケースや、人が見ていなければ、そして実際に草花を傷めてしまわなければよいと考える場合があるでしょう。

そして「この程度ならば大丈夫」という判断を下す際、人によって、また育った環境によって、その基準は大きく異なってきます。

海外旅行は人生に何度もない機会であるという場合もあるでしょう。旅先で解放感から羽目を外してしまい、普段ならば下さないような判断をしてしまう場合もあるかもしれません。

また、国によっては「他人の土地」に入り、好きに自然資源を持ち帰ることが当然のところすらあります。

フィンランドの場合:自然はみんなのもの「自然享受権」

北欧と聞いて、福祉の手厚い、プライベートの充実した、ゆとりのあるライフスタイルを思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。公共のサービスが整えられているイメージを持つ人もいるかもしれません。

こうしたイメージの延長線上にあるといえるような、「自然享受権」という考えが、北欧の一国であるフィンランドに存在します。これは、「自然の恵み」について、誰もが楽しむ権利があるという考えです。

この考えに基づき、自然資源は土地の所有者だけのものではなく、その他大勢の人にとっても所有してよいものとなっています。たとえば、私有地である森の中でキノコや果実を収穫することは、人々の権利です。

私有地であっても、所有者に迷惑をかけない限り、人々は勝手に立ち入りや通行をしてかまいません。観光客に対しても同様の権利が付与されています。

同じ北欧ではあっても、国や地域によって権利の範囲は異なってきますが、自然享受権では、主に自転車での通行やテントでの宿泊、魚釣りや野性の果実やキノコ類の採取がその保証する権利の対象に含まれています。

自然享受権に関するTwitter投稿
▲Twitter:編集部スクリーンショット

Twitter:自然享受権に関する投稿(https://twitter.com/hlithskjolf/status/599269918459056128?ref_src=twsrc%5Etfw)

自然享受権に関するTwitter投稿
▲Twitter投稿:編集部スクリーンショット

Twitter:自然享受権に関する投稿(https://twitter.com/Richard50336211/status/1120943939962441728?ref_src=twsrc%5Etfw)


日本では「私有地に入らない」というのは当然の考えですが、こうした「他人の土地であってもしてよいこと」がある国や地域で育っている場合、北欧に限らず、気軽に足を踏み入れてしまうこともあると考えられるでしょう。

日本で私有地(農地)への無断侵入は罰せられる?

日本では、私有地へ無断で侵入した際にはどのような罰則があるのでしょうか。日本では、刑法で定められている住居等に該当しない駐車場や畑などは「住居侵入罪」には該当しません。

しかし同時に、田畑の踏み荒らしにより損害が発生するような場合には器物損壊の罪に問うことができます。また、立ち入り禁止を明示している場合にも、罪を問うことができる可能性があるそうです。

ただしこうした訴えを起こす場合には、加害行為について証明する必要があり、防犯カメラを準備している、かつそこに行動が記録されていなければなりません。通りすがりの訪日外国人を相手に罪を問い、賠償させることは簡単ではないでしょう。

まとめ

自然景観や文化財の鑑賞を目的に観光客が増加すれば、街や都市の経済的発展にもつながりますが、マナーの共有ができなければトラブルにもつながってしまいます。

日本では、私有地でも農地など居住地以外での迷惑行為を罰した判例は少なく、どのように資産を守れば良いのか有効な方法がなく困ってしまう場合もあるようです。

自己防衛策としてできることには以下のような対策があります。

  • 多言語対応した立ち入り禁止の表示を出す(もしくは私有地内での迷惑行為禁止の表示)
  • 迷惑行為をみつけた場合に、NGであることを伝える
  • SNSやインターネットで、状況を知らせ、適切なふるまいについて案内する

SNSやインターネットで注意を促したり被害を報告した場合、景観を守りたいと思う支援者たちに声が届き、様々なかたちでトラブルに立ち向かうことができる可能性があります。

冒頭で紹介した北海道・美瑛町のケースでは、QRコード付きの立て札を設置し、所有者を支援する「クラウドファンディング 」のウェブページにアクセスできるような形をとりました。これを通じて、土地の管理者は金銭的な補助を受けることができたといいます。

今後も訪日外国人は増えていくと考えられますが、それぞれ考える「常識」が異なることによるトラブルは、単純に言葉で示すだけでは伝わらない場合もあります。「なぜいけないのか」を、相手の常識をベースに伝える姿勢が必要でしょう。


<参照>

https://www.j-cast.com/2018/08/22336697.html?p=all

https://toyokeizai.net/articles/-/200278

https://www.rinya.maff.go.jp/kanto/apply/nyurin/

https://news.livedoor.com/article/detail/15489227/

https://www.security-burns.jp/trespassing/intrusion/

https://www.fnn.jp/articles/-/10147

【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」

インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。

本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。

<本セミナーのポイント>

  • 変わりゆく市場の状況と、今後注目のトレンドを把握できる
  • 旅マエの顧客行動を理解し、集客・予約率アップのヒントが得られる
  • 旅ナカの接客品質を高め、顧客満足度向上に繋がる実践的な対応を学べる
  • 各分野の専門家から、ビジネスを加速させる具体的な戦略や成功事例が聞ける

詳しくはこちらをご覧ください。

宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】

【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」

2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。

「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。

初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。

参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。

<こんな方におすすめ>

  • インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
  • 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
  • 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
  • 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
  • インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生

「THE INBOUND DAY 2025」特設ページを見てみる

【インバウンド情報まとめ 2025年6月前編】最新の「観光白書」公開!インバウンドに関わる政策の変更点を徹底解説 ほか


訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。

この記事では、主に6月前半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。

※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。

口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。

詳しくはこちらをご覧ください。

最新の「観光白書」公開!インバウンドに関わる政策の変更点を徹底解説 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年6月前編】

今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。

「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!

→ 【無料】「インバウンドの教科書」を見てみる

完全無料 口コミアカデミー 「インバウンドの教科書」出ました! 国別・都道府県別データ・トレンドをカバー 見てみる

関連インバウンド記事

 

役にたったら
いいね!してください

この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

プロモーションのご相談や店舗の集客力アップに