緊急企画『ポストコロナのインバウンド戦略』では、コロナ禍において、業界の「中の人」に聞くサバイバル術として最前線に立つ方々に特別寄稿いただきます。今回はASEANを拠点に訪日インバウンドPR、SNSマーケティングを手掛ける、株式会社アジアクリック General Manager 小桑謙一氏に寄稿いただきました。
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ASEAN市場は「第3の極」へはばたく
2017年 291万人
2018年 332万人(昨年度比14%UP)
2019年 383万人(昨年度比15%UP)
みなさんこの数字は何だと思われますか?
これはASEAN(東南アジア)主要6か国の訪日外客数の合計です。 (タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム)
現在は新型コロナウイルスの影響により世界的に訪日が止まった状態になってしまっていますが、ASEAN主要6か国は、2019年まで毎年15%前後コンスタントに伸長し続けています。
ASEAN主要6か国市場は、すでに地域としては香港を抜き、台湾に迫る市場になっているのです。
ここ数年の東アジア市場の各国政治リスク・市場飽和の状況を見ると、数年後には台湾を抜いて中韓に次ぐ「第3の市場」になると考えています。
訪日市場で不動の1位である中国は、市場自体が大きくまだ伸長を続けています。しかしこの新型コロナウイルスの影響により、すでに観光現場からの心理的抵抗などが聞こえています。
国籍による差別は許されるべきものではないですが、これまで中国に依存していた観光地・観光施設が、依存度の高さも含めて不安になっているのは致し方ないと思います。
また、中国だけでなく日本の訪日市場は「東アジア偏重」となっていたことがコロナ禍以前より指摘されていました。各国、市場の成熟やカントリーリスクをはらんでおり、今回のコロナ禍は東アジア偏重戦略を見直すきっかけとなるでしょう。
「ASEAN訪日市場への戦略シフト」のおススメ
そこで私たちは「ASEAN訪日市場への戦略のシフト」をご提案しています。
ASEAN主要6か国は、それぞれはまだタイを除いて50万人規模の国が並んでいますが、その訪日熱は東アジアにも勝るとも劣らないものを持っています。
その代表であるタイは、年間130万人を突破し、いまだ15%以上の成長を続けています。
リピート率はすでに70%となっており、ゴールデンルートや北海道などは訪問済みで、旅行でも冒険的なチャレンジにトライする国民性も相まって地方の「まだ見ぬ日本」を探す旅行者が多くなっています。
東北がタイで爆発的な人気になったのも記憶に新しいところです。
また国民・永住者人口が400万人に満たないシンガポールでは50万人もの人(8人に1人)が日本を訪れています。ここでもリピート率は70%以上と言われ、すでに「何回も日本に行ったことがある」人は旅行博でもおなじみのお客様です。
シンガポール人はタイとはまた異なった意味で「他の人が見たことのない、行って自慢できるようなところで特別な景色や体験をして見たい」というニーズが強い人たちです。セルフドライブを好み、都会を嫌うというのも特徴的でしょう。
フィリピンは、ベトナムと共にこの数年20%前後の伸長をしており、注目されている市場です。もともと在日フィリピン人の家族・親戚を訪ねる訪日が多かったのに加え、近年では消費中間層の拡大に伴って訪日する人が増えています。
ビザの関係で実質的に募集型グループツアーが難しいので、初回訪日が40%以上もあるにもかかわらずほぼすべてFITで来られるという特徴ある市場となっています。
代表的な3つの国についてご紹介しましたが、中華系高所得者層からマレー系中間層の訪日に移りつつあるマレーシア、フィリピン以上の高成長を続けるベトナム、2億6,000万人を擁し、親日度合いが他国と比べても非常に高いインドネシア、他3か国もいずれも大変魅力的な市場です。
ASEAN市場は「全体で見て、個別に攻略する」複数国同時戦略
以上見てきたように、ASEAN主要6か国は非常に魅力的な市場です。しかし6か国あることは事実で、「どこからどのように手を付けたらいいのかがわからない」というご相談が絶えません。
私たちは長年、ASEANからの訪日市場を見てきました。そこで得た結論は、「誘致したい観光地、施設の場所や魅力によって攻めるべき国の順番や戦略が異なってくる」ということです。
特に地方の自治体は、その戦略的な場所(都心との距離や交通、すでに訪日客の多い周遊ルートとの関係)やキーとなる観光地の魅力(必ずしも日本人や中国人に人気の場所とは限らない)を分析し、「どこの国で何を売る」ことから検討を始めることで成果を上げていくことができます。
そしてASEAN市場の特徴は、なんといっても国と国の距離が「近い」ということです。旅行博も通常、8~10月にかけて同時期に行われるものがいくつかあり、多くの自治体や観光事業者は毎週ASEAN内を移動してPRを行います。
まずは特定の1~2の国にターゲットを絞り、セールスコールや旅行博をきっかけとしていくつかの周辺国に市場調査を始めて拡販していく、という絵を描けるのです。
6か国あるからこそ、こういった戦略が必要になりますし、逆に言うとタイやシンガポールなどに特化せずASEAN全体を見ているからこそ、その戦略をご提案することができます。
ポストコロナの訪日インバウンドの見通し
以下の表では、現在のASEAN主要6か国における、新型コロナウイルス関連の状況をまとめてみました(6月1日現在)。
この表は随時、更新しています。当社ブログよりダウンロードいただけます。(https://asiaclick.jp/2020/05/27/covid19asean/)
タイ、ベトナム、マレーシアに関しては落ち着きを見せてまだ警戒感はあるものの大きく社会・経済活動の再開に踏み出しています。シンガポールも6月からオフィス出勤が解禁されます。
このようにASEAN主要国はSARSやMERSの経験があったため、東アジア諸国同様対応が早く、また国民の感染症に対する意識の高さもあって早期に収束する方向に向かっています。
まだ国内での自由な移動(州間など)も禁じられている国が多いですが、国境をまたいだ移動には各国慎重に、しかしできる限り早期に復活をさせたい意向が感じられます。
いち早く収束したベトナムはすでに「安全な旅行先」を売りに海外市場からの観光客の復興を狙っています。
シンガポールも3月以降閉ざしていたチャンギ空港のトランジットを認めました。
現在はまだ各国で大規模イベントが禁止されていますが、早ければ9月、10月ぐらいには解禁されて予定していた各旅行博も行われることが期待されます。当社ではそれをきっかけに訪日欲を刺激するのではないか、と考えています。
秋ぐらいには訪日プロモーションを再開できるのではないでしょうか。
現状、訪日インバウンドでできること
そろそろ社会・経済活動が再開されるにしたがって、私たちも各国旅行会社とのコンタクトを取りやすくなってきます。
しかしながら、では早速日本からセールスに行きましょう、とはなりにくいのが現在の見通しです。
そこで私たちはASEAN現地にいる強みを活かし、オンラインやデジタル技術を活用して訪日インバウンドPRを再開するお手伝いを準備しています。
- オンライン商談会の開催
- オンラインE-learningプラットフォームの開発
- オンラインによるリモート商談代行(Zoomなどで同席)
- 定額制のASEAN6か国セールス代行
- 自社SNSメディアによる情報発信
いずれも、皆様が日本に居ながらにして私たちをご活用いただける提案です。
各サービスの詳細は、当社のブログでも紹介しております。
記事監修:株式会社アジアクリック 代表取締役社長 高橋学
大手語学学校のマーケティングマネージャーとして勤務後、中国にてWebマーケティング会社を起業、2012年アジアクリックを設立。
現在はタイ・バンコクを拠点にASEAN複数国からの訪日インバウンドPRに取り組んでいる。
東北観光推進機構ASEANデスク、事業構想大学院大学アジア進出担当講師、タイチュラロンコン大学非常勤講師など歴任。
著者:株式会社アジアクリック General Manager 小桑謙一
大手広告代理店、経営コンサルティングを経て株式会社YRK&に入社。
海外事業部を立ち上げ、2017年にBUSINE ENGINE ASIA PTE. LTD.を海外子会社として設立。2015年より東南アジアを中心に消費市場マーケティングのサポートを行う。
現在は訪日インバウンドPRを中心に行うアジアクリックとの二足のわらじで東南アジアを駆け回る日々。
緊急企画『ポストコロナのインバウンド戦略』寄稿募集
訪日ラボでは、現在のコロナ禍をどうやって乗り越えていくべきなのか、また、ポストコロナをどのようにとらえ、今対策をしていくべきなのかなどを、インバウンド業界の「中の人」に寄稿いただく特別企画を実施しております。本企画において寄稿を募集しておりますので、ぜひご応募ください。
ご応募の際には、まずは問い合わせフォーム( https://honichi.com/contact/ )より、
- お名前
- 所属・役職
- 寄稿したい記事内容の草案(タイトルやどんな内容になりそうかが見えれば問題ございません)
をご連絡ください。ご連絡の際には完成した原稿は必要ございませんので、まずはお気軽にご相談ください。
なお、ご応募頂いたすべての方の掲載を保証するものではございませんのでご了承ください。ご応募受付の際には、お問い合わせの返信を持ってお知らせいたします。
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