ニッチなニーズでも大きな商機、中国14億人市場:爆買いだけでも体験だけでもない消費者像理解がカギ

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近年の訪日中国人観光客の動向といえば、爆買いといわれた「モノ」消費から「コト」消費への転換が指摘されています。しかし、実際にはさらに大きなスケールで、「中国人観光客」の多様化が進んでいます。

今回は、中国社会の現状をふまえ、インバウンドの中国市場でターゲット設定する際のポイントについて解説します。


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増える訪日中国人、その向こうにある「中国」の大きさ

訪日する中国人は、旅行目的だけでなく、親戚や友人の訪問、日本で仕事、生活、留学している人も含みます。今年はコロナウイルスの影響はありましたが、春節期間の旅行需要が1か月前倒しになったため、2020年1月に日本を訪れた中国人観光客数は、前年同月より22.6%増の92万4,800人となりました。

2014年以降は特に訪日中国人数は増加傾向にありますが、そもそも、中国の人口は14億人近くあり、面積は約960平方キロメートルと日本の約26倍もの広さで、中国コミュニティは日本とはくらべものにならない大きさを有しています。

コロナウイルスが発生した武漢市だけでも人口は1,000万人を超え東京都と同じくらいの数があり、さらに、武漢市がある湖北省ではその人口は約5,900万人です。

今度は「コト消費」?

近年は爆買いブームが落ち着きコト消費が主流といわれていますが、依然として「買い物」を楽しみにしている訪日中国人も多く、すべての訪日中国人の目的をコト消費モノ消費と単純化することはできません。

「訪日中国人」と一括りにいっても、広い中国のさまざまな地域から訪日しているため、必然的に旅行のスタイルも多種多様であるといえるでしょう。

たとえば、2019年10月より関西と静岡から新規路線を就航した南昌は、長江の中下流地域に位置し、農業が盛んな都市として知られています。同じく2020年1月から新規路線が就航した青島は、中国の有名企業が進出しており、観光リゾート地として夏には1日20万人もの海水浴客が訪れます。

一口に「中国」といっても、内陸から海沿いまで、さまざまな地形があるように、訪日する中国人たちの特徴も出身地域により多様であると考えられます。

中国の今の消費者像

中国には依然として若者も多い一方で、一人っ子政策によって人口抑制を行ってきたため、日本以上のスピードで少子高齢化が進んでいます。2019年には人口約14億人のうちすでに2億5千万人が60歳以上となっており、2050年前後には人口の3分の1以上である5億人近くが60歳以上になるとの予測もあります。

2015年に一人っ子政策は撤廃されたものの、将来の教育費を考えて子どもは一人で十分とする子育て世代の意識変化から出生数は伸びず、2019年の出生数は1,465万人で前年よりも58万人減となりました。2017年から3年連続での減少です。

また、2018年の統計よると中国の独身者数は2.4億人ともなり、ライフスタイルの多様化が顕著となってきています。

2019年度の流行語の1つとされる「996」は、9時から21時までの勤務を週6日続けるという意味で、中国の大手企業で勤務する若者たちの間では熾烈な競争社会ができあがっています。

一方で、文化消費を楽しむ新中流層と呼ばれる、中流層の中でもより豊かな層が増えています。余暇に直接仕事とは関係のない語学学習や楽器などの習い事、アニメイベントへの参加など、個人の嗜好に合った過ごし方を楽しむ様子もうかがえます。

中国の長期休暇である春節の過ごし方だけでも、それぞれ思い思いの過ごし方が見受けられます。中国では家族を大切にする文化があるため、実家に帰って親族一同で顔を合わせて年越しをする人が多いのは事実ですが、貴重な長期休暇を旅行に充てたいと考える人も少なくありません。

事前予測では、2020年の春節に旅行をする中国人は4.5億人との数字も伝えられていました。また、長期休暇を利用して「転職」を成功させようと考える90年代生まれの若者が増えているとの指摘もあります。

中国の2020年春節とは

春節とは中国のお正月で、伝統的に祝われてきた節句です。中国だけではなく、台湾・香港・マカオや、世界各地の中国ルーツを持つ華人にとって最も大切な祝日とされています。中国において、春節は国民の祝日で多くの人は一週間の連休になります。長期休暇となるため、中国国内外への旅行者が増える期間でもあります。2020年の春節では4.5億人の中国人が海外に出かけるとのデータも出ていましたが、新型コロナウイルスの影響で減少の動きが見られました。この記事では、2020年1月24日に始まった春節の休暇について、同...

「ニッチなニーズ」のようでいて、その実マーケットとして成り立つのが「中国市場」

近年の訪日中国人観光客の傾向の1つとして、定番観光地よりも穴場スポットを巡ろうとする点が挙げられます。インバウンドに大人気の京都ですが、近年訪日中国人観光客の間では丹後の隠れた景勝地「金引の滝」が話題となっています。

中国市場の調査を手がけるトレンドExpressの調査によると、中国のSNS上で2019年7月から12月までに「行った」と記された投稿件数は、「金引の滝」が「鹿苑寺金閣」に続く28位にランクインし、30位の「名古屋城」を上回る結果となりました。

中国人に人気の天橋立から近く混雑していないことが魅力の1つとなり、インスタ映えが狙える写真を撮影する目的で訪れるケースが多いと見られています。リピーターはもちろん初来日の場合でも、ほかの人と違うところを訪れSNSに投稿する傾向が顕著だといえます。

このように、中国人のニッチな層への訴求も、中国人の14億という分母の多さで市場開拓が目指せます。

訪日中国人で多い層は20代〜40代の若い層で、SNSや口コミで旅前の情報収集を行うことが多い傾向があります。訪日中国人観光客を取り込みたい観光スポットでは、SNS映えする穴場スポットを中国人向けに発信することで、新規の市場開拓が目指せると考えられます。

まとめ:多様化する訪日中国人観光客の集客のコツは?

訪日中国人観光客のトレンドや旅行スタイルは、中国の情勢ととも年々多様化してきています。ターゲット設定をする際は、よりリアルかつタイムリーな口コミを参考にする必要があるといえます。

また、日本には「親子旅行」で来る訪日中国人も多いことから、子どもに対する接し方や考え方など、受け入れ態勢を整備するうえで中国ならではの習慣や文化背景を把握しておくことも、戦略立案に役立つでしょう。

<参照>

・現代ビジネス:「春節の中国人観光客の凄まじさ」報じる日本メディアに抱く違和感

・外務省:中華人民共和国

・朝日新聞:1月の中国人客、22.6%増 新型コロナ以降は激減

・JETRO:山東省と日本を結ぶ航路が相次いで就航

・sky-budget:中国東方航空、冬ダイヤより大阪/関西・静岡〜南昌線に就航へ

・日本貿易会月報オンライン:青島事情

・時事ドットコムニュース:【図解・国際】中国の人口と出生数(2019年9月)

・Hakuhodo DY holdings:文化を消費し楽しむ中国の新中流層【アジア生活者のリアル:中国篇】

・現代ビジネス:中国の若者たちが死に物狂いで働き続ける「凄まじい理由」

・PR TIMES:トレンドExpress、中国SNSデータから春節シーズンの訪日客ニーズを分析

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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