5月25日、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が解除されて以来、日本国内の経済活動は徐々に再開しはじめています。
5月4日に厚生労働省が発表した「新しい生活様式」には、「身体的距離の確保」、「マスクの着用」、「手洗いの徹底」など基本の感染対策のほか、ウィズコロナを生き抜くための実践例があげられており、企業もこの指針に沿った対応をしていくことが求められます。
今回の記事では、インバウンドと関わりの深い飲食店が、訪日外国人の客足が回復するまでの間にできることや、着手すべき対応について紹介します。また資金繰りとSNSプロモーションについても整理します。
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事例1:飲食店でも感染リスク低減、顧客に「安心感」
厚生労働省の示す「新しい生活様式」には、「回し飲みを避ける」「大皿の料理を避ける」など食事の面での実践例も多くあげられています。
今後、飲食店を運営していく際に、これらを意識したオペレーションを実践していくことで、顧客に安心感を与え、集客につなげることができます。
ここでは、「新しい生活様式」にのっとったオペレーションを行っている飲食店の事例を紹介します。
渋谷・ボブズリブズの徹底した感染対策/完全予約と署名付き問診
新型コロナウイルス感染拡大以前、訪日外国人に人気の観光地であった渋谷の街の飲食店も徐々に営業を再開しています。
その中でもポークリブなどの肉料理を中心に提供する「ボブズリブズ」では、徹底した感染対策が行われています。
5月20日から営業を再開した同店は、身体的距離確保のため、一日一組(4~6人)の完全予約制での営業を行っています。
店内にウイルスを持ち込まないための対策として、入店前のアルコール消毒や体温測定、署名付きの問診などを行い、店内における感染対策に関しても、換気や小皿での料理提供、従業員のマスク、ゴーグル、手袋着用などを行っています。
また、完全予約制であることを活かし、顧客が店内モニターやBGMを自由に選択できるようにしたり、提供する料理を指定のコースのみとし、店側の仕入れの負担を軽減するなど、顧客と店側の両方にメリットのあるオペレーションを行っています。
事例2:画面越しに接客「芸者とオンライン飲み会」
2019年11月に「箱根芸者」についてより多くの人に知ってもらいたいという思いからスタートした「Meet Geisha」は、新型コロナウイルスで箱根への客足が遠のく今、世界初となる「芸者とオンライン飲み会」のサービスを始めました。訪日ラボでは「Meet Geisha」所属の担当者に実際に取材しています。
当該記事では訪日ラボが「Meet Geisha」に独自に取材してわかった「芸者とオンライン飲み会」開催に至る経緯や開催して明らかになった課題、今後のインバウンドに向けて取り組むべき課題について紹介しています。
芸者とオンライン飲み会ができるサービスは全国でも初の試みであり、海外からも問合せや申し込みが絶えないとのことです。今回の取り組みは、インバウンド観光における新たな地平を開いた事例ともいえるでしょう。
世界初、芸者と“リモ飲み“できる「Meet Geisha」が面白い:箱根から世界につなぐコロナ時代の観光コンテンツの作り方
日本の伝統芸能や古くから伝わる文化、また広く知られている典型的な日本に魅力を感じる外国人は少なくありません。日本の江戸時代から続く文化である「芸者」の存在も、そうした「日本らしい」イメージを持つ存在の一つでしょう。英語圏では、「Geisha」という単語が存在するほどの認知を獲得しています。芸者は、宴席での接待や、舞いや唄、三味線などの芸で宴席を盛り上げてきた存在です。宴席に芸者を呼ぶ文化が廃れつつあるなかにあっても、芸者が日本文化を体現する存在であることには変わりはなく、観光市場の成長に伴...
新たなサービス形態、立ち上げのフェーズで葛藤
芸者さんたちにとって、オンラインでの接客は、対面ならではの接客スタイルや空気感に影響を及ぼすのではないかとの心配もありました。
また、長い歴史をもつ箱根という土地柄から、伝統を重んじる雰囲気の中で、「オンライン飲み会」という新しいものへの抵抗感もありました。
しかし、「Meet Geisha」はこれまで「伝統文化を多くの人に知ってもらいたい」という思いから、お客さんとの距離が近く比較的カジュアルなサービスを提供しており、この「オンライン飲み会」を立ち上げるうえでも、その思いは一貫していました。
そして「敷居を下げるというのは価値を下げるという意味ではない」という考えを念頭に、箱根芸者の方たちは、この「オンライン飲み会」を新しいチャレンジとして受け入れ、日本初の「芸者とオンライン飲み会」がスタートしました。
新たな「飲食の形態」反響大きく
「Meet Geisha」サービス立ち上げ以来、すぐに30~40件の問い合わせが集まり、5日間で予約は満席となったとのことです。
また、飲み会は基本日本語で行われることや、英語版のサイトがリリースされる前であることにも関わらず、海外からのお客さんも問い合わせも殺到しました。
「オンライン飲み会」のなかでは、芸者さんに電子決済でおひねりを渡す「オンラインおひねり」も存在しており、一人一万円ほどのおひねりを渡す人もいるようです。このことからも、「オンライン飲み会」への満足度の高さがうかがえます。
一方で、海外のお客さんに対応する際の時差の問題や、お座敷ならではの空気感が伝わりづらいという課題も存在しています。
今後の課題は「多言語」
今後、「オンライン飲み会」がインバウンド対策のひとつとして重視されていく中では、やはり多言語への対応が求められます。現在「Meet Geisha」には英語での対応が可能な芸者さんが2名在籍していますが、今後はより多くの国のお客さんへの対応をしていくために通訳を導入することも考えられます。
また、この「オンライン飲み会」を通して、「箱根芸者」だけでなく「箱根」全体をインバウンドに対してプロモーションしていきたい考えとのことです。
政府や地方自治体の支援で資金繰り
このような状況下で事業を継続していくために、政府や地方自治体から支給される助成金や融資を活用していくことは欠かせません。
そのひとつが「持続化給付金」です。これは、新型コロナウイルス感染症の影響で、月の売り上げが前年同月比で50%以上減少している事業者が対象となります。申請することで、法人200万円、個人事業者100万円を上限に支給されます。
申請には確定申告書類、給付対象月売り上げ台帳、通帳の写し(個人事業者は本人確認書類の写し)が必要となり、基本的にはWeb上で申請を行うことができます。
課税対象となることも注意
また、このような事業者向けの給付金は法人税の課税対象となります。これらの給付金は、事業での売り上げとともに「収入」として計上されるためです。
しかし、法人税が課されるのは、収入から経費を差し引いた「事業所得」が生じた場合、つまり税務上黒字となった場合です。収入が減少、経費が増加し赤字となった場合は、給付金に課税されることはありません。
【新型コロナ対策】助成金・融資まとめ:国・地方ごと、申請方法の一例まで徹底解説
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SNSプロモーションはInstagramを活用
完全にコロナが収束したとは言えない中、緊急事態宣言が解除されてもすぐに客足が戻る飲食店は少ないと考えられます。その際に飲食店は、アフターコロナを見据えた情報発信を積極的に行っていくことが必要です。
デジタルマーケティング事業を展開するホワイトボックスが緊急事態宣言中に行った調査では、消費者の来店のきっかけとなるSNSとして人気なのは一位が「Instagram」、2位が「Twitter」であることがわかりました。
特に「Instagram」は写真投稿が中心のSNSであることから、店舗で提供している料理の美味しそうな写真を毎日投稿することで、顧客に対し商品の魅力を最大限にアピールすることができます。
また、営業時間や割引情報、衛生対策なども併せて発信していく必要があります。
飲食店がウィズコロナを生き抜くために
ウィズコロナ、そしてアフターコロナを生き抜くために、飲食店は感染を避けるための懸念事項を確認し、その懸念事項に沿った「徹底した衛生管理」を行っていく必要があります。しかし、これだけでは十分ではありません。衛生管理・感染対策を徹底したことによる「安全・安心」を顧客に伝えることができてはじめて、失った客足を取り戻すことにつながります。
また、このような準備を進めることは今後のインバウンド対策においても必須であるといえるでしょう。コロナショックを経験した世界では、旅行者の観光地選びにおいても「安全・安心」の観点がより一層重要視されることが予想されます。
「安全・安心」の実現と情報発信に有効な対応方法や事例を知り、アフターコロナを見据えた上で一人でも多くの観光客に選んでもらえるような仕組みづくりや、運営体制を整えていく必要があるでしょう。
<参照>
厚生労働省:新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」を公表しました
bob'sribs:【今だけは 保って下さい ディスタンス】
中小企業庁:【中小法人・個人事業者のための】持続化給付金
NHK:「給付金」「協力金」は課税されるの? |サクサク経済Q&A| NHK NEWS WEB
PR TIMES:コロナの影響で大変な飲食店へのご提案 459名調査に基づくマーケティング戦略
【インバウンド情報まとめ 2024年11月後編】中国、タイの2025年祝日発表 ほか
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