さっぽろ雪まつり「大雪像は中止」調整困難と判断:インバウンド向け「雪コンテンツ」の可能性は依然高く−造成の注意点とは

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毎年多くの来場者でにぎわう、北海道札幌市の人気イベント「さっぽろ雪まつり」が、2021年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、規模を縮小して開催することが決定しました。

名物である「大雪像」の建設を断念することとなり、冬の北海道観光の目玉ともいえる大規模イベントは大きな転換を迫られています。

本記事では、さっぽろ雪まつり規模縮小の背景と、ウィズコロナの時代のインバウンド市場で見いだせる商機は何か、求められることは何かについて考察します。



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さっぽろ雪まつりは2021年縮小開催が決定

札幌市内最大のイベントである「さっぽろ雪まつり」は、1950年に始まり、メイン会場の大通公園に大雪像が立ち並ぶことなどから人気が高く、例年国内外から200万人以上もの人が訪れています。

しかし新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年1月から2月にかけて開催された今年さっぽろ雪まつりの来場者数は、昨年より70万人減の202万人で過去10年で最小の水準となりました。

6月16日、札幌市などからなる「さっぽろ雪まつり実行委員会」は、2021年のさっぽろ雪まつりについて、規模を縮小しての開催を決定し、大雪像の建設は中止することを発表しました。

同日の記者会見で、実行委事務局の札幌観光協会は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、大雪像のテーマとなる海外の建築物の視察が困難であること、景気の悪化が懸念される中でスポンサー企業の協力を得にくいことなども判断につながったとしています。

雪まつりには建設業者や運送会社など多くの業者の協力が不可欠であり、企画から完成まで数か月かかるため関係者の負担も考慮し判断の先送りはできないとも説明しました。

また、札幌市内で毎年9月に開催される道内最大規模の食の祭典「さっぽろオータムフェスト」についても、新型コロナウイルスの影響により全道各地の飲食業者との調整は困難と判断し、今秋の開催中止が決定されました。札幌市などからなる「さっぽろオータムフェスト」実行委員会は今後、ネットを活用した通販など代替事業の検討を急ぐということです。

インバウンド人気だった風物詩

世界最大の旅行口コミサイトであるトリップアドバイザーでは、さっぽろ雪まつり400件近い口コミが寄せられています。5段階評価のうち「とても良い」と「良い」の評価は合わせて350件近くあり、実際に訪れた人の満足度が高いことがうかがえます。

英語中国語による口コミが全体の半数を占めており、海外からの人気が高いことがわかります。

特に名物の大雪像に感嘆したという声が多くあり、「ドラえもん」や「ポケモン」といった海外でも人気の高いキャラクターの雪像に着目した口コミも多く多く寄せられています。

「雪」を活かした観光コンテンツに商機

さっぽろ雪まつりの人気ぶりからは、「雪」コンテンツの観光需要の高さがうかがえます。

日本のインバウンド市場は、東アジア東南アジアに偏重している傾向があります。その背景には、同地域の経済発展や物理的距離の近さ、日本国内に居住する外国人の多さがあります。

日本のインバウンドの重要市場である中国の一部地域や東南アジアには雪が降らないことから、雪というコンテンツがそれらの国や地域からの訪日外国人観光客の心をつかんでいることが考えられます。

北国の観光地として人気の北海道ですが、さっぽろ雪まつりの規模縮小や新型コロナウイルスのクラスター発生などが影響し、従来ほどの誘引力を維持することは難しいでしょう。

そのような状況の中、同じ北国である東北にとっては、「雪」を活かしたコンテンツで、インバウンドに訴求できるチャンスと見て取ることもできます。

年間を通して気候が温暖な地域からの訪日外国人観光客にとっては、日本の「冬服」も立派な観光資源になります。

たとえば雪景色をバックに、藁で編んだ雪帽子や、雪の上を歩く「かんじき」など日本の冬ならではの衣装に身を包んで記念写真を撮ることは、雪になじみがない訪日外国人観光客にとって魅力となるかもしれません。

巨大な雪像や大規模なスキーリゾートだけでなく、雪で作られた「かまくら」の中で食事を楽しんだり温泉に入りながら雪景色を楽しんだり、雪と「コト体験」を組み合わせたコンテンツなども、普段雪に触れることがない訪日外国人観光客には新鮮と感じられるはずです。

また、1983年から1984年にかけて放送されたNHK連続テレビ小説「おしん」は、アジア圏を中心に海外でも高い人気を誇っています。「おしん」は山形の寒村が舞台となっており、このドラマを通して多くの外国人が東北の雪景色を目にすることとなりました。東北の情緒ある雪景色は、「おしん」になじみのあるアジア圏からの訪日外国人観光客にとって、訪日旅行の動機づけになるかもしれません。

実際、アジア9拠点でマーケティングサービスを展開しているアウンコンサルティングが発表した2018年12月の日本の観光地検索数ランキングでは、おしんの舞台として有名な山形「銀山温泉」が、タイ台湾香港インドネシアなどで上位となっています。

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観光コンテンツの造成で気を付けたいこと

観光コンテンツを造成するにあたり、今後は新型コロナウイルス対策を徹底したい旅行者心理に寄り添ったコンテンツであることが求められます。

柔軟な発想があれば、低予算でも効果的なコンテンツを実現することができます。たとえばカヌーの上にテーブルとイスをセットして水上で食事を楽しんだり、各コテージ間に距離のあるキャンプ場で滞在したりする旅行は、ウィズコロナ時代で支持される可能性が高いでしょう。新型コロナウイルスの感染リスクを最小限に抑えつつ、その土地でしか味わえない自然環境を五感で楽しむことができます。

軸となるコンテンツが完成した後は、旅行者の目にとまり予約をしてもらえるよう、プラットフォームや自社サイトを整え、キャンセルポリシーの説明をしっかり用意することも大切になります。

また、どこの市場をターゲットにするのか、インサイトを把握してターゲット設定することも重要になります。特定の国を対象にした、日本の観光地における検索数調査からは、国ごとにどのような観光地が注目されているのか知ることができます。

たとえば冬ならではの景色を楽しめる岐阜県白川郷は、前述したアウンコンサルティングの調査で、香港タイシンガポールマレーシアフィリピンオーストラリアの6か国で検索数1位となっています。

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柔軟な発想でウィズコロナの魅力的なコンテンツを

さっぽろ雪まつりの規模縮小に象徴されるように、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、人気の観光地でも当面は訪日外国人観光客が減少することが懸念されます。一方でインバウンド市場で存在感を持つアジア圏からの訪日外国人観光客に対して、「雪」は強力なコンテンツを生み出す可能性を秘めています。

発想の工夫次第で、ウィズコロナの時代に支持される、魅力的なコンテンツを作ることは十分可能だといえるでしょう。


<参照

日本経済新聞:さっぽろ雪まつり「大雪像」断念、21年は縮小開催へ

北海道新聞:さっぽろ雪まつり、大雪像取りやめ 規模縮小 オータムフェスト中止

TripAdviser:さっぽろ雪まつり

PR Times:【白川郷】は6カ国で1位、北海道の観光地も上位ランクイン -雪にまつわる観光地は東南アジアへのプロモーションを-

NHKオンデマンド:連続テレビ小説おしん

【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」

インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。

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宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】

【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」

2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。

「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。

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【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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