東アジア、東南アジアのインバウンドは本当に戻ってくるか:どうなる?今何をやるべき?

公開日:2020年07月20日

新型コロナウイルスの感染拡大によって各国が実質の鎖国状態に入ってはや3か月が経ちました。

JNTOの訪日外客数データでは、4月2,900人(前年比-99.9%)、5月1,700人(前年比-99.9%)と、月を追うたびに壊滅的な状況が明らかになっています。

今回は、インバウンドに向けての現在の状況と、各国の訪日旅行に対する意識、アフターコロナの海外旅行の際に外国人旅行客が重要視することについて解説します。

インバウンド市場回復に向けての、現在の取り組みや状況

各国の感染状況を見ていると東アジアを筆頭に、東南アジアでも落ち着きを見せた国が出始めており、日本ともいわゆる「トラベルバブル」を形成して、まずはビジネス客から往来を再開しようという動きが始まっています。

トラベルバブルとは何か/日本は中国、台湾、韓国とスタート?

トラベルバブルとは、ある特定の条件に合致する人々だけが、限られたエリアの中を自由に行き来することを意味する新しい概念です。地理的、社会的、経済的に結び付きが強い国同士を一つの大きな泡(バブル)の中になぞらえて表現しています。泡の中に含まれる地域間で、相互に納得できる新型コロナウイルスに対する感染防止策を講じ、海外旅行市場の回復を図る試みです。新型コロナウイルスの流行を受け、国同士の行き来が制限されたことは、インバウンド業界にとって大きな打撃となりました。インバウンド業界が冷え込む中、各国が...

トラベルバブルで「現実的に」自由に日本人が海外旅行、またはインバウンドで訪日することができるようになるためには、以下の3つが最低条件となります。

  1. 航空便の再開
  2. 事前の検査や非感染証明書などの入国条件の緩和
  3. 双方の国での14日間の自己隔離の撤廃(どちらかでも義務付けられると入国後、帰国後に14日間自己隔離となってしまうため、双方が必須)

しかしながら中国、韓国、日本など東アジアの主要国における感染状況を見ると、5月にはいったん落ち着いたものの、6月中旬ぐらいからまたじわじわと増加傾向にあり、日本ではこの2週間で確実に増えてきました。

中国・香港やタイなど、東アジア・東南アジア諸国でもトラブルバブルの検討がされてきましたが、タイで外国人旅行者の受け入れ延期を検討する報道が流れるなど、少し冷や水を浴びせられたような状況になっています。

日本のGo Toキャンペーンや、タイの県境間移動解禁、マレーシアのAirAsia国内乗り放題チケットなど、現在のところ、各国「まずは国内旅行から」という動きが各国で見られます。

現在はまだ「インバウンドは語る時ではない」といった雰囲気さえ感じます。

果たしてインバウンド市場はなくなってしまうのでしょうか?

各国の訪日旅行に対する意識:タイ、シンガポールの場合

では翻って、各国の人々は海外旅行(日本旅行)に対して現在どのように考えているのでしょうか。

まずは東南アジア、タイ(2019年年間訪日数131万人)から見てみましょう。

オンライン旅行会社大手Expediaで、2020年4月の1か月間に目的地として検索された都市・地域のランキングが発表されています。

それによると、 2020年10-12月の期間での検索と、2021年1-2月の期間のそれとで少々結果は異なりますが、総じて「タイ人は、海外旅行が行けるようになったら日本に行きたい!」と考えています。

  • (両期間とも)上位10の都市・地域のうち、7つは国内
  • それ以外は、東京(5位)・大阪(8位)(10-12月)、東京(1位)・札幌(4位)(1-2月)と日本旅行が検索されている。
  • 日本以外では、ソウルがランクインしているのみ
Expediaによるタイの検索目的地ランキング
▲[Expediaによる検索目的地ランキング(タイ)]:アジアクリック作成


次に、シンガポール(2019年年間訪日数49万人)です。

ここでも結果は、「コロナが収束して海外旅行に行けるようになったら、日本に行きたい!」という結果が出ています。

  • 両期間とも、トップは「東京」
  • 3つ以上の複数都市・地域がランクインしているのは日本だけ
Expediaによるシンガポールの検索目的地ランキング
▲[Expediaによる検索目的地ランキング(シンガポール)]:アジアクリック作成

シンガポールは、国内旅行がないためすべて海外旅行となっています。

バンコクやバリ、台北などはシンガポール人にとっては「手軽に行く海外旅行」なので、滞在1週間など本格的な海外旅行については、圧倒的に日本が支持されているといってよいかと思います。

また、訪日インバウンド市場第4位の香港でも、「新型コロナウイルスの収束後に行きたい国」として79%の人が「日本」と答えるなど、東アジア・東南アジアでは「訪日旅行が待ち望まれている」ことがよくわかります。

※日本インバウンド・メディア・コンソーシアムの調査による

アフターコロナの海外旅行の際に、観光客が重要視することとは?

『FUN! JAPAN』を運営する株式会社Fun Japan Communicationsが興味深い調査結果を発表しています。

中国、韓国、香港、台湾、タイ、など9か国で4月に調査した内容で、「新型コロナウイルスに関連し、日本行きを再検討する際にどんな情報を事前に知りたいですか?(複数選択可)」との質問に対し、すべての国でトップだったのは「とにかく安全に対する正確な情報が知りたい」でした。

この質問では、台湾92%、タイ92%、インドネシア89%など、国によってはほぼ9割の人が重要視している結果となっています。

またそれに続いて、「交通状況に関する状況が知りたい(飛行機や電車、バスが通常運行か)」や「食事に関する状況が知りたい(レストランやカフェが通常営業を行っているか)」などが60%~80%の回答となっています。

旅の安全性だけでなく、”いつも通りの観光ができるかどうか”も重視している様子が伺えます。

また、大手オンライン旅行会社Tripadvisorが4月に実施した調査では、シンガポール人が「旅行先を決める上で今後重要になること」として一番多かった回答は「地域単位で、個人の衛生管理および公衆衛生に大規模で取り組んでいること」「夜間外出自粛、ソーシャルディスタンス、マスク着用などの政府の規制がきちんと行われていること」(いずれも57%)でした。

(日本は「その地域の、新型コロナウイルス感染者数の低下」がトップ)

シンガポールは、マスク非着用でいきなり300ドルの罰金など、東アジア・東南アジア各国の中でも非常に厳しい政府の取り組みで知られています。

ここから読み取れることは、外出規制期間中などに自国政府の規制や管理に安心感を持っていた場合、海外旅行に際してはその時の感染者数を気にするよりも「自分の国と同じ程度にやっていないと安心できない」ということです。

国民性によっておそらく差はあるものの、日本はマスクを着用する習慣があるとはいえ、メディアから伝わる満員電車や夜の繁華街の様子などは不安を覚えさせる要因になる可能性はあります。

日本におけるインバウンド再開に際して、その対策として求められること

インバウンドの再開はもう少し先になるかもしれません。しかし、「今にでもすぐ日本に行きたい」東アジア・東南アジアの人たちは、日本の情報を注視しています。

彼らが敏感になっている「安心・安全」は感染者数だけで印象付けられるものではありません。

社会的距離の遵守や検温、手指消毒などの感染拡大防止対策はもちろん、交通の運行状況や施設入場・入館の事前登録、人数制限情報など、「せっかく行った日本でしっかりと観光ができるかどうか」の情報を発信していくことが大事だと思われます。

東京スカイツリーでは、すでにその外国語トップページで感染拡大防止に対する取り組みと、安心して観光ができる情報発信を行っています。

コロナが収束したら真っ先に日本に行きたい東アジア・東南アジアの人たちは、「今、日本はどういう状況なんだろう」と気にしています。

魅力的な日本の観光情報を発信していくことと同時に、「再開はまだ」でも、今から一番目につくところに感染拡大防止策などの取り組みを明示し、情報発信をしていくことが非常に重要です。

これは観光施設・宿泊施設・飲食店・交通機関・流通小売店など、あらゆるインバウンド関連事業者に共通していえることです。

積極的な情報発信で、インバウンド再開の際に「日本は確かにどこを調べても安全そうだし、安心して観光もできそうだ」と思っていただけるようにしていくことが求められています。

<参照>

TTG ASIA:Uptick in travel searches in S’pore and Thailand: Expedia

観光経済新聞:【データ】アジア9カ国の訪日旅行への新型コロナウィルス影響調査

JIMC:【香港人最新訪日意識調査】香港人の訪日には日本政府の安全宣言が大きな要素!

cna lifestyleDreaming:Dreaming of going to Japan once travelling is safe again? You’re not alone

TOKYO SKYTREE

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この記事の筆者

株式会社アジアクリック

株式会社アジアクリック

株式会社アジアクリック 代表 高橋学・General Manager 小桑謙一。2012年よりタイ・バンコク、シンガポール、東京を主な拠点として訪日インバウンドPRを行っている。東北観光推進機構のASEANデスクをはじめ、各自治体・民間観光事業者のPR受託実績多数。既存のパンフレットデータ、外国語Webサイトなどの観光情報を集約掲載する「JAPAN TRAVEL SHOWCASE」をコロナ禍でリリース、自治体・観光事業者とASEAN現地旅行会社を結びつけインバウンド再開へ向けて尽力している。