仏・Japan Expo創立者に聞いた、日本の魅力の「ニューウェーブ」とは?【訪日ラボ独占インタビュー】

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フランスのパリ近郊で毎年開催されている世界最大規模の日本のポップカルチャーイベント「Japan Expoは、昨年は25万2,510人の来場者を集めるなど、毎年来場者数の記録を更新するほどの盛り上がりをみせています。

しかし今年は新型コロナウイルスの影響を受け、開催は来年に延期となりました。

今回訪日ラボは、来年の開催に向けて準備中であるJapan Expoの創立者の一人、トマ・シルデ氏にオンラインにてインタビューする機会を得ました。

他方、Japan Expoでは2年ほど前から「観光エリア」を設けており、当エリアには日本の地方自治体がそれぞれの土地の魅力を来場者に伝えています。「観光エリア」の人気は高く、来場者が選んだ最も満足度の高いエリアともなっています。

トマ氏は例年のJapan Expoの「観光エリア」に関する盛況ぶり、フランス人が感じている日本への魅力、そして出展者に求める「la passion」(=情熱)についても語っています。

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Japan Expoは「オタク」だけでなく、幅広い世代が来場している

Japan Expoは80年代〜90年代のフランスで起きたジャパニメーションブームのファンを中心に始まった2000年の第一回目から数えて、今年で21年目となります。

当初はアニメファンのイベントという色彩が強かったJapan Expoですが、初開催から20年が経過した現在、いわゆる「オタク」だけではなく、日本のことが好きな幅広い方々が来場しています。

実際に今年開催される予定だったJapan Expoのテーマは「スポーツ」であり、来年も継続して準備が進められているとのことです。もちろん東京オリンピックに関連したコンテンツも準備しているとのことで、決してアニメや漫画などのポップカルチャーのみを中心に置いたイベントではないことがわかります。

東京オリンピックに関するフランスでの関心度をトマ氏に尋ねたところ、フランスでも注目度の高い話題であったことがわかりました。

「フランスでも東京オリンピックは興味のあるトピックです。東京オリンピックに関するニュースはフランスでも報道されており、皆が注目していました。

また、オリンピック自体が好きなフランス人も大勢います。当日の試合はテレビで上映されるため、時差がある開催地でも夜遅く起きて応援する人もいます。」

夜遅くや早朝に放送されるオリンピックの試合の生中継に熱狂する様子は、フランスも変わらないようです。

また、トマ氏はJapan Expoのコンセプトについてこう語っています。

Japan Expo開催当初から変わらない"DNA"があります。それは"日本を多角的に語りたい"ということです。

実際、Japan Expoには日本各地の地場産業や工芸などの伝統的なものから、食文化、観光に至るまで現代の生活様式や今の日本を垣間見ることができる様々なブースがあります。

アニメや漫画などのポップカルチャーはいわば日本を知る"窓"であり、興味を持ち始める最初の第一歩といえます。」

Japan Expo創立者 サンドリーヌ・デュフール氏、ジャン・フランソワ・デュフール氏、トマ・シルデ氏
▲[Japan Expo創立者 左からサンドリーヌ・デュフール氏、ジャン・フランソワ・デュフール氏、トマ・シルデ氏]

来場者の80%は「日本に行ってみたい」

Japan Expoは世界最大規模の日本のカルチャーが楽しめるイベントであり、来場者は日本のことが好きな人が集まります。

昨年の会場で行っている調査によると、来場者の80%が日本に行ってみたいと思っているというデータもあるようです。それだけ日本への関心が高い方々が集まっています。

こうした訪日意欲の高さを受けて2年前からJapan Expoが注力してきたのが「観光エリア」です。「観光エリア」では日本から地方自治体が出展し、それぞれの観光地の魅力をPRしています。

そして昨年の最も人気だったエリアはこの「観光エリア」だったことからも、来場者の訪日意欲の高さがうかがえます。

観光エリア Japan Expo ジャパンエキスポ 2019年
▲[観光エリアの様子]:2019年開催のJapan Expo

フランス人が感じる日本の魅力の「ニューウェーブ」

トマ氏が語るところによると、フランス人が日本に感じている魅力には少しずつ変化があったといいます。

先述した通り、フランス人が感じている日本の魅力を構成する要素の一つに日本のポップカルチャーが大きな影響を持っていることは変わりありません。

しかし、それだけではないとトマ氏は語ります。

「フランス人が日本を訪れる主な目的が"秋葉原に行ってアニメや漫画のグッズを買う"というのは、もはや過去のものといえるかもしれません。

もちろん日本旅行の第一歩として、そうした旅の目的は未だ健在ではありますが、2回目、3回目と日本に旅行に行く機会が増えるに連れて、旅の目的や価値観も変わってきています。

例えば、日本旅行をするフランス人、特に若者の間で日本を「冒険」する人が増えています。

この「冒険家」は、東京や大阪、京都など日本のメジャーな観光地だけではなく、自分の目と足で日本のまだ見ぬ風景を探す人たちです。

まるで宝探しのように、こんなところにこんなものがあったんだ!という発見を楽しみにしています。

こうした冒険家が増えた背景にはフランスのバカンスのシステムにもあるのではないでしょうか。

フランス人は2〜3週間一気に休暇をとって日本を訪れます。

そのため、日本のポストカードにあるような場所以外にも知られざる景色を求めて探索したいという気持ちになります。」

トマ氏のコメントからもわかるように、実際Japan Expoに出展している高知県須崎市埼玉県行田市など、観光地としてはメジャーどころではないような自治体のブースも注目を集めていることからも、まだ見ぬ日本の魅力を探している来場者は多いようです。

日本の何気ない日常にも旅の楽しみがある

また、日本の魅力についてトマ氏は以下のようにも語っています。

「日本の魅力は"落ち着く"ところにもあると思います。

私が思う日本の魅力の原点はというと、北海道へ行った時の、露天風呂に浸かってゆっくりとした時間を味わっていた日の思い出がまず浮かびます。

そこは火山の近くに湧き出ている温泉で、北海道の豊かな風景が広がっており、静かで、とても平和でした。

その時抱いた日本への思いは今でも変わっていません。

日本旅行に訪れる「冒険家」も、この落ち着く気持ちを求めて訪れているのだと思います。つまり、観光向けを意識したエリアだけでなく、日本人の日常の生活に溶け込みたいという欲求があるのでしょう。

当然ですが、日本人には日本人の独自のルールがあり、生活のあり方があります。日本人にとっては日常の風景もまた、魅力に映るのです。

私も何度も日本を訪れていますが、例えば電車に乗っている時にも小さな発見に気づくこともあります。こうした何気ない日本の日常を体感することも、旅の楽しみの一つになるのです。」

フランス人から見た日本の観光の課題

日本の魅力についてお話しいただいたところで、では逆に観光立国であるフランスと比較して、日本はどのような点で課題があるのかについて尋ねると、フランスにおいても共通する点があると前置きした上で以下のような回答をいただきました。

「まず、ホテル不足の問題が挙げられます。日本はここ数年でかなり観光コンテンツが増えたと感じています。

しかし、宿泊施設の面ではやはりまだ不足している部分を感じます。実際、私の周りでも日本旅行の時に泊まる場所に苦労したという話はよく耳に入ってきます。

そして、言語の面も問題があると感じています。東京や大阪に訪れた際には言語の面では全く苦労しません、しかし、最近は「冒険家」が増えていることもあり、日本の郊外や田舎に挑戦するフランス人も増えています。

そうした「冒険家」が旅先で言葉が分からず迷子になってしまうケースもあるようです。簡単に言ってしまいましたが、これはフランスにおいても同じことがいえるでしょう。

また、これはジョークになりますが、フランス人はよそ者に対して優しくないイメージがあるのに対して、日本人にはいろいろと助けてくれる「おもてなし」のイメージがあります。

そういったイメージが先行して、日本の田舎に分け入って地域の方々に優しくされないとショックを受ける「冒険家」もいるようです。」

「定番メニュー」と「裏メニュー」の大切さ

日本の観光の定番スポットではないエリアにも興味の幅が広がっているフランス人の訪日旅行者に対して、Japan Expoに出展する地方自治体にも、まだフランス人の知らないエリアからの出展が増えているとトマ氏は語ります。

一方で、これから日本に興味を持ち始めるフランス人も大勢います。こうした定番スポットや隠れた名スポットのPRのバランスについてもトマ氏は以下のようにコメントしています。

「日本はフランスと同じく、広く世界に知られたスポットを持っています。

フランスでいえば、パリのノートルダム大聖堂がありますね。

ノートルダム大聖堂で火事が起きた時、世界中の多くの人が衝撃を受け、そして悲しみました。

このことはフランス(パリ)の名物としてノートルダム大聖堂がいかに世界中で有名で、観光地としても定番であったことがわかります。日本でいえば富士山にあたるでしょうか。

しかし観光客にまた来たいと思ってもらうためには、定番スポットだけでは十分ではありません。フランスが観光大国となり得たのも、地方によって様々な表情があるからだと思います。

イメージとしてはレストランが近いかもしれません。

いつもの人気メニューがあって、それを楽しみにしているお客さんもいれば、普段と違うような風変わりなメニューを欲しているお客さんもいます。

人気メニュー以外も知りたいフランス人はきっと、"定番スポットの魅力は知っているので、他にも見どころはありますか?"と聞いてくるはずです。そこで"裏メニュー"が登場すると、玄人好みの場所を好むフランス人にもきっと喜ばれるはずです。

パリにも秘密スポットを紹介するWEBサイトがあり、そのサイトではパリの誰も知らないところという触れ込みで(秘密といいながら)プロモーションしています。

Japan Expoへの出展を考えているのでしたら、こうした"裏メニュー"の準備はきっと役に立つでしょう。」

行田市 「足袋コレクション」 伝統産業である足袋をステージ上でPR
▲[行田市の「足袋コレクション」では、伝統産業である足袋をステージ上でPR]:2019年のJapan Expoより

最も大切なことは魅力を伝えようとする「情熱」

最後に、Japan Expoに出展を考えている方々になにかメッセージはありますか?と質問したところ、トマ氏は自身の日本旅行の体験も踏まえて以下のようにコメントしました。

「私が個人的な旅行で神戸の酒造に訪れた時、そこの80代くらいの男性がその酒造で扱っている様々な日本酒の製法や、日本酒に使う米についてとても情熱的に語ってくれました。

私はその時、その男性の「夢」を見たような気持ちになりました。もし私にその時お金があれば、そこにある日本酒を全て買ってしまいたいくらいと思いましたね。

それくらい、日本の観光地や名産品について情熱的に語ってくれる人は重要だと感じています。

Japan Expoに来場する方々は日本に興味がある方ばかりなので、シャイにならずにどんどん質問しますし、出展者からの呼び込みにも好意的に受け止めてくれます。

ですから、ブースを出す方はぜひ自身の観光地の魅力を熱心に、そして情熱的に語ってほしいと思います。」

年々盛り上がりを増していく世界最大規模の日本のポップカルチャーイベント、Japan Expo。今回はその創立者であるトマ氏にインタビューをすることができました。

新型コロナウイルスの感染拡大によって海外旅行が一切できなくなってしまった現在でも、いつか日本旅行へと考えてくれている方々は大勢いることがわかります。

感染収束後、フランス流の「リベンジ消費」に備えるためにも、自治体をはじめとしたインバウンド関連事業者の方は来年のJapan Expo出展を検討されてみてはいかがでしょうか。(取材協力:クロスライトジャパン)

<参考>

・Japan Expo公式サイト:https://www.japan-expo-france.jp/jp/

Japan Expoの観光エリアに関するお問合せにつきましては、ジャパンエキスポ公式パートナー・クロスライトジャパンがご対応いたします。

 クロスライトジャパン公式サイト:https://crosslight.co.jp/ 

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

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