2020年の台湾を振り返り:国内旅行市場が前年比3倍、「日本そっくりスポット」が混雑、「鬼滅」映画歴代1位に

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2020年ももうすぐ終わりですが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、インバウンド業界にとっては非常に厳しい1年となりました。

訪日ラボでは、インバウンド主要市場の1年を振り返っていきます。

今回は新型コロナウイルスの封じ込めに成功し、世界から注目を集めた台湾を取り上げます。

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2020年の台湾における新型コロナウイルスの感染拡大状況

2020年の台湾での新型コロナウイルスの感染拡大状況と、その対応について見ていきます。

3月に感染のピークを迎えたものの感染の封じ込めに成功

2019年12月初旬に、初めての原因不明の肺炎患者が報告され、12月31日には武漢を中心に肺炎の流行が始まりました。

台湾では、1月21日に初めて新型コロナウイルスの感染者が確認されました。

その後、3月には一日あたりの感染者数が20人ほどになりましたが、その後感染を封じ込めることに成功し、一日当たりの感染者数はおおむね1桁をキープしました。

海外からの渡航者を除くと、7か月以上新規感染者ゼロを達成しています。

政府の迅速な対応が感染封じ込めのカギに

台湾が新型コロナウイルス感染の封じ込めに成功した背景には、台湾政府の迅速な対応があります。

台湾政府はマスクの増産体制を整備するとともに、最寄りの薬局とマスクの在庫がリアルタイムで表示される「マスクマップ」を用意しました。

さらにマップの操作に慣れない高齢者らのために、チャットボットを使ってマスクの在庫がある最寄りの薬局を探せるようにもしました。

日本のIT政策担当大臣に相当するデジタル政務委員を務める唐鳳(オードリー・タン)氏らによる、IT技術を活用した迅速な対応は、世界的にも高く注目されました。

また人の往来についても迅速な意思決定を行い、1月26日には湖北省からの中国人の入国、2月7日に中国全土からの入国、3月19日には全世界からの入国を禁止しています。

さらに1月23日から6月7日まで、毎日記者会見で最新の感染状況や管理体制の情報を公開し、国民の理解を促して社会的な混乱を抑制しました。

台湾版「マスクマップ」で混乱を鎮静化:IT大臣の「神対応」でマスク在庫が丸わかり

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により、マスクの需要が急激に高まったため、薬局などの店頭でマスクが品薄となっています。同じくマスク不足の台湾では、政府によりマスクの供給が規制され、1人が購入できるマスクを週3枚までとする制限が施行されました。これに伴い、台湾のIT大臣こと唐鳳氏をはじめとする政府役員が各薬局のマスクの在庫をインターネット上に公開しました。この情報を活用して台湾の各エンジニアによりわずか数日で製作された「リアルタイムマスクマップ」は台湾中に普及しており、更に世...


コロナ禍の2020年:台湾で起こった出来事とは?

コロナ禍の2020年に、台湾で起こった主な出来事を見ていきます。

政治:蔡英文総統が2期目の総統に就任

2020年5月20日、蔡英文氏が中華民国第15代総統に就任しました。

1月の総裁選で再選し2期目を迎えての演説では、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた国民の協力に対する感謝を述べたほか、これからの台湾の産業と経済の発展のための「6大革新戦略産業」を育てることなどを約束しました。

カルチャー:劇場版「鬼滅の刃」がアニメ作品の興収歴代1位に

台湾では、映画「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」が、11月15日に公開後17日で3億6,000万台湾ドル(約13億円)の興行収入を記録し、台湾におけるアニメーション映画として歴代1位となりました。

これは、それまでの日本アニメ映画史上最高興行収入である「君の名は。」の2億5,000万元(約9億2,000万円)の記録を超えただけでなく、アニメ映画史上最高の興行収入である「アナと雪の女王2」の3億4,300万元(約12億6,224万円)をも上回るものです。

ファンのみならず、ハロウィンには台湾の桃園市長が主人公炭次郎のコスプレをするなど、大きな話題を呼んでおり、日本と匹敵するほどの鬼滅の刃ブームが巻き起こっています。

こうした日本のアニメコンテンツの人気に伴い、「聖地巡礼」といった訪日ニーズも高まっていると考えられます。

「鬼滅の刃」の聖地は日本に点在する?中国人が注目する「藤の木」ブーム:気運高まる聖地巡礼旅

『週間少年ジャンプ』の漫画、「鬼滅の刃」の人気は国内に留まらず、中国でも人気を博しています。同じく人気漫画であるワンピースやNARUTOに続き、中国で定番の日本アニメとなり、現地のメディアでも日本国内の人気の様子が報じられ、グッズも多数売られるようになりました。アニメの舞台を実際に訪問する「聖地巡礼」は、中国でも人気の旅行スタイルのひとつです。特定のスポットをモデルにはしていない鬼滅の刃においても、聖地巡礼ニーズがあることが見えてきました。 この記事では、鬼滅の刃や聖地巡礼が人気である理由...


旅行:国内旅行市場が拡大・従来の3倍に

新型コロナウイルスの流行をきっかけに、台湾の国内旅行は活況を見せており、その市場規模は3倍の1.2兆元(約4兆3,323億円)に拡大する見通しとなっています。

感染封じ込めに成功している台湾では、早い段階から国内旅行の需要が回復し、1〜4月の外出自粛で抑制されていた旅行意欲を発散する「リベンジ消費」が盛んとなりました。

国内旅行のトレンドとしては、リベンジ消費への意欲に加えて「旅行のためなら消費を惜しまない」という姿勢に下支えされ、高単価なホテルに人気の傾向が見られます。

さらに家族旅行や自家用車での移動の需要が高まり、車で行ける近場への日帰り旅行に人気が集まっているほか、一人で人の密集を避けられる、地方への長期滞在も人気となっています。

台湾、国内旅行市場が3倍に:「防疫大国」から「観光大国」に向かう4つのトレンドとは

新型コロナウイルスの流行拡大で2020年訪日外客数が激減しており、6月16日に発表された観光白書には、訪日外国人客を2020年に4,000万人にするという政府の数値目標の記載がなくなりました。インバウンド産業を取り巻く環境が激変しているのは日本のみならず、日本にとって近い存在である台湾も同じ状況に直面しています。台湾政府が、新型コロナウイルスによるインバウンド市場の縮小を考慮し、2025年の訪台旅行客の目標値を1,600万人から1,300万人に下方修正し、観光業の生産額も1.2兆元(約4兆...


海外旅行気分を味わう「微出国・偽出国」が新たなトレンドに

台湾では擬似出国を意味する「微出国」や「偽出国」が新たなトレンドになりつつあり、実際に国外には行けないものの、台湾にいながら海外旅行気分を楽しめる体験が話題を呼んでいます。

海外空港でのチェックイン手続き体験や、免税ショッピングを体験できるイベント、海外旅行気分を味わえる台湾の観光スポットやホテルなどが人気を集めています。

また偽出国としては、飛行機や船で移動する離島への旅行も、台湾域内を旅行しながら海外旅行気分を味わえるとして人気を集めました。 

特に島民と交流しながら島の伝統文化や現地のディープな体験を楽しめる「馬祖列島」が、旅行先として人気になっています。

台湾人が熱をあげる「微出国」「偽出国」とは?つのる日本旅行への想いを受け止める様々なプランが出現

新型コロナの世界的な感染拡大から、海外旅行へ自由に出かけられなくなった今、2019年の訪日観光客数第3位と親日度が高い台湾では、画期的なプランが登場しています。日本へ旅行に行けない代わりに、台湾域内で日本旅行気分をあじわえるホテルプランが話題です。今回は、今台湾で注目されている「微出国」「偽出国」というホットワードをふまえ、ウィズコロナ時代の台湾人の訪日意欲について解説します。関連記事「台湾で最も予約困難」星のやグーグァン目次台湾国内で日本旅行気分を満喫できるホテルプランとは台湾人の外国旅...

台湾で「日本そっくりスポット」が大混雑…「聖地」への憧れがコロナ禍で加速

いま台湾では、新型コロナウイルスの影響で海外旅行ができないなか、「行ったつもり」旅行がブームとなっています。 台湾の苗栗県にあるホテル「馥藝金鬱金香酒店」は、Facebookで「県内の観光地だけで世界旅行が楽しめる」といった投稿をし、大きな反響を呼びました。 今回は、台湾の「行ったつもり」旅行ブームについて、Facebookや

訪日台湾人観光客の回復への備えを

台湾は新型コロナウイルス流行を早期に封じ込めることに成功し、IT技術を活用した施策や迅速な対応が世界からも注目を集めました。

感染対策を取りつつも、できる範囲で楽しめる国内旅行が人気を博し、疑似出国や離島旅行といったニーズに合わせたサービスも展開しています。

台湾の迅速な対応や、コロナ禍の需要の掘り起こしは、今後の日本にとっても学ぶべき点が多くあるのではないでしょうか。

日本と台湾の往来は、すでにビジネス目的に限り再開しており、東京オリンピックに向けて日本への外国人観光客受け入れの検討が進むなど、今後台湾からの訪日客が回復していくことが期待できそうです。

訪日台湾人観光客が戻ってくる時期に備え、今からできる準備を進めていけるとよいでしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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