日本政府観光局(JNTO)が、台湾、香港、英国、豪州を対象に、2020年9月に「訪日旅行市場における新型コロナ感染症の影響と需要回復局面の旅行者ニーズと志向に関する調査」を実施しました。
国内外における新型コロナウイルスの感染拡大は、いまだ収束のめどが立っていませんが、アフターコロナの訪日旅行に関して、外国人観光客はどのように考えているのでしょうか。
調査結果からは、アフターコロナに求められる訪日旅行のあり方が浮かび上がります。本記事ではJNTOの調査結果をご紹介し、今後の訪日旅行需要の変化について考察します。
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海外旅行再開意欲と感染状況に相関関係みられず
JNTOの調査では、前提として9月の調査時点における新型コロナウイルス感染収束状況を、台湾と豪州は「収束」、香港・英国は「未収束」と想定しています。
「あなたにとって新型コロナウイルス感染症の危険性はどの程度だと思いますか。」という問いに対し、台湾で91.0%、香港で72.0%、豪州で45.0%、英国で33.0%の割合で「危険性が高い」と回答がありました。
一方で、すでに「海外旅行を計画中もしくは予約済みの比率」は、英国が86.7%、香港で76.5%、豪州で71.1%、台湾で50.9%となりました。
海外旅行再開意欲と感染の拡大・収束状況とは無関係であり、海外旅行の再開には「コロナに対する危険性認識」の影響が大きいことがうかがえます。
「次に訪日旅行(ビジネス目的の旅行を含む)をする時期、または、次に訪日旅行をしたいと考えている時期は直近でいつ頃になると思いますか。」という問いに対しては、半数以上が海外旅行を検討している豪州・英国でも、訪日旅行に関してはどちらも半数近くが2022年以降と回答しました。
一方、香港では半数以上、台湾でも半数近くが訪日旅行の再開時期を2021年以内と回答しており、 台湾や香港のような日本から近い国から訪日旅行需要が回復していくことが予測されます。
旅行トレンドは変化なし
訪日旅行で行われる20のアクティビティに対し、「次に挙げるアクティビティについて、あなたが旅行先(ビジネス目的の旅行は除く)で行う頻度は以前と比較して変わると思いますか。A.増える、B.減る、C.以前と変わらない、の3つの中から選んで下さい。」という問いに対し、いずれの市場でも「変わらない」が半数近くを占めました。
Withコロナの訪日旅行に際して、外国人から求められるコンテンツに大きな変化はみられないことが分かります。
一方で「エンターテインメントパークへの訪問」や「温泉・健康・エステ・サロン」「観劇・音楽鑑賞」など、密室や人が密集するイメージがあるものは、4つの市場で比較的「減る」が多い結果となりました。
これは新型コロナウイルスの影響を考慮したものだと考えられます。
コロナ禍で訪日外国人に求められる情報とは?
「今後、感染がある程度収まり、マスクの着用やソーシャルディスタンスが求められる中で海外旅行に行けるようになった時、あなたは旅行先の状況についてどのようなことに注意を払いますか。当てはまる選択肢を全て選んでください。」という問いに対し、いずれの市場でも観光地や施設など目的地の感染症対策、感染者数や重症者などの統計情報が求められていることが分かりました。
コロナ禍においては、通常の観光情報だけでなく、目的地の感染症対策など受け入れ側の対応も求められる傾向にあるといえるでしょう。
対策の有無やその方法がインバウンドにとっての滞在の決め手になると考えられるため、旅行者向けの情報配信は重要な鍵になると考えられます。
また、観光地や交通機関の混雑情報や入国時の検査の所要時間など、リアルタイムな情報が求められており、これは常に変化する情報や、現地でしかわからない情報への不安を拭うために重要だといえるでしょう。
「旅行先の状況について調べる時、あなたは次のどの情報源を利用すると思いますか。当てはまる選択肢を全て選んでください。」という問いに対しては、旅行先の状況把握として、政府や航空会社など公的な情報源の利用意向が高いことが分かります。
安全な旅行をするために、より確実な情報を求める傾向がうかがえます。
アフターコロナのインバウンド誘致に向け、需要を把握し万全な対策を
アフターコロナにおいて、訪日旅行の内容として求められるトレンドに大きな変化はないものの、感染情報などコロナ前には重要視されていなかった情報が求められると考えられます。また、実際の感染状況と旅行の再開意欲に相関関係があるわけではなく、新型コロナウイルスへの危機感意識が旅行への意欲に大きく影響することがわかりました。
需要を的確に把握し、万全な対策を練ることが、アフターコロナのインバウンド誘致の成功のカギになるでしょう。
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