新型コロナウイルス(COVID-19)が世界全体に大きな変化をもたらしてから、約一年が経過しようとしています。
訪日外国人観光客の客足は依然として止まっていますが、旅好きの訪日潜在層は今も旅行に関する情報収集を行いながら、再び旅行に行ける日を待ち望んでいます。
それでは、訪日意欲のある人はどのような属性を持ち、何日先の旅行を計画しているのでしょうか。
この度、訪日ラボと旅行データを扱うソリューション企業ADARAは、共同企画として「北米・欧州からの訪日旅行検索 COVID-19前後の変化」について調査し、北米・欧州の訪日意欲を持った人々がどのような動きをしているのかを探りました。
本記事では、今回の調査から興味深いと思われる結果をピックアップし、ご紹介します。
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北米・欧州の旅行検索データから訪日旅行に関する意欲を考察
今回、ADARAのデータパートナーである世界270社以上の旅行関連企業から提供された、月間8.5億以上の旅行顧客プロファイルデータを基に、コロナによって変化したオンライン購買動向を分析いたしました。
今回の調査結果を解説する上で、主要な指標の定義については以下の通りです。
※なお、その他データの抽出条件や定義の詳細は本記事の下部にて記載しています。
富裕層トラベラー
ADARAのデータパートナーのサイト上で、過去90日以内に、以下の3条件のいずれか一つ以上に合致する、または、購買行動を起こした人
- ビジネスクラス以上のフライトを検索した人
- ラグジュアリークラス以上の宿泊を検索した人
- ホテルやマイレージクラブ等、ロイヤリティプログラムで上位ステータスを保持している方
COVID-19発生前・・・2019年1月から2020年3月までの間
COVID-19発生後・・・2020年4月から2020年12月までの間
ワクチン報道が契機か、欧州の訪日旅行検索が23%増加
昨年末から、新型コロナウイルスに対するワクチンの開発が佳境に突入し、その有効性を報じる報道が次々となされました。旅行を待ち望んでいる人にとっては、有効なワクチンが開発され、接種できる体制が整いはじめていることについてポジティブに捉えたのではないでしょうか。
以下の図は、欧州エリアにおける、ワクチン関連の報道と訪日旅行検索の変化についてグラフでまとめたものです。このグラフによると、ワクチン関連の報道が始まった2020年11月上旬〜1月上旬にかけて、90日先の訪日旅行検索が23%増加していることがわかります。
90日先の旅行とは、ちょうど2021年の春シーズンにあたります。つまり春の行楽シーズンにかけての旅マエの情報収集が活発化した可能性があります。
もちろん、ワクチン関連の報道以外にも影響を及ぼした要素は考えられますが、少なくとも年末年始にかけて訪日旅行に関する情報収集が活発化した動きは読み取れます。
北米からの訪日旅行検索数の増加
北米では、2020年3月ごろから各地で外出禁止令が発令されはじめました。その影響が北米からのアウトバウンド旅行検索数に如実に現れていたことがわかります。
2020年4月以降のアウトバウンド旅行全体の検索数は、2019年の月間平均と比較して40%未満となった一方、訪日旅行の検索シェアは新型コロナウイルス発生後から上昇しはじめ、2020年11月には目的地ランキングで4位にまで急上昇しています。
これは、日本の感染者数が北米に比べ大幅に少なかったことから安全・安心な国であると認識され、感染状況が悪化していたヨーロッパを追い抜いたと考えられます。
なお、日本より上位の3ヵ国は北米からの近隣国であるメキシコ、プエルトリコ、ドミニカ共和国であり、コロナ以前である2019年12月のランキングと比較しても上位3ヵ国は変化していません。
つまり、近隣国を除くと訪日旅行への関心が最も高いということになります。
富裕層トラベラーの訪日旅行検索数、一般トラベラーの2〜3倍を維持
北米の富裕層トラベラーの訪日旅行の検索シェアは、新型コロナウイルス発生後に17%減少しています。しかし、依然として訪日旅行を検索している富裕層トラベラーの割合は、日本以外の目的地より継続して多いことがわかります。
また、一般トラベラーの訪日旅行検索数と比較した時、新型コロナウイルスが日本でも感染が確認されはじめた2020年1月〜2月ごろに急落したものの、4月ごろにはすぐに回復し、一般トラベラーの2倍〜3倍の検索数を維持しています。
これらの調査結果から、北米ではもともと富裕層トラベラーからの訪日旅行の人気が高かったこと、訪日旅行意欲の回復も一般トラベラーよりも早いということがわかります。
また欧州においても、富裕層トラベラーによる訪日旅行検索数が一般トラベラーの検索数の1.2倍〜1.8倍を維持しています。
これらの傾向から、渡航制限解除後を見据えた富裕層向けのコンテンツの拡充や準備を進めておくべきといえるでしょう。
お花見シーズンへの訪日意欲、例年並に高く
ADARAの持つデータでは、旅行を検索している人が何日先の旅行情報を検索しているのかという、「出発前日数」の推移を調べることができます。
2020年12月時点の北米の訪日旅行の「出発前日数」は100日前後であり、2019年と比較しても10日前後の差異しかありません。これは例年どおり、2021年春(3月~4月)のお花見シーズンでの訪日に高い関心がある様子がうかがえます。
この「出発前日数」の推移に注目すると、2020年1月〜2月に日本で新型コロナウイルスの感染が確認されたタイミングで、「出発前日数」が80日後まで減少しています。
そこから北米で新型コロナウイルスが発生した直後の2020年3月に140日後まで一気に増加しています。こうした乱高下は、フライトチケットのキャンセルや変更が大きく影響しているものと考えられます。
富裕層を中心に、訪日需要回復の期待もてる結果に
今回の調査から、2020年の後半にかけて北米・欧州でじわじわと訪日旅行への関心が増加していることがわかります。
特に、欧州・北米を問わず富裕層における訪日旅行への関心の回復は早く、一般トラベラーよりも検索量が多い(=訪日旅行への関心が高い)という事実は、インバウンド業界にとって朗報といえるのではないでしょうか。
観光客の渡航制限の解除のタイミングを予測することは未だ難しいものの、訪日外客数がコロナ前の水準に戻るまでには数年かかるといわれていることを考慮すると、アフターコロナのインバウンド需要を掴むためには、いかに「客単価」を上げていくかということが重要となります。
今回の調査で判明した海外の訪日関心意欲の高まりを好機とみて、今のうちから富裕層に向けたコンテンツの造成、情報発信に取り組んでいくことが、インバウンド需要の回復に必要となるでしょう。
富裕層が求める「本物の体験」とは?観光庁「世界レベル」のホテル誘致・整備に動く
観光庁は地方部を中心に、富裕層旅行者の求めるニーズやサービス水準に対応した宿泊施設の誘致や整備に向けて動き出しています。有識者委員会には、政府の「成長戦略会議」の議員になったことで話題となったデービッド・アトキンソン氏も参加しています。観光庁が目標とするインバウンド市場の拡大を実現するためには、「富裕層旅行者」が重要なキーワードとなっています。本記事では、なぜ日本のインバウンド市場において富裕層が重要なのかを改めて整理すると共に、先行する成功事例を交えて解説します。インバウンド対策にお困り...
データの抽出条件・定義
APAC・・・アフガニスタン、オーストラリア、バングラデシュ、ブルネイ、カンボジア、中国、フィジー、フランス領ポリネシア、グアム、香港、インド、インドネシア、日本、カザフスタン、キルギス、ラオス、マカオ、マレーシア、モルディブ、モンゴル、ミャンマー、ネパール、ニューカレドニア、ニュージーランド、北マリアナ諸島、パキスタン、パプアニューギニア、フィリピン、サモア、シンガポール、韓国、スリランカ、台湾、タイ、ウズベキスタン、ベトナム
Europe・・・アルバニア、オーストリア、ベラルーシ、ベルギー、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、クロアチア、チェコ共和国、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イタリア、ジャージー、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マケドニア、マルタ、モルドバ、モナコ、モンテネグロ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、セルビア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、ウクライナ、イギリス
North America・・・アメリカ、カナダ
出発前日数・・・フライト出発日/ホテルのチェックイン日とフライト/宿泊検索を実行した日の差異日数
検索実行日・・・ADARAデータパートナーのウェブサイトでサイト訪問者がフライト/宿泊検索や予約を実行した日
アウトバウンド・・・出発国以外の国への旅行。欧州の場合、欧州地域外の国への旅行として定義
ADARAについて
ADARAは、トラベルデータを基に旅行顧客の行動パターンや購買傾向を分析し、精度の高いデジタルマーケティングソリューションを提供するトラベルデータコープです。
カスタマージャーニー全体を通したパーソナライゼーションに必要不可欠なインテリジェンスの提供により、有意義かつ有益な関係性を構築し、旅行・金融サービスや小売業を含む主要な消費者ブランドの発展に寄与しています。
ADARAは独自のマシーンラーニング(機械学習)やAI(人工知能)を、270のデータパートナーから得られる倫理的な情報源に基づき、且つ倫理的に管理されたデータに適用しています。
その結果、世界中の消費者の詳細な全体像や、ブランド・チャネル・デバイス(端末)を網羅した消費行動を掴むことができるのです。ADARAはB2Cを対象とする企業の皆様が、顧客のライフサイクルの各ステージにおいて収益見込みを高められるよう、消費者の識別・理解・コミュニケーションの仕方に変革をもたらします。
アダラ・ジャパン株式会社:公式サイト
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