観光庁が推進「あたらしいツーリズム」とは?採択されるメリット、先行事例を紹介

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観光庁は、ニューノーマルな観光を支援する事業「あたらしいツーリズム」を推進しています。

あたらしいツーリズム」とは、地方公共団体やDMOなどが協力し、自然や歴史、文化、食などの観光資源を、新しい生活様式などに適応しつつ、より安心で誘客力の高いものに磨き上げる取り組みに対して支援などを行っていくものです。

観光庁の「誘客多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成」に採択された事業が、「あたらしいツーリズム」として選定されます。

あたらしいツーリズム」で提唱される観光スタイルは、今後の日本の観光の指針となる可能性もあります。

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「あたらしいツーリズム」とは:コロナ対策の徹底と魅力的な滞在コンテンツ造成を目指す

観光庁は、感染対策を徹底してより安全で魅力的な観光イベントや観光資源への磨き上げを行う「誘客多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成」実証事業を進めており、安心・安全な観光事業の先行モデルの形成を目指しています。

あたらしいツーリズム」は、新型コロナウイルス対策を徹底した、魅力的で安心・安全な観光の実現を目指すもので、観光庁の「あたらしいツーリズム運営事務局」が選定しています。

「あたらしいツーリズム」選定基準

あたらしいツーリズム」の選定基準をご紹介します。

  1. 徹底した新型コロナウイルス感染症対策
    コロナ後の観光においては、旅行者が安心して観光を楽しめる環境整備が欠かせません。「新しい旅のエチケット」の実践を踏まえて、新型コロナウイルス感染症対策専門家の監修のもと、さまざまな観光場面での感染予防対策マニュアルを整備し運営することが条件とされます。

  2. 魅力的な観光事業造成の取り組み
    地域の魅力的な旅行コンテンツやイベント、アクティビティなどを作り上げるために、独自性と新規性を兼ね備えた取り組みが必要とされます。オンラインセミナーによる研鑽や、コロナ対策や観光の専門家によるアドバイスなどにより、安心・安全で魅力的な観光事業を作り上げていきます。

あたらしいツーリズム」が目指すゴールは、以下の図のように、コロナ対策を徹底しつつ新しい観光コンテンツを造成し、全国の観光産業が自走・持続できる状態です。

「あたらしいツーリズム」に採択されると受けられるメリット

あたらしいツーリズム」に採択された場合、以下のようなサポートを受けることができます。

  1. 事業支援
    「進捗管理」と「コーチ」の2つのタイプの担当がつき、事業開始から報告完了まで一貫した伴走型の支援が行われます。

  2. 情報提供
    事業推進に有益なコンテンツ造成ノウハウや感染症対策情報に加え、各分野の専門家によるオンラインセミナーの配信や専門家派遣が行われます。

  3. 販路支援
    誘客を目的として、販路拡大システムやオンライン商談会、旅行者向けポータルサイトなどを活用し、マーケットとの接点を増やして販路開拓支援が行われます。

「あたらしいツーリズム」に採択されるには

あたらしいツーリズム」に採択されるまでの流れを説明します。

観光庁「誘客多角化等のための滞在コンテンツ造成」に応募

あたらしいツーリズム」に採択されるためには、観光庁の「誘客多角化等のための滞在コンテンツ造成」の公募に応募する必要があります。

第1次、第2次の採択はすでに終了しており、第3次の採択は現時点では未定となっています。

第1次募集の総評によれば、下記のポイントが重視されており、今後応募する際に意識すると良いでしょう。

  1. 「新しい生活様式」の実践
    業種別感染拡大防止ガイドラインの内容を羅列するのではなく、地域独自の実践的なコロナ対策を策定し、具体的な取り組みに落とし込むことが求められます。また、これまでの焼き直しではなく、ウィズコロナにおいて安全と集客を両立するために、どうバージョンアップするのかを具体的に盛り込むことが求められています。

  2. 骨太の方向性・ストーリー性
    取り組みの内容にその地域らしさや地域性がにじみ出ていることが重要とされています。また地域の歴史や伝統をストーリーとして魅力的に伝え、有料でも訪れたくなるコンテンツを造成するなど、中長期的なビジネスとしての視点が重視されています。

  3. 新規性・独自性
    バーチャルツアーが多く見受けられたものの、バーチャルにとどまらず地域への実際の来訪につながる仕掛けが求められています。また3密回避のためアウトドアをテーマにした取り組みも多かったものの、特定の季節や単年度の取り組みで終わらない、将来的な発展性や地域全体への経済波及効果まで検討することが重視されています。

  4. 具体性及び計画性
    「ガストロノミー」や「ワーケーション」といった概念的な提案にとどまらず、地域の観光資源と組み合わせて、独自性と具体性のある提案が求められています。またオンライン販売やプロモーションを提携事業者に任せるだけでなく、地域でも実行力のある体制を整備し、具体的な誘客活動を提案してほしいとしています。

  5. 効果および持続性
    今回の事業が、翌年度以降の自走化につながるよう、持続可能な収益性や、地域の人材育成、若者など次世代の担い手への継承、地域のファン育成などの視点を盛り込むことが求められています。

「あたらしいツーリズム」の事例

実際に「あたらしいツーリズム」の事業として採択された事例をご紹介します。

宮城県/Reborn-Art Festival実行委員会:Reborn-Art Travel〜石巻でアートと食に浸る〜

東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県の石巻市では、2017年から「アート」「音楽」「食」の総合芸術祭「Reborn-Art Festival」を開催しています。

震災10年目の節目となる2021年に3回目の開催を予定しており、「利他と流動性」をテーマとして、コロナ対策に配慮しつつ、アート作品や地元食材にまつわるアクティビティが用意されています。

また専用の宿泊場所が用意されており、マイカーや、レンタカー、キャンピングカーなどを利用して楽しむことができます。

東京都/調布市 産業振興課:調布市がメイン舞台の新作映画を活用したwithコロナ期に適したまち歩きイベント

東京都の調布市には、多くの映画・映像関連企業が集積しており、近年では映画のロケ撮影の誘致にも注力し、年間100本以上の撮影実績を誇っています。

かつては「東洋のハリウッド」とも賞され、「映画のまち」としての認知度向上に取り組む調布市では、以下の映画を活用した新たなツーリズムを推進しています。

  1. 少人数・分散型の「ロケ地を巡る謎解きイベント」
    謎解きをしながら市内の観光地や撮影スポットを探索し、最後まで解き終わると景品が進呈されます。

  2. 豪華俳優陣らのシーン写真を掲載した「ロケ地観光パネル」
    映画やドラマ撮影で使用された場所に、解説ボードや当時のシーン写真などを設置し、役者になった気分で劇中のワンシーンを再現して記念撮影が楽しめます。

  3. 作品・ロケ地がひと目でわかる「ロケツーリズム紹介映像」
    出演俳優が実際に訪れた市内の撮影スポットや観光地を、映像で分かりやすく紹介します。

和歌山県/一般社団法人 紀の川フルーツ観光局(DMO):『フルーツのまち紀の川市周遊化構想』事業

和歌山県の紀の川市は、1年を通してフルーツが収穫できる「フルーツのまち」で、市内にはフルーツなど新鮮な農作物が並ぶ直売所があります。

一般社団法人「紀の川フルーツ観光局」(DMO)による「フルーツのまち紀の川市周遊化構想」事業は、主に以下の2つのコンテンツで構成されています。

  1. 地元公共交通機関とシェアサイクリングの連携による観光地までの交通の整備
    電動自転車のシェアサイクリング実証実験を行い、アプリで手続きして気楽に市内を巡ることができます。さらに市内コミュニティバスを「Googleマップ」で経路検索できるほか、電子クーポンを活用した「紀の川周遊パス」の企画販売も行われます。

  2. 「フルーツのまち」紀の川の恵みが楽しめる、飲食店舗等を巡るスタンプラリー
    観光アプリを用いた、紀の川市内の飲食店等を巡るスランプラリーが開催され、フルーツなどの農産物を産地で楽しむことができます。

コロナ後の観光の在り方を見直し、誘客多角化を支援する取り組み

ウィズコロナアフターコロナの観光においては、大前提としてコロナ感染対策が万全になされていることが必要となります。

ニューノーマルを意識した新たな観光には、少人数で楽しめるものや、マイカーなどを使って周遊できるものなども多く見受けられます。

また既存のツーリズムにその地域ならではの魅力を加えた、独自性の高い取り組みが求められていることも特徴的です。

観光庁が推進する「あたらしいツーリズム」の指針を参考に、新規事業に取り組むのも良いでしょう。

<参考>

観光庁:あたらしいツーリズム 事業者サポートサイト

観光庁:「誘客多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成」における実施事業の公募について(第二次)

宮城県/Reborn-Art Festival実行委員会:Reborn-Art Travel〜石巻でアートと食に浸る〜

調布市観光協会公式サイト

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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