株式会社日本政策投資銀行(DBJ)四国支店は、with/afterコロナにおける持続可能な四国観光の可能性について考察したレポートを発表しました。
四国では、全国に先駆けて人口減少が進むことが確実視されており、観光は地域経済を支える重要な産業と位置付けられています。
よってコロナ禍以前から、四国内の各空港での国際線の就航や消費額単価の高い「宿泊を伴う外国人旅行者」を増やしてきました。
ただし、コロナ禍の今状況が一変し、来訪者数の量の追求から消費額の質の重視へと方向転換しています。
また、特に消費額単価が高い富裕層に向けてコンテンツの磨き上げを行う必要性が示されました。
この記事では、レポートを基に四国の現状を踏まえつつ今後の注力すべき分野について紹介します。
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海外富裕層旅行市場:富裕層1人で一般層12人分の消費に
富裕層の定義について、ここではJNTOの定義に倣い「旅行先における消費額が100万円以上/人回」と設定します。
また観光庁観光戦略課が2020年10月に公表した資料によると、欧米豪における富裕旅行者数は全海外旅行者の1%(約340万人)に過ぎないものの、海外旅行消費額は全体の13.1%である4兆7,000億円を占めることが明らかになっています。
これは2019年訪日外国人旅行消費額の合計額である4兆8,135億とほぼ同額であることからその市場の大きさが分かります。
また富裕層1人あたりの消費額は162万円で、一般層の13万円と比較すると約12.3倍になります。
そしてレポートでは富裕層旅行に求められる要素として以下の6点を指摘しています。
- 本物体験
- 独自性
- ローカル
- 快適さ
- 柔軟性
- プライバシー
これらに加え、近年は特に持続可能性、ウェルネス、アートが意識されています。そして過度に観光地化・商業化された場所を敬遠する旅行者も多いとのことです。
関連記事:2024年に富裕層旅行市場が22兆円に 求める観光コンテンツとは
四国における富裕層旅行の実態:「直島」の先へ呼び込む工夫
まず、四国のインバウンドの現状として都道府県別の訪日外国人訪問率ランキングでは香川県24位、愛媛県42位、徳島県43位、高知県47位と全国の中で相対的に下位となっています。
また地方ブロック別外国人延べ宿泊者数は、四国地域は2019年まで増加傾向にあるものの、全国の地域別では依然として最も少ない状況にあります。
ここからは、特に四国において典型的なパターンの欧米豪富裕層の訪日旅行行程例を見ることにより、課題を洗い出していきます。
初来日など、訪日回数が少ない欧米豪からの旅行者の場合は、ゴールデンルートと呼ばれる東京~富士山~京都~大阪を巡り、四国を訪れる場合は本州側の岡山から直島のみを訪れ、再び本州側へ帰ることが多くなっています。
四国内の観光スポットにおいて、外国語の口コミ比率を見ると上位6位までをすべて直島アートが占めています。また四国4県でも、香川の比率が65%となっています。
直島以外で、四国に滞在する例としてはしまなみ海道サイクリングツアーや高松、松山、金刀比羅宮、高知などを回るツアーが挙げられていました。
これらにお遍路体験や仁淀川でのアクティビティーなど四国4県を巡るツアーがどのように加えられるのかが課題となります。
ただし、海外からはその認知度の低さ、ミステリアスさから多くの旅行雑誌で「訪れるべき目的地」にランキングしています。
さらに、人材育成にも力をいれており、日本初の観光分野の専門職短期大学である「せとうち観光専門職短期大学」が2021年4月に開校しました。地域観光の中核を担う人材を育成することを目標としています。
最後に課題として、次のものがあげられます。
- 富裕層向け宿泊施設
- コンテンツ発掘・磨き
- 歩き遍路体験に適した、雰囲気のある遍路道の発掘
- 仁淀川などのアクティビティやコンテンツ磨き、外国人受け入れ態勢整備
- 地域での富裕層対応可能なガイドの養成
これらの整備、開発が今後重点的な対応策となると考えられます。
関連記事:
アドベンチャーツーリズム(AT)とは | 市場規模・日本での可能性
観光庁「アドベンチャーツーリズム等の新たなインバウンド層の誘致のための地域の魅力再発見事業」12の採択事業を発表
欧米豪の富裕層向けアンケート、認知度の低さが課題に
DBJ四国支店が昨年公表した「【訪日外国人旅行者の四国に関する意識調査】新型コロナに関する緊急インバウンドアンケート」において、コロナが収束し、海外旅行が再開できるようになった際の旅行予算の変について四国訪問を希望する外国人にアンケートがとられました。レポートではそれらについて詳しく紹介しています。
まず四国の認知度について、38%となりました。日本の他エリアと比較すると最も低くなっていることから、プロモーションが重要であると考えられます。
また認知していても訪れたことがない人が多いことへも課題です。四国を認知している人に対し、四国への応報経験がないと答えた人は39%に上りました。訪問した中では、高松や香川、直島が多くなっています。
さらにコロナ後、旅行に対して、「予算が上がる・どちらかといえば上がる」の合計が過半数に達しました。ここから、新型コロナ終息後に四国を訪れる外国人旅行者の消費単価が上昇する可能性があることが示唆されます。
四国に期待したいこと
また四国に期待したいことについては、「文化体験アクティビティの種類や質の充実、ブラッシュアップ」(31%)が最も多く、コロナ対応と同程度になっています。
四国訪問経験者ではまた「高級宿泊施設の拡充」も多くなっています。
そして四国で体験したいアクティビティとしては「歴史的スポット巡り」(88%)や「自然ウォーキング」(85%)が多くなっています。特に富裕層においては、「アート鑑賞」が全体より高くなっています。
with/afterコロナ、2025年が四国で「最初で最大のチャンスに」
最後にレポートでは、今後の四国の取り組みとして、四国のポテンシャルを活かすため、特にアドベンチャーツーリズム、四国遍路、アートに力をいれるべきだと記されています。
またインバウンド観光は2025年に焦点を当てていきたい考えです。2025年は大阪・関西万博と瀬戸内国際芸術祭が重なるタイミングであり、「新型コロナ終息後の最初にして最大のチャンス」と位置付けています。
富裕層向けの対策に力を入れつつ、まずは認知度をあげコンテンツを磨き、最大限2025年に向けて備える必要があると考えられます。
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<参照>
DBJ:海外富裕層の訪日旅行市場とwith/afterコロナの四国における可能性~知的好奇心と消費ポテンシャルの高い本物志向のインバウンド誘致に向けて~
JNTO:富裕旅行市場の分析とコンテンツづくりのポイント(JNTOマーケティング研修会テーマ1 ※講演資料の一部掲載)
観光庁:上質なインバウンド観光サービス創出に向けた観光戦略検討委員会(資料2および3)
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